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【短編】もし波打ち際に人魚が打ち上げられていたら2(春弦サビ小説?)

僕はいつものように朝早く誰もいない時間に海岸の散歩をしていた。
岩だらけの浅瀬にはたまに「獲物」が落ちていることがある。
蛸やエビや貝などだ。一人暮らしで料理好きな僕の食事の足しになる。
だから僕は浅瀬をのぞいてみるのも日課の一つなのだが、その朝、浅瀬に落ちていたのは「人魚」だった。
しかもどうやら寝ているようだ。良い夢を見ているような顔をしている。
面白いものを見れた、と思ったがそれは朝食の足しになる獲物ではないので僕はそのまま立ち去ろうとした。
しかしその時、遠く離れた駐車場に何台かの若者たちの乗った車が来た様子が見えた。彼らに見つかるとまずいだろう。
僕は人魚を起こしてやることにした。
「おい!起きろ!」
とりあえず声を掛けてみる。起きない。
何かでつつきたいが枝のようなものは落ちていない。
僕は足元の貝殻を拾って投げた。
尾に当たったが起きない。
もう一つ投げる。
起きない。
仕方ない、顔めがけて投げた。
「痛い」
やっと起きた。
起きた人魚はすぐに僕に気がつき、はっとした顔をした。
「早く海に戻れ。人が来るぞ」
僕が言うと人魚は不思議そうな顔をした。
「人って、あなたも人でしょう?」
僕は一瞬ぽかんとしてしまった。その通りだなと思った。
「ええと、お前をみつけたら騒ぎそうな人間たちがやってくる」
そう言い換えてみた。
「あなたは騒がないの?」
人魚はさらに僕にたずねる。僕は頷く。
「ああ、騒がない。僕が探しているのは蛸やエビや貝など食べられるものだから。君みたいな大きな人魚は食べれないし拾って持ち帰れないから騒ぐことはない」
人魚は笑った。とても可愛らしい笑顔だった。
その笑顔を僕の脳裏に焼き付けて、人魚は尾をひるがえして浅瀬からぱちゃりと消えた。
僕はしばらく彼女の消えた辺りをじっと見ていた。
何見てるんだ、と自分にツッコミを入れ、くるりと向きを変えて帰ろうとしたとき、またぱちゃりと大きな水音と共に彼女が現れた。
「はい!お礼よ」
彼女は僕のほうに両手いっぱいの貝を差し出した。
「あ、ありがと…」
僕は急いでスニーカーとジーンズの裾を濡らしながら彼女に近寄り、彼女の可愛らしい手よりかなり大きい自分の武骨な手をひろげて貝を受け取った。彼女の手にほんの少し触れたが意外に冷たくはなかった。
貝を僕に渡し終えると、彼女はまた笑顔を残して海に消えた。
彼女の沈んだ場所を、海面の水の輪が消えるまで、貝を手にいっぱい持った僕は動かずに見つめていた。
もう彼女が現れることはなかった。

人魚にもらった貝…栄螺さざえやハマグリや岩牡蠣いわがきなどの中に一片の桜貝が混じっていた。僕はそれを窓辺に飾り、海を眺めて暮している。

(了)

まだ聴いていない方は テーマソング?をどうぞ ♫

春弦サビ小説のお遊びリレー小説「note村の一日」を書いているうちに、くえすさんが素敵な人魚のメロディを作ってくれたので、つい歌詞を書いて歌いました。すると海の中の歌っぽく、くえすさんが仕上げてくれたので動画にしようということになり、↑の動画が完成。その動画のためにはスズムラさんがたくさんの人魚の絵を描いてくれたので、その絵を使いたくて人魚のお話を書きました。

私に賛同して人魚のお話を秋さんも書いてくれました🌸
ありがとう秋さん!

くえすさん、いろいろありがとうございました✨

派生させすぎて春弦サビ小説なのかもはや分かりませんが(;´・ω・)


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