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砂のカメ

どこの海辺もどんどん砂浜の面積が減っている。
子供の頃に住んでいた町のこの砂丘も減っているだろう。もう何年も訪れていないけれどきっと狭く少なくなっているだろう。
今でも小学校では遠足に行くだろうか。遠足にいって大きな砂のカメを作ったりするだろうか。
あの私達が40年も前に作った砂のカメはどうしたのだったか。みんな置き去りで帰った。あの日の帰り道は雨が降っていて、みんな少し長い学校までの曇って薄暗い道を一生懸命に歩いた。それを励ますように引率の先生がとても怖い話をした。誰もいない工事現場で幽霊の声がする話だ。
今でも雨がしとしと降る夕暮れになるとそこにあの時の恐ろしさがにじんでいることがある。でも今の今まで砂浜に置き去りにした砂のカメのことは一度も考えたことがなかった。雨や風に溶かされて飛ばされて、海に流されたり砂丘に飛ばされたりしてカメはすぐに消えてしまっただろう。砂浜からも子供たちの記憶からも。

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