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木曽漆器とつくり手〜国産漆を訪ねて〜
長野県塩尻市にある漆精製工場にお邪魔し、漆の精製現場と国産漆についてお話を伺いました。
貴重な国産漆
日本の漆は海外の漆よりも濃度が高く、不純物も少ない、そして固まると非常に強いのが特徴です。
現在、日本で使われている漆の9割が海外から輸入されたものです。日本産の漆は非常に貴重で中国産と比べると価格は7倍から8倍くらいになります。
そのため、下地の部分は海外産を使用し、最後の上塗りに国産漆を使用することが多いそうです。
中国産は流れ出た漆を受け皿にためて採取するため、雨水などが入り不純物が多いそう。
日本の漆は主成分となるウルシオールの含有量が海外産よりも高い。また、出てきた漆をすぐにすくうため不純物が少ない
国産漆のにおい
国産漆は夏から秋の間に採取します。
採られた時期によって全く異なる漆が出るため、それぞれに適した用途があります。
素人目では見分けが難しいですが、面白いことに時期によって漆の香りに変化がありました。
左から初辺、盛辺、末辺が並ぶ。国産漆は産地や漆を採った人の名前まで分かるようになっている
素人目では見分けが付きませんが、香りの差に驚きました。そして、やっぱり漆!少しだけ鼻がむず痒くなりました
○6月頃から採れる漆
初辺(はつへん)
水分が多く拭き漆に向いている
柑橘系のような酸味のあるフレッシュな香りがしました!
○8月頃から採れる漆
盛辺(さかりへん)
最も濃度の高い漆が採れる
仕上げなどの上塗りに使われます
初辺の酸っぱい香りよりマイルド
○10月頃から採れる漆
末辺(すえへん)
時期の終わりに採れる漆
中塗りや下地に使われます
香りはほとんど感じない
ウルシの木と漆掻き職人の対話
漆はウルシの木が傷ついた幹を回復させるために出す樹液が元になります。
はじめに短い傷をつけると、木は自らの成長を止め、傷を治すことに専念するため漆の元となる樹液をつくります。だからと言って一度に多くの傷をつけても漆は出ないそうです。
不思議だなーと思いますが、木も私たちと同じ生きているもの。急に大きなダメージを受けると死んでしまいます。
漆掻き職人さんは一本ずつ木を見極め、傷つけては休ませるを繰り返しながら、ウルシの木とともにひと夏を終えます。
夏の厳しい暑さの中、山や林の中では職人さんとウルシの木の小さな対話が行われているのかもしれませんね。
掻いたばかりの傷あと、ウルシの木が修復したあと
漆掻き職人さんの道具
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