【vol.1-2 2021.9月号】安藤梢さんインタビュー「トップリーグ(WEリーグ)と市民社会が地続きになるには!?」
9月に入りました。いよいよWEリーグが開幕します。
1.当サイトで、安藤梢さんの存在を伝えていきたいと思った経緯
今回は、WEリーグ開幕にあたって、三菱重工浦和レッズレディースの選手であり、筑波大学の助教でもある安藤梢さんに、「トップリーグ(WEリーグ)と市民社会が地続きになるには!?」というテーマでZOOMを活用してインタビューさせていただきました(2021年8月25日)。
「地続き」の意味するところは、アスリートとサポーターをはじめとする市民がお互いにリスペクトしあう関係性を構築し、その輪が広まり深まっていくこと、であるとして、インタビューをすすめていきました。
「地続き」の関係性構築のひとつのきっかけとして、今回のインタビューを通じて、安藤梢さんの魅力を改めて発見し、その素晴らしさが少しでも伝わるように、読む人に元気になってもらえるような、そんな記事にしていけたらと思いました。
※以下、インタビュアー西出の発言は、西)、安藤梢さんは、安)で示します。
西)この度、ウェブサイト「女子サッカーに耳をすまして」を立ち上げました。コンセプトとしては、女子サッカー関係者だけで内輪っぽくなるのではなく、女子サッカーに今までそれほど興味のなかった人でも、「女子サッカーって面白いな」と思ってもらえるようなサイト作りを目指しています。今回の取材を通して、安藤さんの魅力を読者の皆さんにお伝えし、女子サッカー界にはこんな面白い人がいるんだ、こんな素晴らしい人がいるんだ、ということを知ってもらい、取材テーマでもある「WEリーグと市民社会が地続きになる」きっかけを作っていけたらと考えております。
安藤梢さん著「KOZUEメソッド」を読ませて頂いたのですが、私が思う安藤梢さんの魅力は、常に、「現状に満足しない」「壁にぶつかった時もなんとか乗り越える方法を考える」、といったチャレンジングであり続ける姿勢にあると思っています。コロナ禍で多くの人が心理的にチャレンジングになりづらい状況の中で、今回のインタビューを通して、「挑戦することの魅力」
を多くの人に伝えていけたらいいなと思っています。今日はよろしくお願いいたします。
安)よろしくお願いします。
<安藤梢さんのプロフィール>
1982年7月9日栃木県宇都宮市生まれ。16歳で日本代表に召集され、FIFA女子ワールドカップ アメリカ大会でA代表デビューし、女子ワールドカップ優勝やロンドン・オリンピック銀メダル、フランクフルトでは女子チャンピオンズリーグ制覇を経験するほか、7年半ドイツでプレーし、2017年に浦和レッズレディース復帰、昨年、なでしこリーグ通算200試合出場を達成した。現在、三菱重工浦和レッズレディースに選手として活躍しながらも筑波大学の助教を務める。
2.安藤梢さんの幼少期のエピソード
西)では、さっそく質問に入っていきます。「KOZUEメソッド」を読むと、幼少期は引っ込み思案だったとか、幼稚園にも行きたくない、というようなエピソードが出てくるのですが、コミュニケーションが苦手だったのですか?
安)はい。両親には大変な思いをさせてしまったと思います。バスが来ても柱につかまって拒んだり、みんなで歌を歌うとか、みんなでそろって何かをする、みんなで同じことをするというのがとにかく嫌だったんです。集団行動とかもできないですし、自分の気に入らないことがあるとお道具箱を投げたり。
西)結構ファンキーな一面があったんですね。
安)当時女の子はダンス、男の子はサッカー、をやる時間があったんですが、リズムダンスをやるのがすごく嫌でギャーっと泣いてやりたくないと言うものだから(両親が)しょうがなくサッカーをやらせてみたら、サッカーにのめりこんだみたいです。そのときに、好きなことをみつけました。それからは、サッカーをやるために幼稚園に通うという感じでした。当時は女の子でサッカーをやるというのは珍しくて、両親が園長先生に頼みに行って男の子達の中に入れてもらって、ユニフォームをもらえたのもすごく嬉しくて、よく覚えています。これが幼稚園に行くきっかけになりました。
西)家族以外の人とコミュニケーションをとるのにサッカーが良かったんですね。サッカーがなかったら、結構大変だったかもしれないですね。
安)はい。引っ込み思案で、人見知りでした。
3.サッカー人生が始まって以降のコミュニケーション
西)そうしてサッカー人生が始まって、それ以降、コミュニケーションで壁を感じたことはありますか?
