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最近の年寄りは物を知らない

実話を基にした物語です。

あ!また忘れた。
仕事帰りにごま油を買おうと思ってスーパーに立ち寄るが毎回買うのを忘れて帰宅してしまう。

俺は、実家の近くにある祖父母の家で暮らしている。就職した大手家電販売店の配属先が幸運なことに近所だったのだ。なぜ実家ではなく祖父母の家なのかというと、祖父母は共に80歳を超える老夫婦、もしも何か起こったときのために、母親から祖父母宅へ配属された。かれこれ3年一緒に住んでいる。老人との暮らしは色々と大変だ。毎回同じ話を繰り返す、あれがない、これがないと騒ぐのが日常だ。そして最近買ったスマホの練習にも付き合わされる。

時を戻そう。明日祖母が買い物に行くというので、ごま油を買ってきてもらうことにした。ただやはり83歳を相手に一筋縄ではいかない。
俺は10回以上ごま油と唱え、メモを渡した。

翌日仕事から帰宅し、ダイニングテーブルに目をやると瓶が置かれていた。
おっ買ってくれたんだ。
ごま…ごまぁ…ごましゃぶ。
え?なんで?

何度も何度も見返したが、ごましゃぶ(しゃぶしゃぶ用のゴマだれ)だ。
ごま油ではない。

ちなみに俺はよくごま油を使っている。そしてキッチンには見えるところにごま油を置いている。祖父母はごま油をよく使っているところを見ていたはずだ。逆に俺がごましゃぶを使うところを見たことはないはずだ。もはやミステリーだ。そもそも、昔から少し抜けてるところがあるから、ボケなのか素なのかわからない。もうどうでもいい。

思わず家族のSNSへ連絡した。
すると家族から、年寄りにお願いするのが間違ってるだのあーだこーだといわれ、別の話になり久々の談笑を交わした。そしてその談笑が終わりかけた時、沈黙を保っていた母親から一言メッセージが届いた。
母親「ごま油って何?」
え?ウソだろ?


俺は気づいた、ごま油は若者の日常品なのである。

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✎𓈒𓂂𓏸 mimisan
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