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節分のホタル

冬の間じゅう 公園の木や足元の木道の縁にはイルミネーションが飾られていた。でも今夜 私が夜の公園に行くと、電飾屋がそのイルミネーションを一つ一つ外していた。
私は思わず声をかける。
「イルミネーションをつけられた木は冬じゅう苦しかったでしょうね」
声がトゲトゲしくなってしまった。しかし 作業帽をかぶった電飾屋は気にした様子もなく にっこりした。
「そんなことを ご心配でしたか。大丈夫ですよ 。この明かりは」
そう言って手のひらに乗せた、外したばかりの電球を一つ私に差し出す。それは彼の手の上で ほうっと光っている。この光りかたは、ああそう、ホタルだ。心の中が少しだけ夏になる。
「これは再利用の明かりです。 空から落ちてきた星屑を一年間集めてイルミネーションに使っているのです。そして冬じゅうこうして木に干して冷たい空気にさらしておくと」
彼は手の上の光にふうっと息をかける。
電球の光は大きくなって、少し浮かび上がる。彼はもう一度ふうっと吹く。もう電球は電球ではない。小さな星だ。きらめきながら上へ上へと浮かんでいった。
彼が木から外してカゴに集めていた電球が後に続いていっせいに夜空に浮かんでいった。

さようなら、冬の公園。
明日からは春だ。

(了)


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