安)サッカーと出会ってからは、みんなで勝利やゴールを目指してのめりこんでいました。コミュニケーションで壁を感じたことはないです。ただ、男の子の中でずっとサッカーをやっていたので、小学生の時とかは「あー女だー!」と言われたりするのは嫌でした。「女に負けるなー」みたいな声が聴こえてきたりしました。でも、そういった悔しさも、力に、バネにして頑張りましたね。
西)「KOZUEメソッド」を読むと、日本からドイツに渡った時に、日本では「我慢強さ」「空気を読む」といったコミュニケーションのあり方が重視されるが、ドイツではむしろ「自分を信じる強さ」「議論すること」が重視される、というような記述があり、コミュニケーションのやり方が大きく変わったというようなエピソードがありましたが、そこの壁の乗り越え方みたいなものはなにかありましたか。
安)ドイツに行って、本当に日本とは全く違った文化で、日本では、空気を読んで「黙って努力して結果を出す」みたいなことが美徳とされますけど、ヨーロッパだとそれが通用しなくて、ドイツでは、「自分はすごい!」「自分はこれだけのトレーニングをしている」とアピールしてやっと認めてもらえるんです。本当に、ミーティングでも、自分の意見をぶつけあわないとやっていけないというのは味わったので、そこは壁と言えば壁でしたね。全然違う世界で初めての経験でした。でも「違う文化を学びたい」とは思っていたので、難しいこともありました(自分を最初理解してもらえないとか、自分の態度を変えていくとか)けど、やりながら自分が変わっていくことを楽しめました。
西)サッカーを通して、文化の違いも楽しめたと。
安)そうですね。文化の違いとか、違う考え方がある、という感覚を体験できたのは本当にサッカーのお陰だなと思います。でも、そういうときに、思い切ってぶつかっていくというか、最初はドイツ語がすごい下手で、いろいろわからなくても、間違っても何か言うことで道が開けたり、皆の反応が変わっていくことを体験できました。ちょっとくらい間違ったことでも恥ずかしがらずに何か言う、トライする、そういう姿勢というのは相手に伝わるので、そういうことはすごく学びましたね。
4.サッカーにおける「厳しさ」「闘う姿勢」について
西)ドイツでサッカーの厳しさ、闘争心を学んできたというお話を伺ってきましたが、日本のサッカー指導の場面でも「厳しさ」「闘う姿勢
」ということは再三聴こえてくるフレーズなのですが、日本とドイツでは、厳しさの種類が違うとか、安藤さん独自で、闘う姿勢とはこういうものだ、といったお考えはありますか。
安)文化の違いもあると思うのですが、オーバーリアクションというか、悔しいとか悲しいとか戦っているんだ、というのを体全体で表す、というのは感じましたね。
西)感情を表に出すということですね。
安)はい。サッカーだけじゃなくて、ヨーロッパで出会った音楽をやっている方とかも同じように言うんですけど、もっと爆発的に感情表現したり大胆に表現したりとか、表現の仕方が全然違うんですよね、そういうことがサッカーの中でもすごくありましたね。ただぶつかるだけじゃなくて、周りにも伝わるくらい、相手を吹き飛ばすというか、ファウルだと思えば審判に猛アピールするし、相手を刈るようにスライディングするといったことが監督に評価されるし、スタンドで見ているファンもそういうことを求めてくるんです。キレイにシュッとスライディングしてボールを奪うプレーは日本みたいに評価されないんですよね。ドイツではわざとベンチの前で激しくスライディングしてアピールするなどもしていました。そうすると「コズエは戦っていていい選手だ」と評価されて試合に使ってもらえました。それぐらい大げさにやっていました。
西)日本のサッカー環境では、指導者が怖くて、怖いから怒られないようにプレーする、みたいな「外発的な厳しさ」の場面が見受けられることがありますが、ドイツのサッカー環境や安藤梢さんの話からは、自発的・内発的な厳しさがあるという印象があります。
安)そうですね。ドイツにいたときにすごく思ったのは、監督と選手は対等に話すということです。戦術や普段のことなども同じ目線で議論します。このことはいいところだなと思いましたね。
西)そういう文化を、今は三菱重工浦和レッズレディースで伝えていっているというようなところもあるんですか。
