マガジンのカバー画像

noteでみつけたたからもの

299
そっとのぞいてみてほしい。わたしのスキのライブラリー。いつかの、だれかの、珠玉のことばたち。
運営しているクリエイター

#短編小説

小説「あなたがここにいてほしい」

 これ、乗ってみてもいいすか?  それがはじめて、あなたがわたしにかけてきた言葉でした。 …

小説「ひかりとコアラといちまいごはん」

「あれ、乗ってきていい?」  ほぼひと月ぶりに会ったひかりは公園に着くと、小声でどこか遠…

カワセミカヌレ

オリーブの木。その傍に、お店の看板。看板の横に自転車を停め、学校鞄を提げ、歩き出す。 お…

遺言の下書き

遺言を作ることを、以前より考えている。 もちろん正式な書類の作成にはしかるべき過程、費用…

掌編「カッシアリタ」 みちづれ

※投げ銭制度ですので、記事は全文読めます。 第一話、二話は以下のリンクです。  きゃはは…

150

夢の中で今日もまた、ごはん │ ショートショート

「実は今度、この店、たたむんです。」 食後の焙じ茶を出しながら、ササミさんが言った。 「だ…

夢の中で今日も、ごはん │ ショートショート

目が覚めると、野原の真ん中にいた。 屋外の筈なのに、何の音もしない。 ぐるりと辺りを見回すと、店が一軒。彼は迷わず歩き出した。 ここは、彼の夢の中なのだ。 彼は、いつも同じ夢を見る。 夢の中で、彼はまず野原にやってくる。 そして、この店に入るのだ。 暖簾の出た戸口の横の表札には、大きくこう書かれている。 『定食屋ササミ』。 この定食屋は、現実も夢も含めて、彼の唯一の行きつけの店であった。 「いらっしゃいませ。」 ササミさんは彼を見ると、にっこりした。 カウンターには既に一

おいらのオンボロ、行けるところまで行こう

 なあ、おいらのオンボロ。  あれはもう、何年前のことだったろうなあ。  あの日は初夏の…