豆腐100丁
あれは中学1年生の時だった。
体育の準備運動の時間に、
友人とダラダラおしゃべりをしながら校庭を走っていたら、
「校庭を100周走るか、豆腐を100丁食べたら、◯◯先輩と付き合える、って言われたらどうする?」と聞かれた。
◯◯先輩は当時、私たち1年の女子に人気のあった2つ上の先輩だ。
「え?100周走るか100丁食べたら絶対先輩と付き合えるの?」
「うん!絶対付き合える設定!どっちとる?」
「うーん……豆腐食べるかなぁ」
私は運動が苦手で、今こうして喋りながら走っている時間も正直辛い。
そして豆腐のことは好きである。
友人の前では少しは悩んだふりはしたが、
「豆腐100丁」一択であった。
友人は
「ええっ!?豆腐とる?絶対無理だよ!!私は走るね」
校庭は1周400m。それを100週。
「校庭を100周も走ったらフルマラソンくらいになるじゃん。無理無理無理。私には絶対無理」
「いや、豆腐の方が難しいって」
校庭100周を選ぶだけあって、友人は余裕の表情で笑った。
私はもう喋るのがきついので無言で考えた。
白い豆腐が100丁並んでいる。
3丁くらいは頑張れば一気にいけるかもしれない。しかし100丁。豆腐ばっかり100丁。
頭の中で真っ白な豆腐がゆらゆら踊った。
「ねぇ、種類は?絹でも木綿でもいいの?」
「100丁も食べるんだから好きな方選んでいいよ」
「じゃあ絹にする。あとさ、そのまま食べないといけない?醤油とかかけてもいい?」
「100丁も食べるんだから好きなのかけていい。アレンジ自由よ。でもさ、もう走った方がはやくない??」
「早くない。豆腐の方がいい」
私が豆腐100丁を選択したことに驚いたのか、
友人は豆腐100丁挑戦方法にわりと寛大な設定をしてくれた。
もちろんこれは女子中学生の他愛のない妄想にすぎなかったが、
あれから30年以上も経つというのに、
私はいまだに何か叶えたい夢ができたり、困難なことにぶつかると、
「豆腐100丁いける?」と考える。
100の白に立ち向かえるかを想像して、
(やっぱり難しいかな)
(いや、100食べて叶うなら挑戦したいな)と、あれこれ思う。
もちろん、一度も挑戦したことはないけれど。
いつしか私にとって「白」は挑戦の色になった。
今もnoteのテキスト画面を開くたび、
「こんなに真っ白いところに何を書こう」と途方に暮れる。
noteの白にはもう100回以上は立ち向かっている。
豆腐も書くことも元々好きだしね、とは思うけど、確証のない中でチャレンジしていくというのはよっぽど心を強くもっていないと難しい。
それでも、私にとっての白は、
ちょっと難しめのことを叶える色。
noteの白には1000回でも10000回でも挑戦していきたい。
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この「豆腐100丁」は、
すまスパ企画〈第1回紅白記事合戦!!〉への参加記事です。
私は白組応援の「白」テーマのnoteを書きました。