壮大なドラマとしてのプロレス②
アントニオ猪木はカッコ良かった。世界一強いと本気で思っていた。
けれども猪木とアンドレ・ザ・ジャイアントの試合はさすがにアンドレのほうが強い気がしていた。
しかし、柔よく剛を制すで、猪木が巧みな作戦を立てて、うまく試合をして、結果的には勝つのではないかと期待も込めて予想していた。
それぐらい猪木にはカリスマ的な魅力があった。
それで、アンドレと試合した時には、アンドレをうまいタイミングで持ち上げて、ボディースラムで投げた。こういうところにロマンがあると思った。
実際にどっちが強いとか、勝敗がはじめから決まっているとか、そんなことはどうだっていい。
時には意外な結果になることでさえ、面白かった。
例えばそれは猪木とハルク・ホーガンの試合。
第1回IWGPのチャンピオンを決める優勝決定戦。
その試合では終始、ハルク・ホーガンが試合をコントロールして、力でも内容でも上回っていた。
それでも最後には大どんでん返しで、猪木が勝つのが定番って言えば定番なんだけど、事件はその後に起こった。
なんとエプロンサイドに上がった猪木に、ホーガンがアックスボンバーで追い打ちをかけて、そのまま猪木は舌を出して失神し、リングアウト負けとなったのだ。
これは勧善懲悪で、正義が勝つのを楽しみにしていたボクはショックを受けた。
のちに、その試合についてはさまざまなところで、いろいろな噂が流れた。
しかし、こうした事件こそが、新日本、そして猪木ならではの魅力であった。
案の定、翌日学校ではその話題で持ちきりだった。
しかし、そのブックを外れた事件もまたドラマとして語られることになった。
リングアウト負けになる寸前、坂口をはじめ、猪木のセコンドの数名は、失神した?猪木をリングに無理やり入れたが、猪木は気を失った?ままだった。
それで解説の山本小鉄さんが、セコンドは手を出してはいけませんね、と言っているのが印象的だった。
それでもレフリーはカウントを数えるしかなく、猪木はリングアウト負け。
そのまま救急車が到着して、猪木は病院に運びこまれたという。
これはどこまでが本当で、どこまでが猪木の演技なのかはわからない。
その試合では終始、ハルク・ホーガンが試合をコントロールして、力でも内容でもテクニックでも、ホーガンは猪木を上回っていた。
ほとんど何一つ、猪木がホーガンを上回っていたものはなくて、あえて一つだけ言えば、ファンの声援の多さだけだった。
それでも試合後は、猪木が心配というのが第一で、二番目がホーガン強いという印象だった。
そういう意味でも、やはり、猪木が勝ったのかもしれない。
とにかく猪木は負けてもすごいプロレスラーだったことは確かだ。
リアルタイムで猪木の試合を観られたことを幸運だと思う。
つづく
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。また次回、お会いできたらうれしいです。