ミミクリデザイン全体会 vol.2 「“ミミクリらしさ”をアナロジカルに探求する- ビジョンメイキングワークショップ 」
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ミミクリデザインでは、所属メンバー全員が一堂に会するミミクリデザイン全体会を不定期で開催しています。主な目的は、メンバー同士の親睦を深め、ミミクリデザインの企業理念への理解を深めること。4月に実施された第一回全体会では、「ビジョンメイキングワークショップ」と題して、創業当初に代表の安斎が掲げていた「ミミクリの理念1.0」から組織として大事にしたい価値観を再確認したのち、「ミミクリの理念2.0」がどうあるべきか、メンバーそれぞれの想いをもとに方向性を探っていきました。
今回のレポートでは、2018年5月20日から21日にかけて行われた第二回ミミクリデザイン全体会の様子をお届けします。一泊二日、神奈川県は湯河原のまちを舞台に行われた今回の全体会。前回の「私(たち)とミミクリの結びつきがより明確になる」という目標に加えて、新たに「私たち同士の結びつきがより明確になる」というミッションが、当日の進行・ファシリテーションを務める和泉裕之から、伝えられていました。
なお、今回の全体会は、以下のようなプログラムで進行してきました。
・チェックイン
・ビジョンメイキングワークショップ 「“ミミクリらしさ”をめぐる対話」
・ビジョンメイキングワークショップ 「アナロジカル大喜利」
・個人の活動を振り返る 「ミミクリの夜会」
・チームの活動を振り返る 「各チーム成果&今後の展望発表会」
チェックイン@湯河原
まずは全員が円になって座り、チェックインをするところから、今回の全体会は始まりました。普段ミミクリデザインでは、「WDAチーム」「デザイン・リサーチチーム」「ラーニング・リサーチチーム」の3つのチームに分かれて業務に取り組んでいます。そのため、チームが違うメンバーとは、1週間まったく顔を合わせないことも珍しくありません。全体会を始めるにあたり、まずは他のメンバーが最近どんなことに関心を持っているのかや、どういうテンションで仕事に取り組んでいるのかを共有すべく、「今週のピックアップニュース」や「どんな合宿にしたいか?」などの項目について、ひとりずつ話していきました。
ビジョンメイキングワークショップ 「“ミミクリらしさ”をめぐる対話」
チェックインを終え、いよいよ本題の「ビジョンメイキングワークショップ」の続きへと移っていきました。前回詰めきれなかった「ミミクリの理念2.0」について改めて考え、より具体的にコーポレートアイデンティティ(CI)を探っていきます。まずは前回の内容の復習として、第一回全体会の様子について、どんなプログラムで進行し、どんな発言が出たのか、和泉から詳細に語られていました。
こうした丁寧な振り返りを行いながらも、今回の進行の特筆すべき点として、第一回全体会のゴールをそのまま今回のスタートラインとするのではなく、「私たちが話し合いたい、話し合うべきこと」を再び定義し直すところから始めようとする和泉の姿勢がありました。
一見遠回りに思える和泉の進め方の根底には、過去に自分たちが生成したアイデアを、都度アップデートされ続ける現在の私たちが破壊(問い直し)し、再構築する過程こそが重要であるという考え方があり、そうした過程をくり返すことで、参加しているメンバーが自分とミミクリの関係性を着実に確かめられるような場をつくりたいとする和泉の想いが感じられました。
また、もう一つ和泉のファシリテーションの重要なポイントを挙げるとすれば、「いま自分たちは何について考えるべきなのか」という対話の土台となる部分から自分たちで考えるように促していたところ。対話に入る前、和泉は「『私たちが話し合いたい、話し合うべきことはなにか?』というところから考えてほしい」というざっくりとした要望だけを伝え、具体的に何について考えるべきかを明示することはあえて避けていました。そのようにメンバーが自ら考え、活動できるだけの余白をつくることも、主体的な場をつくるうえでの工夫のひとつと言えるでしょう。
そのような和泉の働きかけのもと、まずはこの機会にみんなと一緒に話してみたいと思うことをざっくばらんに共有しながら、全員で話すべきテーマをじっくり探っていきました。そして話し合ううちに、「(他の企業にはない)“ミミクリらしさ”ってなんだろう?」という話題に多くのメンバーが強い関心を寄せていたことが次第に立ち現れてきたことから、「“ミミクリらしさ”とは何か?」という問いについて探求していくことになりました。
小田 ほかの企業と違うのは、手法が良い意味で固定化されていないこと。例えば、あるやり方が有効だとわかったとしても、それを延々と使い続けることはしないし、常に場に応じた変化を加えようとしていますよね。その理由には、飽き性だからというのもありそうだけど、それ以上に、「こっちの方が面白いんじゃないか」と、新しい面白がり方を見つけるのが得意なのかもしれない。
安斎 “価値創造のコンサルティングファーム”と掲げているけれど、価値創造を具体的に行う前に、(社内・外に関わらず)まずは場に関わっている人に目を向けているよね。一人ひとりの動機や思考、視座、専門性をまずは共有して、民主的に尊重・活用しながら好ましい変化や創発に繋げていこうとする姿勢は通底して大事にしている。民主性を前提とした、高度なクリエイティブ・コラボレーションが、大きな特性のひとつ。
