「僕、もう、現実を見る力が湧かない。」そう彼は言い残した。
「僕ね、もう笑顔を作れそうにないんだ。
涙が沢山溢れ出てきて辛いの。
いじめのこともつらかった。
大好きな人と、別れたのもつらかった。
少しね、休みたい。
ごめんなさい。力になれなくて。
非力でごめんなさい。
何も出来なくて、ごめんなさい。
16人の皆さん、ごめんね。
いつも迷惑かけてばかりだった。
僕ね、力になりたかった。
でもね、難しかったんだ。
ごめんなさい。
また会えるときがあったら、その時はよろしくお願いします。
他力でごめんなさい。
眠りたい。
ごめんね。」
そう彼は言い残して、休眠に入った。
去年の頃から薄らぼんやりとした輪郭が見えていて、それがはっきりと形を成したのは、今年の最初の頃だったろうか。
色んなことがあったから、それらも、彼の誕生も、懐かしく感じる。
彼の持った番号は、15番。
ニコニコととにかく笑って、周りにいる人に一人残らず挨拶し、社交辞令に励む、とにかく明るい人間だ。
自分の内側にそんな人物が生まれたことは結構意外で、最初こそ戸惑ったせいでその人格の誕生すらきちんと認識できていなかったものの、やがて存在をちゃんと認められ、俺の中でも、大切でかけがえの無い家族になった。
そんな彼が最近はあまり笑顔を見せなくなってしまい、表に出ているあいだは泣いている姿がよく見られた。
ちょっと限界がきたようで、休眠の措置が必要になった。
ゆっくり休んでね、
君がいない間は、どうにか俺とほかの15人で君の居場所を守るよ。
読んでくれてありがとう。
俺の少し寂しい気持ちを分け与えてしまったら、ごめんなさい。
また会えると嬉しいです。
千川悠里(10)