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テクニカルピッチで精度よく球速を計測するために重要なこと

こんにちは、みさわです。今回は野球界の画期的なIoTデバイスである『テクニカルピッチ』で球速の計測精度を上げるために、私が重要であると考えることを書いていきたいと思います。(あくまで素人意見です)

最初に結論を述べますと、テクニカルピッチで球速の計測精度を上げるために重要と考えることは以下2点です。

1.投球距離を正しく測る。(できれば正規距離のマウンドで計測する)
2.身長を正しく入力する。

説明書に書いてあることそのままですね。笑
本稿はテクニカルピッチを使用している中高生やその親御さんを対象として想定し、なぜ上記2点が重要なのか考察を交えて説明して参ります。

テクニカルピッチとは

そもそもテクニカルピッチとは何ぞやということについて、本稿を読んで頂いている方には改めて説明不要かもしれませんが、念のため概要を記載しておきます。

商品名:TECHNICAL PITCH
メーカー:SSK(軟式球は内外ゴムが共同メーカー)
価格:27,500円(税別)
センサー:角速度、加速度、地磁気(いずれも3軸)
計測項目:球速、回転数、回転軸、球種、変化量、腕の振りの強さ

球速だけでなく回転数や回転軸を計測できる機能を、この価格帯で提供しているというところが画期的ですよね。(これらの項目を計測できるデバイスはいくつかありますが、他は数十万円~1,000万円クラスだと思います。)

球速計測方法の考察

テクニカルピッチがどのように球速を計測しているのか、そのメカニズムは大枠では以下のようなものだと考えられます。

1.加速度センサーで投球時間(リリース~捕球)を計測
2.投球時間、投球距離をもとに球速を算出

それぞれ解説していきます。

<1.加速度センサーで投球時間(リリース~捕球)を計測>
概要のところで記載しましたが、テクニカルピッチには『加速度センサー』というものが内蔵されています。これによってリリースの瞬間と捕球の瞬間を捉え、投球時間を計測していると考えられます。投球時間はアプリの計測画面で『Ball』と表示される部分のことです。

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どのようにして加速度センサーでリリースの瞬間と捕球の瞬間を捉えているかですが、これを理解するためにひとつだけ物理法則の式を知って頂きたいと思います。『ニュートンの運動の第2法則』と言われる法則です。

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ニュートンの方程式によれば、物体の加速度はその物体が受ける正味の力に比例し、その比例係数は慣性質量となる。(wikipediaより)

野球の投球においては、以下を当てはめて考えます。
F = ボールに作用する力
m = ボールの重さ
a = ボールの加速度
ボールの重さは規定されており一定(実際にはやや幅がある)ですので、加速度が分かればボールに作用している力が分かることになります。

野球の投球は身体の動作でエネルギーを生み出し、最終的に指先を通してボールに力を加えてボールを加速させる運動です。従って、ボールと指先が接触している間は基本的にはボールに対して力を加えており、リリースで指先とボールが離れた瞬間にボールに加わる力(=ボールの加速度)が0になります(正確には空気抵抗によりボールには進行方向に対して逆向きの力=加速度が働きます)。この瞬間を加速度センサーで捉えていると考えられます。

空間に放たれたボールは力を受けていないところから、捕球の際に進行方向に対して逆向きの力(=加速度)を瞬間的に受けて止まります。リリースの瞬間と同様に、捕球の瞬間のこの加速度の変化を加速度センサーで捉えていると考えられます。

以上のように、加速度センサーでリリースの瞬間と捕球の瞬間を捉え、その間の投球時間(『Ball』で表示される時間)を計測していると考えられます。

<2.投球時間、投球距離をもとに球速を算出>
投球時間が計測できましたので、あとは投球距離が分かれば球速が算出できます。『 速さ = 距離 ÷ 時間』という小学生の頃に習った気がするあの公式です。アプリの設定で投球距離を指定するのはこのためです。

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精度よく計測するためにはここで自身の競技カテゴリに合った正しい距離を選択するとともに、選択した距離で実際に投球計測することが重要です。

もうひとつ、投球距離を正しく算出するためには身長を正しく入力するということも重要です。投球時間の計測のところで「リリース~捕球の時間を計測している」とお伝え致しました。私は草野球をやっていますので、投球距離を社会人の18.44mを選択したとします。しかしながら、リリース~捕球の距離は18.44mではないですよね。投手はピッチャープレートより前でリリースしますし、捕手はホームベースより後ろで捕球します。従いまして、球速を算出するにあたっては選択した投球距離をもとにリリース~捕球の距離を推定で決めていると考えられます。その際、捕球位置は一定と仮定するとして、リリース位置は身長やステップ幅、体幹や腕の角度など様々な要素に左右されます。テクニカルピッチにおいてはこれらを身長で代表して、リリース位置(→リリース~捕球間の距離)を決めていると思われます。そのため、身長を正しく入力することが投球距離、ひいては球速の計測精度を上げるために重要であると考えられます。

