みんな、一人のカフェ
仕事の途中、こっそりとカフェに寄る。
週に数日しかやっていないカフェ。
今日はちょうど営業日。ちょうどオープンの時間。
開いたばかりの店内に入って行く客は、みんな一人。私も一人。
一人ずつ、好きなものを頼み、好きな席へ座る。
丁寧な味のケーキ。
焼いたばかりのちいさなスコーン。
それぞれの頼んだ飲み物を用意する音がする。
ゆっくりゆっくり用意している。湯の沸く音。氷の音。
ゆっくりで良い。客たちは待つ時間を楽しんでいる。
私も読みかけの本を読んで待つ。
白いカーテンを、天井で回るファンがかすかに揺らす。
やがて運ばれたケーキを、少しずつ、少しずつ、フォークで崩す。
アイスティーも少しずつ、少しずつ、ストローで。
そんなひとときを楽しみ終えて、一人、一人と店を出て行く。
私もその秘密のような静かな場所から
名残惜しく抜け出した。