まち 2話

父親の視線を背中に受けながら、
世界最強の坊主頭の子はテレビのチャンネルを必死にかえる。

父親がさっきまで観ていた、退屈なおじさんが喋る番組から、
坊主が好きな、とってもたのしいウサギが歌う番組へ。

急げ。

なんてったって、
坊主お気に入りの、『サニーの1日』という番組は、とっくのとうに始まっていたからだ。
『サニーの1日』とは、火曜の18時半から19時までやっている30分の番組だ。

今は18時50分。

急がなくてはならない。

この番組に出てくるサニーというウサギが、坊主はだいすきだった。

サニーはとってもおバカなウサギ。
1週間のとっておきの楽しみだった。

 急いで、早くしなきゃ、終わっちゃう。

サニーのやってるチャンネルにたどりついた。
もうその日のお話は終わりかけていて、
出遅れた坊主には何もわからなかった。

画面の中のサニーは楽しそうにしていた。

坊主は、サニーの住んでる町で暮らしたかった。
みんなおバカさんで、とても楽しそう。
サニーの1日を観ていると、「ずっと、このままサニーとその仲間たちとバカなことをしていたい」
と思う。

坊主は、また、1週間後まで会えないテレビの中の友だちと泣きながらお別れをしてから、テレビを消して、自分の部屋に戻った。

扉の向こうで、また誰かがテレビをつける音が聞こえた。

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