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パパの車と家族の選択 Part1  〜車イコールパパだから〜

 夫が亡くなった後、さまざまな名義変更や手続きを淡々と進める中で、一つだけどうしても進められない問題がありました。それは、「夫の車をどうするか」という問題です。

 夫は数年前、転勤してから毎日通勤で車を使い、休日には私たちをいろいろな場所に連れて行ってくれました。突然「今日はここ行くで!」と遠くに連れて行ってくれたり、「ママ、今日はどこ行きたい?」と聞いてくれたり…。「パパと車」は、いつもセットで、私たちにとって車はパパそのものでした。夫が毎日乗っていた車、そのハンドル、キー、シート…すべてが彼を思い出させます。

 実は、夫が亡くなる一週間前に、家族で車を買い替える予定でディーラーに行きました。すでに長く乗っていたこともあり、夏の車検までに買い替える計画を立てていました。しかし、突然の出来事に全てが止まってしまいました。

  私は運転があまり得意ではないし、正直言って、もうハンドルを握る自信もありませんでした。何より、子どもたちを乗せて運転することが怖かったんです。もし何かあったら今度こそ立ち直れない……そんな思いから、車は手放したいと思っていました。

 そこで、子どもたちに「ママ、もう車は乗らないし、手放そうかと思ってるねん」と話したところ、二人は大反対。


「絶対にダメ。車ってパパやんか!」

「パパが大事にしてた車だから」

「パパが毎日乗ってた!」

と、二人とも強い思いをぶつけてきました。

 それを聞いて、私はどうすべきか悩みました。私にとっては運転が負担になる一方で、子どもたちにとってはパパとのつながりが込められた大切な車。簡単に手放す決断はできず、結論を出せないまま、時間だけが過ぎていきました。

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