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20年の時を経て

 葬儀の時は、必死で、どなたに連絡したらいいのか、彼の携帯中の連絡先を調べて、知っている限りの方に連絡をしました。葬儀には、座りきれないほどのたくさんの方が来てくださいました。葬儀後2ヶ月ほど経って、少し落ち着いた時間ができた時に、連絡し損ねている方がいらっしゃるかもしれないと思い、再度、夫の携帯の連絡先を確認しました。

 その中で、葬儀にお呼びをしなかったけれど、かつて年賀状のやり取りをしていた方や、私の記憶にあるお名前を見つけました。そのお一人が、夫が前職で、ある技術研究開発に携わっていた時にお世話になった方でした。夫はその方をとても尊敬していて、珍しく家で、研究に関する話をしていたことをうっすら思い出しました。

 つながるのだろうか、覚えてくださっているだろうか、と思いつつ、思い切って電話をしました。無事つながり、夫のことを報告することができました。その方はとてもご丁寧に対応してくださり、驚いていらっしゃってはいましたが、私と子どもたちのことをとても気遣ってくださいました。

 「父親目線の意見が必要になったり、どうしていいかわからない時は、何でも聞いてくださいね。いつでも連絡くださったらいいんですよ」と、優しくそしてさりげなく寄り添ってくださいました。その言葉に、夫が前職で築いてきた信頼と人間関係の温かさを感じ、胸が熱くなりました。


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