お土産の風車【シロクマ文芸部】
風車だった。
外国帰りの叔父さんが僕にくれたお土産は。
「おじさん、ありがとう」
小さな固い紙箱を僕はとてもわくわくして受け取った。
僕はクラスの友達みたいに海外旅行に行ったことないし、お父さんもお母さんも海外出張や海外赴任なんかない。
ときどき海外に仕事で出張する叔父さんのことを、僕は内心自慢に思っていた。滅多に会わないんだけど。
今回初めて海外出張から帰った直後の叔父さんがうちに遊びにきて、僕にそのお土産をくれたのだ。
僕のために買ってきたと言っていた。
僕は自分の部屋にそっと持っていって、机に置くと、ふたを開けた。
中には小さな風車と小さな外国風の家が入っていた。
おもちゃという感じではない、しっかりしたものだった。
僕はすぐに取り出して、家のてっぺんに風車を差し込んだ。
かちり。
僕はふうっと風車を吹いてみる。
風車はそっと回り出した。
もっと吹いてみる。
もっと。もっと。
ぎっ、ぎっ、という音とともに風車はだんだんスピードを速めて回る。
見ている僕の顔に風が当たる。
ぎっ、ぎっ。
僕は目を閉じて風を顔に浴びる。
何故もう僕が吹かなくてもこんなに回っているのだろうと考えるのも忘れて。
そしてその風車のおうちの故郷が見えてきた。
のんびりした街並み、遠くに見える山並み、近くにみえる広々と続く畑、ゆったり流れる川…
はっと気が付いて目を開くと風車は止まっていた。
僕はリビングでお母さんとお茶を飲んでいる叔父さんに、行っていた国の話を聞くために自分の部屋を出た。
叔父さんは僕をみて笑顔になった。
きっと僕がすごく嬉しくて笑顔だったからだ。
「お。風車気に入ったか?
風車はいろいろ働いてるんだぞ。
そうだな、次は灯台を買ってきてあげよう」
僕は小さな灯台を想像した。
僕の部屋が、風車も灯台もある部屋になったら…
きっとなにか素敵なことが起こるだろうな。
(了)
小牧幸助さんの企画に参加させていただきます
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