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映画の花束 〜 1本1本に想いを込めて #6<映画の買付を決める瞬間>
#5 <「大いなる沈黙へ」公開までの長〜い道のり パート2>は
2回にわたって「大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院」を買い付けるまでの長〜いお話にお付き合いいただきました。
弊社は今年の12月で創立9周年を迎えます。
今日現在まで24本の作品を配給してきましたが、作品に出会ってから買い付けるまで、「大いなる沈黙へ」のように6年もかかったものもあれば、出会った直後に勢いで買ってしまったものもあります。
業界ではこれを”映画祭フィーバー”と呼ぶのですが、特にカンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどの3大映画祭のコンペ作品の正式上映などでそれは起こります。上映後のスタンディング・オベーションなどの場内の熱気にやられて正常な判断を誤ってしまうのです。
幸い弊社のような小さな会社は、名前のある監督作や有名俳優が出ている作品には高くて手が出せませんので、会社に大打撃を与えるようなことにはならないのですが、たまに小さな作品で同様のことをやってしまうこともあり、いまだに回収できていない作品もラインナップの中にはあるのです・・・。
さて、前置きが長くなりました。
最終的に買付けに至る(契約書にサインする)までの時間は各作品毎に違いますが、
どこのタイミングで「この映画が欲しい!」と思うかも作品毎です。
今回の見放題パックの中に入っている
「ザ・トライブ」と、「EDEN /エデン」の2本は、”一目惚れ”でした。
「ザ・トライブ」は2014年のカンヌ映画祭の批評家週間に出品されていたウクライナ映画で、無名の監督のデビュー作でした。
オープニング、1人の少年がバスから降りてきたところから映画はスタートし、カメラはこの少年の背中をずっと追っていきます。寄宿舎のような建物に入っていくと朝礼のようなものが行われていて、身振り手振りで会話する様子からどうやらここは聾学校であることが判ります。ここまでワンカメ。
冒頭3分の映像で「これ買う!」と決め、試写後にセラーのブースに走り、「絶対私に売って!」と詰め寄りました。
現地でサイン後、映画は見事に批評家週間グランプリ含む3賞を受賞。主演のヤナちゃんに来日の約束を取りつけました。来日の話はまた改めて。
「EDEN/エデン」はダフト・パンクが誕生した90年代パリの音楽シーンを駆け抜けたDJを描いた映画で、主人公ポールは監督ミア・ハンセン=ラヴの実兄をモデルにしてます。
当時の音楽満載の音楽映画でもあるのですが、ポールの栄光と挫折を残酷なまでに丁寧に綴った、青春あるある映画です。
これも2014年の釜山映画祭で、オープニングの明け方のクラブ帰りの主人公達の5分程度の映像を観て胸がキュンとしてしまい、「これ買いたい!」と思ったのでした。
他にも狙っていた会社があったようでちょっと高くなってしまいましたが、なんとか買い抜けられました。
毎回決め手は何でしょうね、
自分の琴線に触れたもの、
としか言いようがありません。
最近はあまり「攻め」の買い付けができてないので、初心に戻ろうと思っていたりします。
つづく。
#7<来日ゲストとの思い出:天使のヤナちゃん>
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「ザ・トライブ」「EDEN/エデン」も収録。
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