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【長野からNYへ】 大学院留学の準備編:メディア系コースの選び方

大学院への進学は大きな投資です。特に海外で勉強するなら、学費も生活費も負担が大きくなります。後悔しないために、どの大学・プログラムに入るかはとても重要。私の場合、実際に出願する約2年前から、メディア・コミュニケーションやジャーナリズム関連のプログラムについてリサーチをはじめましたが、アメリカでは、メディア / ジャーナリズム系のプログラムは日本と比べものにならないほど多く、大学によって全く違いました。どこを受験するかは、かなり悩みました。

自分に合うプログラムを、どう探して、選べばいいのでしょうか。

多様なプログラム:実践か、研究か?

まず、一言で「メディア」「ジャーナリズム」と言っても、何を学びたいのかによって選ぶべきプログラムは全く違ってきます。

ざっくり分けると、ジャーナリストになるための実践的訓練を行う「J-school」と、メディアに関する研究に焦点を当てた「研究プログラム」があります。前者は、実際に取材して作品ポートフォリオを作り、就職につなげる、いわば「ジャーナリスト輩出学校」といった感じ。後者は、プログラムの集大成である「capstone project」として、卒業論文執筆を目指すものが多いです。

実際、私が通う予定のNYUにも、Arthur L. Carter Journalism Institute というJ-schoolがありますが、実際に私が選んだのはNYU Steinhardt校の研究を重視したプログラムです。

どうやって見分ける?


では、プログラムが実践系(practical)か、理論系(theoretical)かは、どう見分ければ良いのでしょうか。

ジャーナリズムの大学といえば、コロンビア大ノースウェスタン大ミズーリ大UCバークレー校などは知っている方も多いと思いますが、このあたりの有名校は記者トレーニングを行う実践系コースがほとんどです。ほかには、アリゾナ州立大シラキュース大 、アメリカン大なども知られています。

"Journalism school"や"J-school"で検索すると、理論系コースはほとんどヒットしません。代わりに、実践系コースを提供している大学のランキングやリストが大量に出てきます(ランキング順位はサイトによってまちまちなので、参考程度で)。同じJ-schoolでも、調査報道、データジャーナリズム、雑誌、写真、TVドキュメンタリーなど、どの分野で学びたいかによってかなり異なるので、具体的にコース内容を調べていきます。

まずは、大学のHPから「Curriculum」という項目を確認します。ここを読めば、プログラムの方向性がだいたいわかります。例えば、UCバークレーならこんな感じ。

"このコースではまず、地域ニュース、特集記事、マルチメディアツールを使った深掘り報道の手法から学び始め、その後は専門分野を選びます。上級コースでは環境、ビジネス、ヘルスケアのほか、データビジュアライゼーションなども学べます"

コロンビア大だと、同じスクール内でも、データジャーナリズム、Master of Arts、Master of Science、など複数のプログラムがあることがわかります。

試しにMSのカリキュラムをを見てみると、

"まずは、ジャーナリストの情報収集・分析スキルを学びます...少人数セミナーでテクニックや課題を議論し、ビジネス記事、速報を締め切りに間に合うよう報じる手法を学びます"

とあり、専門分野に特化していくバークレーよりも、もっと基本的な取材手法を学ぶコースだとわかります。一方、MAは3〜15年の経験者対象です。

コミュニケーション学科もチェック

私の場合、記者トレーニングではなく研究手法や理論を学びたかったのですが、こちらの方が探すのが大変でした。体系的にまとまっているページがあまり見つかりませんでした。検索方法を変えて、"media studies / graduate(大学院)" "communication /  graduate" といったワードで検索すると、いくつか引っかかりました。メディア&コミュニケーションといった名前のプログラムも多いです。

例えば、NYUのMedia, Culture, and Communicationプログラムのカリキュラムを見てみると、J-schoolとは全く異なり「メディア研究に必須となる理論的アプローチを学ぶ」「リサーチコースの単位取得が必須」とあります。記者トレーニングをするプログラムではないと分かります。

