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銀木犀

あれは、いつだったか、君が好きだと言っていた花だ。

金木犀より銀木犀の方が好きだと 

見たことがないという私に

香りは金木犀の方が強いけれど
銀木犀はそれはもうとても綺麗なのだと

あれはいつのことだったかな。


もうすぐ街に金木犀が香る
一昨年、市役所の裏に、銀木犀の茂みを見つけた。

ねえ、もう君の2倍も生きちゃったよ
 
君が結婚したのにも大概驚いたけど
私が子育てしてるのも大概驚きでしょう?

わりと真面目に働いてるのよ

ママ友づきあいは難しいわ
ああでもママに限ったことじゃないか。
私が友達に急に無視されたり、急にブチ切れたりしたの、知ってるもんね。

知ってて変わらず接してくれてありがとう

お見舞いに結局一回しか行かなくてごめん

連絡してもらえるようにしてくれたんだよね、
電報なんて初めてもらったよ、
電話口で聞きかえしちゃったよ、
変な汗が出たよ

逃げるように帰ってごめん
なんか香典返しきてたけど何だったかな

旦那さんとは結局一回もしゃべんなかったな

もし人生に2回目があったら、また友達になるのかな
またこんな風に別れるのかな

一緒におばあちゃんになりたかったよ

また銀木犀を見に行くよ
君のことを思い出すよ
美化した思い出に登場してよ
お互いなかなか辛い青春だったけどさ
君の部屋に遊びに行くのは好きだったよ

久しぶりに封神演義でも読みたい気分だよ



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