安)私が小中学生のときの指導現場と比べると、日本の指導現場も変わってきていて、すごくオープンな指導者の方もいらっしゃいますし時代も変わってきていると感じます。上下関係っていうものも、ある程度年上の人をリスペクトする気持ちは必要ですけど、サッカーのピッチの中では上下関係はいらないものだと思っているので、そういうものはなくしていきたいなと思っていますね。普段も自分が年上なので遠慮されがちなので、フランクに話すように心がけています。若い子もどんどん意見を言って、いい意見やいいものをもっている選手が沢山いるので、そういったところを伸ばしていって、チームに還元されたらいいなと思っています。若い選手とお互いにいいものを出し合えるような雰囲気にしたいと思っています。
5.新たなチャレンジとしての大学の助教としての生活について
西)ここまで、選手としての安藤梢さんのお話を伺ってきたんですが、今年に入り、また新たなチャレンジとして、大学の先生のお仕事をされるということで、選手生活とは厳しさの内容が違ったり、難しいと感じていることがあったりしますか?
安)全然違いますね。学生に指導するという立場になったり、研究者として研究をすすめていくことなど、これまで歩んできた選手生活とは全然違う、いや全然ではないですけど・・・新人みたいな気持ちですね。サッカー選手としてはベテランだけど、大学では新人なので、自分でも面白いなと思っています。スイッチの切り替えをしていますね。サッカーではラフな格好で来て、大学ではピシッとした格好をしてくるとか。ただ、そういうときに、サッカーで培ってきた経験が生きている面もあります。新しい人間関係、先生方であったり学生さんたちの中に入ってコミュニケーションをとることは、サッカーでいろんな方に出会ったりヨーロッパに行って全く知らない人たち、文化の違う人たちに自分を認めてもらうというところはすごく似ています。それから、日本からドイツに渡ったときに、半年くらいして慣れてきたんですが、今大学の生活も、半年くらい経って慣れてきていて、リズムがあるのは一緒だなと感じています。大学の生活でも、サッカーと一緒で全然うまくいかなかったな、とか、悔しいこともあるけど、それをまた乗り越えると新しい自分と出会える、そこもサッカーでやってきたことが生かされるなと感じています。
西)「突き詰めていく」という点ではサッカーも研究も同じですものね。
安)そうですね。
西)現在研究しているテーマはありますか。
安)一番は、「女子サッカーの競技力の向上」に貢献できるような研究ですね。教員になってからジェンダーの問題だったり女性のセカンドキャリアについても学ばせてもらっているので、WEリーグが始まって、社会的な面からもアプローチした研究ができたらいいなと考えています。
西)「競技力の向上」は具体的にどうしていったらよいのでしょう?簡単に言える話ではないと思うのですが。
安)自分がずっと大学で被験者として積み重ねた研究の経験があって、世界のサッカーがすごく「高速化」、だけでなく「巧速化」してきているので、それら両方を発展させるトレーニングを開発したいと考えています。
西)「KOZUEメソッド」を読ませて頂いても、とても突き詰めて具体的に書いてあってとてもわかりやすくて一気に読んでしまいました。具体化していく、ということが大切なんですかね。
安)そうですね、実際に新しいトレーニングも開発できればいいなと考えています。それが日本の女子のサッカーのレベルアップにつながって、また世界一をとれるような、世界一でありつづけられるようにしたいです。よく「女子サッカーを文化に」と言われていますけど、やっぱり常にワールドカップやオリンピックで世界一を狙える日本の女子サッカーであってほしいな、という想いがあるので、少しでもそこに貢献できたらいいなと思っています。
西)東京オリンピック男子サッカーで、田中碧選手が、世界レベルと比べて、日本のサッカーは個人個人で完結してしまっている(海外と比べて連動性の部分で質が低かった、海外は「サッカーを知っている」と感じた)というような指摘をしていましたが、女子サッカーではどうですか。
安)でも、日本のコンビネーションやコミュニケーションは強みだと思います。世界と比べて個のところが足りないんです。その個がつけば、コンビネーションもさらによくなります。個の力をもっと高めていけると思います。