ボストン大でも、ジャーナリストとしての訓練を行うプログラム以外に、コミュニケーション研究、デジタルメディア研究などが専攻できます。NYUに比べると、理論と実践の両面からアプローチするコースです。

教授陣と研究分野・論文もヒントになる

実践系か、理論系かを絞り、いくつかプログラムをピックアップできたら、次に調べるべきは教授陣です。プログラムのHPには「Faculty」という項目があり、どんな人が何の授業を教えているのかや、専門分野が写真とともに紹介されています。

例えばNYUの常勤教授。「フェミニズムとテロとの戦い」「ジェンダーとセクシャリティ」「デジタルメディア」「右翼運動とメディアアクティビズム」など、それぞれの研究分野が書かれています。プロフィールを見れば、元ジャーナリストだったり、ずっと研究畑の人だったり、という傾向も分かります。これを見ながら、自分の興味に合いそうな研究をしている人はいるかな?と探します。

(個人的な感想ですが、HPが見やすくてコースの最新情報がきちんと手に入る大学は、質問への個別対応やその後の入学手続きもサポートが手厚く、良い印象を受けました)

さらに、Google Scholarで名前を検索して、どんな論文が出ているかも確認。「この人の指導を受けたい!」と思ったら、直接メールで連絡を取ってみます(うまく行けば、一本釣り合格、というパターンもあるそうです)。もしくは、自分が読んだ論文の著者を検索し、その人がどの大学で教えているかを辿っていくのも良い方法です。

最終的な決め手は?

こんな風に検索を進め、知り合いに聞いたり、留学フェアにも足を運んだりして、最終的には以下の5校に出願しました。

NYU Media, Culture and Communication
ボストン大 Emerging Media Studies
南カリフォルニア大 Digital Social Media
スタンフォード大 Learning, Design and Technology
カリフォルニア州立大 Mass Communication

ボストン大は、Emerging Media(新興メディア)という名前の通り、SNSなどを介したコミュニケーション研究、ビッグデータ分析、データビジュアライゼーションなどを学びます(このプログラムは比較的新しく、かなり面白そうでした)。南カリフォルニア大もデジタル分野に重きを置いていて、メディアリテラシーのプログラム開発に携わった教授がいたので興味を持ちました。カリフォルニア州立大は、実践+理論という感じです。

スタンフォード大は少し毛色が違って、実は教育学部のプログラムなのですが、メディアリテラシー教育という興味に近い視点から応募しました(残念ながら不合格でした)。

NYUは、グローバルな視点と領域の垣根を越えたアプローチや、他学部の授業も自由に取れることも魅力でしたが、大学にソーシャルメディアに関する研究を行うラボがあったこと(興奮して読んだ論文の著者が所属していた)、自分の興味に近い研究をしている教授陣がいたことは重要な要素でした。「記者トレーニングではなく、研究や理論を重視しているプログラム」とはっきり書かれていたことも、私の関心に合うと思いました。

私自身、色々な人にプログラム選びについて聞きましたが、「自分がやりたい研究や活動をしている教授がいるか」は大切だと言われました(確かに、全く接点がないトピックに興味があると来られても、指導する方も困るだろうと思います)。

正直、学費や生活費といったお金の事情も大学を決める大切な要素
です(都市部や私立大は高い)が、金銭的事情との折り合いを付けた上で、自分がどんな方向からアプローチして、誰に何を学びたいのか明確にすることで、選ぶプログラムが自ずと決まっていきます。

大学のランキングを参考にするのも良いと思います。ですが、最終的には大学名というより個別のプログラム内容を重視した方が良いです。総合順位が高くても自分のやりたいことを勉強できるかは分からないし、いわゆるトップ校ではなくても、メディアやジャーナリズムのコースは評判が良い、ということもあるからです。

日本語でのリサーチは、どうしても情報が限られるため、できれば直接英語で情報収集するのがおすすめです!少しでも参考になれば幸いです。


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