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子どもを連れて裁判傍聴したら、裁判官の対応が素敵だった話

数年前の夏休みのこと。
当時小学5年生くらいだった息子とその友達4人ほど連れて、裁判傍聴に行きました。

裁判所は7〜8月になると交代で夏期休廷期間(裁判期日を入れない期間)があるので、普段に比べて傍聴できる裁判も少なくなります。
選択肢が少ない中、小学生にもわかるものがあるかな〜と開廷表を見て回ると、窃盗事件の刑事裁判があったので、その法廷に入りました。

この裁判は、高齢男性が神社の賽銭箱からお金を盗んだという、いわゆる賽銭泥棒の事件でした。

裁判が始まります。
「被告人、前へ。」
裁判官が被告人を正面に促し、住所と名前を確認します。
次に検察官が起訴状を読み上げます。その内容で、賽銭泥棒の事件だとわかりました。

裁判官は、黙秘権を告知した上で、起訴状に間違っているところがあるかどうかを被告人と弁護人に尋ねます。
「間違いありません。」
この事件は、事実関係に争いのない事件(自白事件)でした。

続いて、検察官が「冒頭陳述」といって、この事件のあらすじを述べます。事件が起こるまでの流れがここでわかります。
冒頭陳述が終わると、検察官が裁判所に証拠を提出し、その要点を読み上げます。

通常なら、このあと、弁護側の証拠提出、情状証人の尋問、被告人質問、論告求刑、弁護側の弁論・・・と続いて、審理が最後まで終わることが多いのですが、今回は追起訴が予定されている(他にも起訴される事件がある)ということで、ここで終わってしまいました。

残念!
被告人質問や論告、弁論まで子どもたちに見せたかったところですが、こればかりは仕方ない。
…そう思っていた時です。

被告人退廷後、裁判官が、傍聴席に座っている小学生たちに向かって言いました。

「今日は、裁判が途中までで終わってしまいましたが、せっかくなので、何か質問があったら答えますよ。なんでも聞いてください。」

な、なんと!優しい裁判官!

そこから、質問大会になりました。
一人が口火を切って質問すると、子どもたちは次々と手を挙げ、質問していきました。

「刑事裁判を受ける人は、男の人と女の人とどちらが多いですか?」
「被告人がまた犯罪をしたとき、その裁判を同じ裁判官が担当することはあるんですか?」
「被告人が、本当はやっていないけど有罪にしてもらいたいと言ったら、どうなるんですか?」

質問がたくさんあって、全部は覚えていませんが、そんな内容だったと思います。
素朴な疑問のようですが、どれも実は深く、鋭い内容で、弁護士としても考えさせられるものばかりでした。子どもの発想ってすごい!

そして、これに対する裁判官の回答が、また素晴らしかったんです。

どんな質問にも、優しく、丁寧に、わかりやすい言葉で説明をしていました。私から見ても、これは難しい質問だな〜と思うものもありましたが、ごまかしたり適当に濁したりせず、真摯に考えて答えてくれていました。

子どもたちは大満足!
私も、とても勉強になりました。

思わぬサプライズをくれた裁判官に、感動した思い出でした。

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