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救急車のサイレン、どう聞こえますか?

 救急車のサイレンを聞くたび、私はあの日、あの瞬間に引き戻されます。朝、リビングのソファで息絶えている夫を発見し、パニックの中で、声にならない声で助けを呼び続けたあの瞬間です。サイレンの音が響き、娘が玄関の鍵を開けてくれました。救急隊員の方が到着した時にはすでに手遅れで、何もできることはありませんでした。心臓マッサージを続ける私の手を止められた時の絶望は一生消えない感情です。

 救急車のサイレンを聞くたび、心が暗く沈み、どうしても顔を上げることができない私に、小学1年生の息子が優しく言いました。

 「ママ~、⚪︎⚪︎くん(自分のこと)な、今、救急車に乗ってる人が助かったらいいなって思うねん。これから病院に行って、助かるんやと思うよ。」

 その言葉に、私はハッとさせられました。息子は、これからの明るい未来を信じているんだと。私は、過去のつらい思い出に囚われているけれど、彼は未来を見つめていました。


 もちろん、それだけで心がすぐに晴れるわけではないけれど、息子の言葉に、少し救われた気がします。明るい未来を信じている彼の姿に、私も少しずつ、前を向いていけるようになりたいと感じました。

 よく「子どもがいてよかったね、寂しさ紛れるでしょ」と言ってくださる方がいます。確かに、子どもたちの存在は私の寂しさを和らげてくれます。

 でも、それだけではありません。彼らは、私に未来を見せてくれるんです。過去に引きずられる私を、未来へと引っ張ってくれる存在なんだと強く感じます。

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