岡智 みみか

自分にとって書かずにはいられない物語を アイコンはノーコピーライトガール@nocopyrightgirlさまより

岡智 みみか

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最近の記事

悪役令嬢は悪役侯爵さまの手をとるか

泣いちゃダメ。いつものように優雅に微笑んで。華やかに笑ってみせて。それがここで生き残るための道。 第一王子の誕生日パーティーに出席したアドリアナ。普段通りのパーティーだと思っていたのに、何だかいつもと様子が違う。王太子妃の座を争っていたライバルモニカの手を、正装をした王子マリウスが一番にダンスに誘った。これは事実上の婚約発表? 婚約者争いに負けたアドリアナに近づいてきたのは、マリウス王子のライバル的存在であるラズバンだった。代々宰相を務める侯爵家のラズバンが失恋したばかりの

    • 王太子の出す初めての命令

      権力争いに破れた父は、絞首台で処刑。財産は全て奪われ、家族は国外追放処分。なのに、あとわずかで国境を越えようというところで、山賊に襲われ一家はバラバラになってしまった。 私という存在があなたに危険な橋を渡らせてしまうというのなら、そんなことは望まない。どこにいても、この先なにが起こっても、私はただあなたの平穏で幸せな日々を願っている。その証として、ここを去ります。 もう過去に囚われる必要がないって、なんて自由なんだろう。私はくるりと回って、スカート裾を翻す。それは午後の穏や

      • 世界樹の下で君に祈る

        第1章  大きな世界樹の下で、愛を誓う。 それは生涯を共に過ごすという永遠の約束。 お姉さまは神話の時代から続く「聖女」としての真っ白な衣装を着て、そこに立っていた。 「とっても素敵よ。エマお姉さま」 「ありがとうルディ。あなたにも幸せが訪れますように」  お姉さまの成人を祝う誕生日会に、国内外から大勢の参列者が集まっていた。 聖女の証である純白に金の刺繍の施された衣装が、サラサラとゆったりした歩みとともに清らかに揺れ動く。 王城の中庭にある世界樹は、この世界を作っ

        • 白薔薇園の憂鬱

          おじいちゃんの作品を取り戻せ! 大好きだったマイナー芸術家のおじいちゃんの作品は、全て生活費のために父に売られてしまった。独りになった今、幸せだったあの頃を取り戻したい。 §1『宇宙色のカップ』 第1章   鼻先1㎝まで、そのカップに顔を近づける。 触れることは決して許されていない。 高さ20㎝の、縄文土器を思わせるぐるぐると波打つように渦巻いた文様と取っ手のついた円錐状のカップは、『宇宙(そら)の青』と称されるまだらに入った青のグラデーションの中に、キラキラと無数の星の

          あみちゃんと私

           不意に体が震え、目を覚ます。 そうするとね、真っ白で枝みたいに細いあなたの腕が、スッと伸びてくるの。 私を静かに持ち上げ、優しく肌を撫でる。 だけど最近のその指先はとても冷たくて、怯えるように震えていて、あなたの手の中でじっと触れられている私まで悲しくなるの。  泣いて、笑って、喜んだと思ったら、また怒って、悲しんで。 私の前で、取り繕うように苦しい言い訳を始めたと思ったら、イライラしながら「ありがとう。分かった。もういいよ」なんて文字を打つ。 本当は、全然ありがとうなん

          あみちゃんと私

          第三王子の婚約者~内戦状態の母国から生き延びるため隣国へ送られた王女はそこで出会った王子と恋をする~

          仮面カップル ミモザ、サンザシ、クロッカス……。 色とりどりの花に飾られた馬車に乗って、沿道に集まった大勢の人々に手を振っている。 屋根のないオープン馬車の上で、婚約者のマルゴー王国第三王子ノアは、私の手を取るとそこにキスをした。 「見てごらん、アデル。みんな君の美しさに夢中だ」  私の淡い赤茶色に巻いた長い髪を、そっとかき上げる。 「まぁ、なにをおっしゃっているのかしら、ノアさまったら。私はこのパレードの主役である花たちの、添え物でしかありませんわ」  私は彼

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          人魚な王子

          誰かを好きになるってことを、教えてくれたのは君だった 第1章    いつもの散歩ルートだった。冬特有の強く冷たい風は今日は穏やかで、曇り空の下でもさほど体は冷えてこない。 ゴツゴツした岩の合間は流れも少なく、数日続いた晴天で温まった海水に漬かっている方が、体を外に出すより楽だった。 岩礁に囲まれたこの小さな砂浜は、季節に関係なく多くの人間が訪れる。 人目につきにくい浅瀬の波打ち際にぷかぷか浮かんで、僕は水面に目から上だけを出し、岩陰からこっそり彼らの様子を見ていた。 珊瑚

          エルグリムの悪夢~転生魔王は再び世界征服を目指す~

          巨悪をなし、誰からも忌み嫌われ、いつまでも憎み恨まれ、罵倒され続け、決して愛されることはない大魔王は、再びその強大な魔力を取り戻し、この世界を征服する 第1章 史上最凶と謳われた大魔道士エルグリムは、勇者スアレスによって倒された。 エルグリムは死の間際、自らに転生呪文をかけ、死したその瞬間から蘇りを予言する。 それから十二年。 巨悪をなし、誰からも忌み嫌われ、いつまでも憎み恨まれ、罵倒され続け、決して愛されることはない大魔王は、再びその強大な魔力を取り戻し、この世界

