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「臨床真理 」柚月裕子 感想
めっちゃ面白かったー★★★★★
文章が分かりやすくて、頭にドラマが広がる。プロローグの救命師は冒頭だけの出演だけど、それだけでも主人公ばりになかなかにカッコよくてそのままお話に一気に引き込まれていく。
ヒロイン美帆がミステリーにあるあるの、感情で行動していくような危うさがあってあんまり知的ではなく魅力的ではないかど、もっと知的ではない女キャラが出てくることで、バランスがとれるのが不思議。しかも、この後述のキャラは、中盤はかなり知的なヒントを与える重要キャラになって目を見張る。その絡み方が緻密でなんか好き。
あと、ロマンスは欲しい派なので、協力してくれる同級生警察官の栗原くんも魅力的だった。彼はめちゃめちゃ冷静な人で美帆とのバランスがいい。結局美帆が心配すぎることが動く原動力になるってのも、萌える。
美帆と司の関係もよかったなー。
亡き弟と重ねて感情的になってしまったことをきっかけに、彼の抱える問題に首を突っ込むことになるんだけど、司も美帆のお陰で変わっていくし、人との関わりを知っていく。最後、社会へと旅立っていく描写はとても感動した。
そういう意味では、美帆も人として成長したし、最後は応援したいヒロインとして見終えた。
共感覚を逆手にとっての、台詞の少ない美帆と司の会話から、推し量れる二人の心情がとても美しく描かれ、最後は涙が出た。文章は簡潔だからこそたくさんの想像を生むんだな。
犯人は2転3転して、ああ、あの人かーという感じだった。美帆が殺されないようにがんばる描写とか、なかなか責めた文章で臨場感あった。ああいう描写は男性が書くと、ただエロいだけなんだろうけど、女性目線なのでなんかすごく危機をリアルに想像してしまった。多分、あそこで美帆の心意気に惚れたと思う。
犯人役は、ものすごく渋くてイケメンの50代有名俳優とかに色気たっぷりにやって欲しい絵が浮かびました。
美帆を執拗に攻撃する看護師さんは冒頭からずっと怪しかったが、意外だった。最後は納得のいく理由が紐付けられて納得。気持ちがよい。
美帆と栗原の関係は、最後の描写はないんだけど、あれくらいの終わりかたの方が色々想像が書き立てられていいものだ。これからも、あの3人は関わりあっていくんだろうな。人生に光があふれたらいいな、と思わせた。
ある種、王道と呼ばれるストーリー展開だけど、心の書き方が緻密で、ワクワクしたし感動した。簡潔で男らしい柚月裕子さんの文章は、細やかな心象描写がところどころ肉付けされてて素敵。好きな文章。これからも柚月裕子さんの作品をたくさん読んでいきたい。