私の虚無スパゲッティ
文章を書くのは久しぶりである。
「書く」という行為は、証券会社時代に、顧客に万年筆で巻物を書くことを強要されて以来である。
先日、敬愛するにゃんたこ氏が「世界は救えないけど豚の角煮は作れる」というエッセイを出版した。また、彼女の配信を通じて知り合った夜行性の鳥類の方が、noteに日記のようなものを記しているのを読んだ。これらが、久しぶり何かを書きたくなった理由である。
「虚無スパゲッティ」というのは、にゃんたこ氏が、金銭的に余裕のない時代に食していた、具のないスパゲッティである。私も大学時代に留学していた際には、同様のものをよく食していた。留学先はフランスの、パリからは2時間ほど離れた港町であった。スーパーは家から少し距離があり、買い物に行くのも面倒。フランス人は休日なんかは、朝から近所のブランジェリー(パン屋)にバゲットを買いに行くというが、何が好きで休日の朝から買い物に行かなければならないのか、私には全く理解できなかった。そこで生き長らえるために食べていたのが自己流の「虚無スパゲッティ」だった。
私のレシピはいたって単純明快。パスタ、塩、胡椒、ラー油。以上である。具はないため、炭水化物の塊に、ラー油で脂質をトッピングした、極めて不健康な料理である。味は思いの外、美味しい。そもそも、胡椒とラー油で味をつけているのだから、美味くならないはずがない。ちなみに、日本にいるときは体重57kgで、陸上競技をしていたので脚だけは筋肉質という体系だった。留学終了時には、筋肉が落ちて体重52kgになっていたが、「虚無スパゲッティ」のおかげで、お腹にはたくさんのフランス育ちの偉そうな脂肪が鎮座していた。
私には、にゃんたこ氏のような文才も無く、題材にするような出来事のない空虚な人生をおくっているが、暇を持て余した夜にはまた何か書いていこうと思う。