          エルグリムの悪夢~転生魔王は再び世界征服を目指す~

          好きな人の好きな人

          「好きです。俺と付き合ってください」 「あ……。えっと……」  彼女の声はとても小さくて、だけどはっきりと力強かった。 「ご、ゴメンなさい。他に好きな人いるから!」 全員片思い 第1話 昼休みだ。 私はその人の背中を懸命に追いかけていた。 教室を抜け出し渡り廊下を抜け、校舎裏に隠れてしまったその人を、こっそりとのぞき込む。 空はどこまでも高く澄み、そよ風は芽吹いたばかりの若葉を揺らしていた。 私は勇気を振り絞り、一歩を踏み出す。 と、その人とは別に、もう一人い

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          極楽往生

          水飲み百姓の娘、多津は、村名主の家の奉公人として勤め始める。同じ奉公人の又吉やお富、八代と日々を過ごすうち……。あの日の晩に、なぜ自分が泣いていたのか。あの時になぜあたしはついていったのか。その全てが今ここに答えとしてある。あたしはどうしても乗り越えられない何かを、風のように乗り越えてみたかっただけなのかもしれない。 第1話 殴られた左頬がまだ痛む。 縛り付けられた縄が食い込み、全身のしびれと寒さに目を覚ました。 「あ~、くそっ!」 血生臭い唾を吐き捨てる。 空に

          龍神さまのいるところ

           ウソみたいに信じられない話なんだけど、空から女の子が降ってきた。翌日の俺は、風邪をひいたフリをして学校を休む。舞香を乗っ取った妖怪の類いが暴れ出し、校内でアクションホラー映画並の惨劇が発生する事態を考えての危機回避だ。しかしながらそんな異次元的なことは一切起こることなく平和な時は流れ、週明けの月曜から、俺はビクビクしながら学校へと行くハメになってしまった。なぜだ? 第1章   ウソみたいに信じられない話なんだけど、空から女の子が降ってきた。 有名なアニメのワンシーンみ

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          Let's鬼退治!

          とある女の子の物語   あたしに出来ることなんて、本当にちっぽけで役立たずで、なんの意味もないことなのかもしんない。だけどこのまま何もしないで終わるのは、本当にイヤだったの。 はじまり あたしはそこにあった古いこん棒を拾いあげ、肩に担いだ。 「ねぇ、やっぱり鬼退治に行く」  そう言ったあたしに、ママとパパは驚いてギョッと顔を上げた。 緑の芝生の広がるお庭の先にある、小さくてかわいいケーキ屋さん。 大好きなあたしのおうち。 「えぇ! なんだって?」  大きな小

          桔梗の花咲く庭

          家の都合が優先される結婚において、理想なんてものは、あるわけないと分かってた。そんなものに夢見たことはない。だから恋などするものではないと、自分に言い聞かせてきた。叶う恋などないのなら、しなければいい。 時代劇ですが普通に純愛モノです。 第1話 小雪舞う肌寒い夜、私は生まれて初めての輿に乗っていた。 お供は子宝と安産を願う雌雄の犬張子。 不安と緊張に、帯の守刀をぎゅっと握りしめる。 花嫁行列は高い白壁の続く静かな道を、ゆっくりと進んでゆく。 ふいに動きが止まった。

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          暗い話にはしたくない

          第1話 ねぇ、この世界がいま、少しずつ小さくなってるって、知ってる?  なんかもうすぐ、本当になくなっちゃうらしいよ? 『また消えた!? 現代社会に起こる怪奇現象の真実とは』 テレビのニュースは伝えている。 どっかの国でどっかのビルが、丸ごと一つ消えたんだって。 SNSでは大騒ぎ。 私は朝ご飯を食べ顔を洗い制服を着て学校に向かう。  今朝はカラスの死骸が置いてあった。 校内の最奥のさらに隅っこにあるくせに、日当たりだけはやたらよい菜園がある。 校内唯一の園芸

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          はじまりのうた

          第1話 今から252年前、人類は、それぞれが小さなカプセルに入り、海に浮かぶことで難を逃れた。 荒れ狂う波にもまれながらも、小型の丸いそのカプセルは、実に多くの人々の命を救った。 ディープインパクト。 巨大隕石の衝突に際し、人々はその中で2年の生存が可能な『ノアの箱舟』を量産し、生き延びることに成功した。 そこから再び地上に集結した人々は、残された大地に新たな世界を築き上げた。 3日間続いた激しい暴風雨もようやく過ぎ去り、避難命令が解除された。 枕元で飛び跳ねる球

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          あなたを愛する気持ち

          第1話 パラパラと小雨の降る金曜の夜、そのヒトは私の前に現れた。 「こんばんは」 驚くほど色が白くて、上品なブロンドの髪にブルーグレイの瞳。すらりと高い背に華奢な体格は、誰もが振り返るトップモデルそのものだった。 「驚かせてごめんなさい。あなたを見かけたその日から、ずっと気になっていました。今日初めて勇気を振り絞って声をかけたんです。少しだけ、お茶に付き合ってはもらえませんか」 しっとりと濡れたビジネス街の灯りが、アスファルトに反射している。彼は緋色の傘を傾けた。

          あなたを愛する気持ち