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パパの車と家族の選択 Part3 〜パパおかえり〜

 前回の続きです。


 パパの車と家族の選択、最後のお話です。



 子どもたちが通っていた保育園の先生方には、夫の死後も本当にたくさんの支えをいただきました。子どもたちが卒園してもなお、私たちのことを気にかけ、優しく寄り添い続けてくださるその姿勢に、心から感謝しています。

 先日、夫が乗っていた車を手放すことについて、先生方にお話ししました。夫が毎日使っていた車、家族との思い出が詰まった車を手放すのは、私にとって大きな決断でした。そこで、私は最後に運転している姿を写真に収め、家の前でパパの車と一緒に記念撮影ができたらと思っていたんです。

 そんな私の思いを先生方に伝えたところ、すぐに「素晴らしいアイデアですね!」と共感してくださり、撮影のお手伝いをしてくださいました。

 真夏の暑い日、私は久しぶりに車のハンドルを握りました。これが、もしかしたら生涯最後の運転になるかもしれない―この車での運転は最後なんだ―そんな気持ちで、子どもたちを乗せて楽しく家の周りを一周しました。そして、家の前に戻り、パパの車の前で遺影を抱き、4人で写真を撮ることができました。

 車は手放すことになりましたが、パパが毎日握っていたハンドルだけは手元に残すことができました。それが、私たちにとって本当に大切なことでした。


パパ、おかえりなさい!

 後日、ディーラーさんからそのハンドルが戻ってきた時、「パパ、おかえり」と、まるでパパが帰ってきたかのように温かい気持ちで迎え入れました。ディーラーの方は優しく「将来、もし奥様が運転されることがあれば、ご主人のハンドルを使うこともできますよ」と、ハンドルを接続するための部品も合わせて私の手にしっかりと握らせてくださいました。

 まだまだ気持ちが揺れる日々があります。ふとした時に悲しみが押し寄せてくることもありますが、そんな時は、リビングに置いてある夫のハンドルをそっと握って、心を落ち着かせることができるようになりました。夫が毎日握っていたそのハンドルは、今もなお、私と夫をつないでくれている大切な存在です。

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