このパート最後に、球速算出方法について補足を加えておきます。ここまでの説明で投球時間と投球距離から球速を算出しているであろうことがお分かり頂けるかと思います。しかしながら、ここまでの情報から算出できる球速は(社会人の場合)約18.44mの間の平均球速です。初速ではありません。ボールは約18.44mを進む間に空気抵抗を受けて減速します。恐らくですが、平均球速から空気抵抗による減速の影響を計算して(アルゴリズムを組んで)初速を推定算出して表示していると思われます。初速を直接計測している訳ではない、ということは認識しておいたほうが良いと思います。

距離の違いによって球速にどれほど影響が出るのか

球速を精度よく計測するには投球距離の設定を正しく行うことが重要ですが、距離設定の違いによってどれほど球速に影響が出るのか簡単な試算をしてみます。130km/hのボールを投げる人が18.44mではなく、実際には18.34mで(10cm短く)測定した場合に、算出球速にどれだけ差が出るか計算をしたのが下表になります。

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とてもざっくりな試算ですが、130km/hのボールを投げる人では10cm実測定距離が短くなる毎に約0.7km/h球速が早く算出される計算になります(1m短くなると約7km/h)。意外に影響大きくないでしょうか?

実際に私が計測した際の事例もご紹介致します。
左が正しく計測できた投球、右がキャッチャー手前でワンバウンドした投球です。記憶ベースですが大体60~80cm手前でバウンドしたと思います。

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注目して頂きたいのは『球速』と『Ball(=本稿で云う投球時間)』です。投球時間はバウンド投球のほうが0.018秒短いことが分かります。先ほどの試算表をもとにすると、投球時間が0.003秒短くなる毎に球速が約0.7km/h速く算出されます。従いまして、投球時間が0.018秒短くなると球速は約4.2km/h速くなる計算です。実際には131km/h → 136km/hで約5km/h速い球速が表示されており、試算に近しい結果であると考えられます。また、投球距離についてみますと、投球距離が10cm短くなる毎に投球時間は0.003秒短くなりますので、投球時間が0.018秒短いということは投球距離が約60cm短かった可能性があるということになります。おおよそ60~80cm手前でバウンドしたという私の記憶も大体合っていそうです。

ここまででテクニカルピッチで球速計測するうえで、距離設定がいかに重要かということがご理解頂けたかと思います。実際に計測するうえでの留意点をまとめておきます。

・投球距離は自身の競技カテゴリに基づいて正しく選択する
・身長は正確な値を入力する
・計測時、キャッチャーの捕球位置は一定を心掛ける
・捕球手前でバウンドした投球(特に低めの変化球など)の球速は解釈に注意する(実際の球速より速く表示されている可能性が高い)

テクニカルピッチのメリットとデメリット

最後にテクニカルピッチのメリット・デメリットとその活用方法について、私の考えをまとめて終わりにしたいと思います。

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・メリット
冒頭でも述べましたが、この価格帯のデバイスでこれだけ多様な項目を計測できるというのは大きなメリットであると考えられます。ちなみに球速以外の計測項目の精度については以下のように考えております。
-回転数:精度は高いはず。ただし使用所感としてはやや高めの数値が出る印象。
-回転軸:精度はスマホ側のセッティングに依存する。
長くなるので詳細は割愛致します。もしニーズがあれば記事にするかもしれません。

・デメリット
一方で、計測状況(特に距離)の影響を受けやすいため、計測環境が限定的であるというところがデメリットであると考えます。

メリット・デメリットを踏まえると、その活用方法はブルペン投球(常に同じブルペン)で各項目について感覚と数値をすり合わせていくのに使用するのが良いと考えます。特に絶対値を評価するよりは、数値の変化(推移)を追っていきながら感覚とすり合わせていくのが良いように思います。

一方で十分な距離が確保できない自宅での球速計測や、遠投、野手の送球の球速計測には向きませんので、そういった計測にも使用したい場合はスピードガンをオススメ致します。同じくらいの価格帯でスピードガンも販売されています。

スピードガンはマイクロ波などを利用しドップラー効果をもとに球速を計測しますので、基本的に投球距離によらず球速計測が可能です(精度は主に角度に依存)。ただし、回転数や回転軸は計測できませんので、目的に応じて使い分けるのが良いと思います。

テクノロジーの進化によって、今後も様々な便利なデバイスが登場してくると予想されます。デバイス購入前に使用目的をしっかりと考えて、活用するデバイスを選択していきたいところです。

最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。




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