6.サッカーの魅力(1)
西)「競技力の向上」に力を注ぐというお話を聴いてきましたが、このウェブサイト「女子サッカーに耳をすまして」では、「普及」も大事にしています。スポーツに苦手意識がある子などは、安藤梢さんの「自分への厳しさ」「闘う姿勢」の話などを聴くと、私にはできない、という気持ちになってしまうかもしれません。厳しくすることがサッカーを面白くする、というような、厳しさを魅力に変えていけるようなお話を伺えるとよいのですが。
安)自分では自分に厳しくしているとか律しているとかっていう思いは全くなくて、根本はとにかくサッカーが楽しくて仕方ない、好き、ということなんです。すごくサッカーが好きで、楽しいから、もっともっとうまくなりたい、そこが一番です。ですので、そのために逆算して何をしたらいいか、と考えたり、すべてにおいて楽しくやっていますね。外からみたらきついトレーニングかもしれないけど、それをやれば新しい自分に出会えるし、また一歩レベルアップできると思ったら、すごくやりがいもあります。そして、その中で「目標」があるといいですね。「目標」がないと頑張れないと思うので、次の試合で勝つとか、市の大会で優勝するとか、レギュラーになるとか、自分の中で目標を決めて、そこに向かって挑戦していく、というのがサッカーの魅力じゃないかなと思います。
7.長期に渡って向上しつづける、向上する意識を持ち続けていくためには
西)2011年のFIFA女子ワールドカップ世界一以降も、アンダー世代は度々世界一になっていますが、世界のレベルが上がっていることもあると思いますが、フル代表が世界一から遠ざかっていますね。安藤梢さんのように、長期に渡って向上し続ける、向上する意識を持ち続けるコツはあるのでしょうか。
安)(しばし考えてから・・・)「トレーニング生活の確立」ですかね。自分の中で一週間の過ごし方を確立するのは大事ですね。ただダラダラやるんじゃなくて、選手として、日曜日に試合があったら、一週間をどういう風に生活するか考えます。それが積み重なって1か月、3か月、1年間となっていって、、私は結構1週間単位とか1か月単位で考えていますね。その生活のリズムが確立されたら、それを継続してどんどん続けていきます。例えば自分が一番気をつけているのが、高校から大学に上がるときとか、一人暮らしが始まったり、(環境の変化で)これまでのリズムが変わる時は、食事の時間がズレたり、とか寝る時間が少なくなったり、そういうところですごくコンディションが変わる、コンディションを落としてしまう、ということがあります。私もドイツに行ったときにスーパーに行くにも、どこに行っていいのか分からなかったり、色々なことがうまくいかなかったのですが、そこをまず最初にしっかり、自分の中で「トレーニング生活を確立する」っていうのは意識しました。
西)安藤さんは、これまでに1度大けがをされていますよね。そのときも、やはり逆算して克服してきたのですか。
安)はい、怪我したときは本当に苦しかったですし、悔しかったですけど、怪我して、復帰したことも自分自身で体験できたので、それ以降は、「怪我しないような体づくり」にも生かしていけています。今こうして怪我無く長くプレーできているので、いろんな思った通りにいかないことからも得れるものがあるということをサッカーから学んでいます。怪我してみないとわからない、手術した人の気持ちも、自分が体験したからこそわかるというところもあるのかなと思います。
8.女子サッカーに対する願い
西)ウェブサイト「女子サッカーに耳をすまして」は、いろいろな層の方々に読んで頂いているのですが、女子サッカー界に向けて何かこうしたい、こうありたい、というようなものはありますか。
安)そうですね、WEリーグが始まりますし、なでしこの認知度が上がってきて皆に知られてきていると思うんですけど、少女たちが、将来WEリーグの選手になりたい、プロサッカー選手になりたい、日本女子代表として活躍したい、とか、さらに、海外移籍をして、チャンピオンズリーグに出て優勝したいとか、バロンドールを獲りたいとか、夢を大きく持って、少女たちがそういう目標をもってくれたら・・・女子サッカーがそういう存在になったら、嬉しいですね。
