アナログレコードのある生活③
こうして僕は地下アイドルがやっていたDJを見て、自分もやってみたいと思うようになり、DJスクールに通い始めたのだが、そこでやっていたのはアナログレコードを使った、本格的なDJだった。
元より僕は不器用なので、なかなか上達せず、他の人がたやすく出来るようなことも難しく感じた。
しかし、なぜか僕はそのスクールを辞めようとは思わなかった。
今までギターを習ったこともあったが、仕事が忙しいこともあって、なかなか続かなかった。
それでもなんとか粘り強く、そのDJスクールに通い続けた。
続けてゆくうちに、そのDJの師匠のこともいろいろわかってきた。
名古屋でヒップホップのDJの先駆け的な存在だったこと。
また、中古のレコードの販売もしていること。
月に一度ほどDJのイベントもしていること。
現在はソウルミュージックやロックなど幅広く音楽を知っていること。
映画も好きでかなりの数の映画も見ていること。
などなど。
特に音楽に対する知識はかなりのものがあり、僕の知らないカッコいい音楽がまだまだたくさんあるということを知った。
そこで僕はまだまだ知らないいろいろな音楽を勉強するつもりで、そのDJスクールに月に3~4回、通いつづけた。
そして、師匠が販売しているレコードも少しずつ買い始めた。
そうしてソウルミュージックやファンク、ジャズファンクなど、いわゆるレア・グルーヴの世界に少しずつ足を踏み入れ始めた。
まだ知らない、あるいは少ししか知らなかった音楽の世界。
主に70~80年代を中心として、60年代や90年代、場合によっては2000年以降の音楽も含めて、カッコいい音楽はまだまだあった。
そして、何よりもそれを12インチ、あるいは7インチのアナログレコードで聴く楽しみ。
そうした世界に少しずつハマりはじめた。
音楽の好みも少しずつ変わり始めた。
僕は基本的に生バンドを中心とするロックが好きだった。それは今でも変わりはないのだが、それに加えてジャズファンクやファンク、ソウルミュージックがかなり好きになっていった。
また、フォークにもカントリーにもカッコいい曲はたくさんあった。
師匠は僕よりも5歳年上なのだが、師匠が好きな曲と自分が昔好きだった曲が重なることもあり、話が結構合うこともあった。
それは1曲や2曲ではなく、たくさんあった。
2年ぐらいスクールに通ってゆくうちに、月に一度の師匠のDJイベントを見に行く機会があった。
そこで過去に師匠に教わった先輩DJ数名と出会った。その多くは僕よりも年下だったが、DJのテクニックも素晴らしい人たちばかりだった。
そうして、しばらくして、僕もそのDJイベントで一度回してみるかという話になった。
それで僕は選曲を考え、ただ曲をつないでいくだけだったが、失敗しながらも、なんとか自分の出番を終わらせることが出来た。
そうしてゆく中で、自分がかけたレコードに対して、その先輩たちや店のお客さんたちに反応してもらえることがあり、それが何よりうれしかった。
「これは〇〇だよね?」とか「この曲カッコいいよね」とか。
何よりうれしかったのは、名古屋の老舗のクラブのイベントで回させてもらった時、お客さんが盛り上がって踊り始めてくれた時だった。
その後、失敗してしまったけれど、あのお客さんの盛り上がりは忘れられない。
その時、かけた曲はクール&ザ・ギャングの「Funky Stuff」だった。
ブラックミュージックのイベントで、ちょうどお客さんが好きなものとドンピシャだったのだ。
そうして、何回かDJをしてゆくうちに、ただ自分が好きな曲をかければよいというものではなくて、回す店に合い、またその客層に合う曲、来ている人が好きそうな曲を選んでかけることが大事だということを学んだ。
僕のやるDJはレコードのDJなので、まず、どういうレコードを持っていくかがポイントになる。
それでLPレコードは100枚近く、EPレコードは120枚ぐらい?担いで持っていくのだが、自分の武器のようなレコードもいくらかはあって、それにプラスして、どういうレコードを持っていくのかを考える。
以前、お店に来ていたお客さんは、少し年配の女性だったので、門あさ美の『月下美人』をかけたら、「これ大好きなの」と言って、大変喜んでくださった。
お客さんを見て、感を働かせて、こういうのが好きそうかなと思って、それが当たった時のうれしさに快感を覚えるようになった。
勿論、空振りに終わることも多々あるけれども。
そうしてウチにはアナログレコードが増えていき、また、iPhoneなどのサブスクリプションで聴ける曲が増えてきたので、CDはほとんど聴かなくなってきて、CDの半分ぐらいは処分してしまった。
人生、何があるかわからないものだとしみじみと思う。
つづく
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