西)私たちの世代の頃だと、女子サッカーに具体的な職業としてのイメージがそんなになかったと思うんですけど、そのときに、小学生のときに、安藤さんは「世界一になりたい」と思っていたわけですよね。それが本っ当にすごいなと思って・・・。
安)私もそう思います(笑)。サッカーで一番になりたいという想いからそうなったんだと思います。
西)思っていると実現するものなんですね。コロナの状況でいろいろあるんですけど工夫して夢を描いていたら実現する、っていうような(希望が生まれる)、なにかきっかけになるといいですよね。
安)そうですね。
安)アメリカは女性のスポーツの一番人気が女子サッカーなんですよね。だから、よくアメリカに遠征に行くとスタジアムに子供たちがいっぱいユニフォームを着て待っていたり、近所の芝生で女の子たちがサッカーをしていたり、日本もそういう光景が当たり前になっていってほしいというのはよく思ってますね。
西)日本も昔は女の子でサッカーやっていると「あー!」みたいに指さされるようなところがありましたが、今は普通になってきつつはありますよね。
安)それがもっと日常になってほしくて、そのためにWEリーグは大きな役割をもっていると思うので、「あんな選手になりたい」と思ってもらえるように頑張りたいです。
9.サッカーの魅力(2)
西)目標に向かって、緻密に逆算して、目標を達成する、それが、安藤さんもおっしゃってましたけど、別に自分に厳しくとかじゃなくて、(その過程が)面白くて楽しいことなんだということが、すごく伝わってきました。そういう話を伺ってきて、読者の皆さんの中でスポーツが得意じゃないとか苦手意識がある人でも、もしかしたら面白いかも、とか、やってみよう、っていうふうに今回の記事を通して伝わるような気がしています。貴重なお話をありがとうございます。
安)そうですね。サッカーとかやっていたら、「失敗」とか「負け」とかって、最初は本当に克服できないとか挫折とか、うまくいかないことの対処ってできないんですけど、それができるようになると、「チャレンジすることが楽しい」とか、うまくいかないことがあっても「あ、これ今自分試されてるな!」、と思えます。
西)あ、逆にもう楽しくてわくわくしちゃってるんですね(笑)そしたらもう最強ですね!!
安)サッカーから沢山学びましたね。団体スポーツなので、仲間から学ぶことも沢山あって、違う考えをもった選手から学ぶことがあったり、自分ができないことをチームメイトから学べたり、お互い高め合っていけるのも、サッカーの魅力だと思います。あとはサッカーをやっていると、メディアの方々と出会えたりとか、サッカーを通して色んな人と話せたり出会えたり、海外に行ったのもサッカーがあったからですし、海外の選手と仲良くなれたり、いろんな経験ができるというのはサッカーの魅力かなと思いますね。サッカー仲間が沢山できますね。
西)私のウェブサイト「女子サッカーに耳をすまして」は、女子サッカーを通して「人を尊重する」ということをコンセプトとしているところがあるんですけど、安藤さんはコンセプトとかそんな力入った感じではなく自然体で人を尊重している方だなと、チームメイトに対するリスペクトだったり、関係者に対するリスペクトだったり、というお話から感じたんですけど、やっぱり、そこが大事ですよね。
安)そうですね。サッカーやっていて、リスペクトできる方が沢山いるので、そこもサッカーのいいところですね。
西)人をリスペクトすることを学べますよね。
安)すごいなとか素晴らしいなと思う方と沢山出会いました。ヨーロッパに行ったときは、海外に行っている男子選手とお話する機会もあったり、そういう選手から刺激を受けたりもいっぱいあります。今の若いレッズレディースの選手も、私が二十歳くらいのときよりしっかりしていますね。(若い選手たちと)色んな話ができるのも面白いです。
西)そうですよね、世代を越えた交流も生まれますよね、サッカーって。
安)そうなんです。今の若い選手の話、どう思っているのかも聴けますし、お互いに高め合えるのもよい機会ですし、20歳くらい離れている選手と話すことなんてなかなかないですよね。
西)会社員のお仕事とかしていたりすると(対等にという感じでは)無いですよね。
安)はい、フランクに話してますね。そこは本当にサッカーのいいところだなと思いますね。1回一緒にボール蹴っちゃえば友達みたいなところありますね!!
10.編集後記
今回のインタビューを行うにあたり、安藤梢さん著「KOZUEメソッド」をはじめとして、様々なメディアや動画などをみて、予習していたわけですが、その予習段階で、私は安藤梢さんについて穏やかに見えるけど間違いなくストイックに物事を突き詰める方だという印象を持っていました。また、私自身が、サッカー経験の中で、「厳しさ」や「闘う姿勢」といったものを自分自身に求められたり、指導者が選手に求めている場面に第三者として遭遇することが非常に多く、いつもわずかな違和感を感じることがあったので、この機会に「厳しさ」や「闘う姿勢」について、多くのアスリートの中でも特にストイックさが感じられる安藤梢さんはどう考えているのか、是非とも知りたいと思っていました。インタビューを終えた今、「厳しさ」「闘う姿勢」という言葉の奥にあるものを、以前よりもずっとしっかり捉えられるようになった自分がいます。大切なことは「厳しさ」や「闘う姿勢」という表面上の状態のことではなく、その奥にある、サッカーそのものに対して面白い、楽しい、だからもっとうまくなりたい、と心から思える気持ちをまず育てていくことなんだということでした。その土台なしに、表面的に厳しさや闘う姿勢を求めても、サッカーは続いていかないと思いました。インタビューの中で、安藤さんは、「文化の違い」「思い通りにいかないこと(怪我など)」「失敗」「負け」といった、一見ネガティブにとらえてしまいがちな現象を、いつだって面白がり、楽しみ、最終的にはご自身の糧にしてしまっていました。チャレンジすることが心から大好きで楽しめる人なのだと思いました。外側からは、厳しく、辛くて、大変で、苦労して、難しくて・・・etc.といった側面が強調されがちな「挑戦」ですが、その「挑戦」のプロセスに面白さ・楽しさを見出すことができるところが、安藤さんの強みであり魅力であると改めて思いました。「挑戦」することを面白がり、楽しむためのヒントもくださいました。それは、具体的に「目標(夢)」を設定し、そこから「逆算」して、何をしたらよいか?と自分で考えるということ。そして、長期的に続けていくにあたっては、「(トレーニング)生活リズムの確立」が非常に重要であるということも具体的に話してくださいました。また、ドイツでの経験からは、内側から闘う姿勢を湧き出していくには、感情表現を豊かにすることがその源泉になるのではないか、というヒントも頂きました。そして、挑戦して、目標を達成した先には、「新しい自分に出会える」「(サッカーを通じて)いろんな人と出会い、リスペクトする関係性を構築することができる」といった景色が見えてくるということを、心から楽しそうにお話してくださいました。
9月12日、WEリーグが開幕します。このインタビューを終えて、私はますます安藤選手のプレーを見ることが楽しみになりました。一瞬一瞬のプレーの中にそれまでの人生で懸けてきたものが詰まっているんだということが分かった今、本当に、そんなプレーを観戦することができる私たちは幸せ者だと思いますし、学ぶことが沢山あると思いました。また、筑波大学の助教としてのお仕事もされていくということで、選手としてだけでなく、一人の人間として、楽しそうに新しいことに挑戦し続ける安藤梢さんをこれからも応援していきたいと思いました。
読者の皆さんは、今回の投稿記事を読んで何を感じ、どう考えてくださったでしょうか。感想やメッセージなどありましたら、是非お寄せください。
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この度、とても大切な時期に、とても大切なお時間を頂いて、貴重なお話を沢山してくださった安藤梢さん、本当にありがとうございました。