そして必ずしも合目的的に、効率よく活動するばかりではなく、たまたま手が空いてた人とか、なんとなく混ぜたら面白そうな人を引っ張ってくるとか、あえて不確実性を加えたりして、そのプロセス自体をブリコラージュ的に遊ぼうとする思想が根本にある。だから、(理念のかたちにするのであれば)「〇〇のプロセスを遊ぶ研究集団です」かな。クリエイティブ・コラボレーションのプロセスを遊び、その生成物を実践する者としても遊んでもいる。それに加えて、そのプロセスをメタ的な視点から研究もしている。一見矛盾しているように見えるかもしれないけれど、「〇〇のプロセスを遊び、かつ研究する」というのが、僕らの立ち位置じゃないかと思います。
竹田 ミミクリらしさを考える切り口として、「ミミクリデザインって何の会社?と訊かれると正直困るんだけど、どう説明してる?」という話をしていました。例えば僕だったら、安斎がワークショップデザインの手法を用いて、企業のコンサルをやったり、オンラインコミュニティの運営をしてるところだよ、と、安斎ありきで説明をすることがほとんどだったのですが、他の人の話を聞くと、研究とビジネスを往復しながら、それぞれの良いところを活かしあう折衷主義的なスタンスや立ち位置に、企業としての独自性を見出してることがわかって、面白かったですね。
松尾 メンバーそれぞれ専門性やバックグラウンドは全然違うのに、曖昧さ耐性が高いとか、未知なものに対して好奇心が旺盛とか、遊びごころを持って仕事をしたいと思っているとか、一元的な学びだけを求めていないとか、じつは結構共通点した性質があるのかもしれない、と感じています。そして、これからミミクリがつくる場に関わる人たちの数が増えるにしたがって、さらに見えてくる性質もあると思う。それをうまく抽出できれば、ミミクリらしさを掴めるのではないか、と話していました。
青木 「ミミクリデザインはどんな会社か?」と考えると、まずは哲学をちゃんとしているところが挙がっていました。自分たちがやってることをメタ的視点から問い直すことを恐れない。それから、寛容さがあるというか、柔らかい会社だよね、と話していました。その背景には、ミミクリがなんとなく共有しているコミュニケーション観があるような気がしています。見栄を張ってデキるところだけを見せたがることがないというか、苦手な業務や失敗した経験すらも、半分冗談なんだけど、半分本気で、強みに見立てようとする雰囲気があるじゃないですか。だから安心して居られるんじゃないか…という話をしていました。そして、メンバーそれぞれの強い個性の尊重や活用がうまくいっているから、そんな風土が形成されつつあるんじゃないかなと思いました。
この時間も、最初予定してた終了時刻なんてとっくに過ぎてるじゃないですか。でも、話は全然止まらなくて。「ミミクリらしさってなんだろう?」という問いに対して、延々と考え続けられるし、話し続けられる。スケジュールを厳密に守ろうとしないのは、見方次第では欠点でもあるのかもしれないけれど、ミミクリの場合は、それが一概に悪いことではないことが、言われなくても共有されている。現にいまも、過ぎた時間ぶんだけしっかり話して、理解を深められているわけですし…。
小川 確かに、無理にまとめようとしないからこそ、逆にすっきりする感覚がありますよね。
小田 無理にまとめようとはしないんだけど、とりあえず何かアウトプットを出してみよう!という価値観や、そのためのプラットフォームを組織しようとする姿勢はちゃんとある気もする。ただしそれも固定じゃなくて、流動的に変わっていく。その“流れ”も一つのミミクリらしさかもしれないね。
当初は、これらの議論を踏まえて、具体的な行動指針(クレド)の作成へと移っていく予定でした。それでも、議論を終えた今、本当にその進め方でいいのか、「迷っている」と和泉は打ち明けます。
和泉 本当は何か具体的なアウトプットを出すつもりで今日は臨んでいたのだけど、「ミミクリらしさとは何か?」という議論だけで、2時間を自然に過ごしたというこの事象を、どう捉えたらいいんだろう。行動指針に落とし込むにはまだ早いのか、それとももう形にする段階に進むべきなのか…。
そうした和泉のことばを受けて、一旦これからの進め方について全員で再検討する場が設けられました。そして最終的に、今この時点でメンバー間で“ミミクリらしさ”のイメージにまだ差があるのか、それとも一定の共通認識が形成されているのか、まずはそれを確かめる必要がある、という話に落ち着きました。
そしてその手段として選ばれたのは、なんと大喜利。「ミミクリとは〇〇である。」というお題に対して、それぞれがアナロジカルに考え、自分なりの“ミミクリらしさ”を表現してきます。大喜利を通して出揃った作品を見比べて、メンバーの認識の一致具合を確かめられるという本来の目的以外にも、先ほどの議論の良い振り返りになることや、単純にこの手段そのもが“ミミクリらしい”活動として好評だったことも、大喜利のワークが採り入れられた理由として挙げられていました。
アナロジカル大喜利「ミミクリデザインとは〇〇である。」
黙々と作品をつくる時間を経て、一人ひとり、考えた自分の作品を発表してきました。また、他の人のアイデアに触発されるかたちで即興的に生まれた回答も多々あり、瞬発力の高いコミュニケーションが展開されていました。エントリー作品をいくつか分類わけしながら紹介していきます。
○普段と違うモノの見方を提供する組織のメタファー
「ミミクリデザインとは “額縁職人” である。」
「ミミクリデザインとは “創造的眼科” である。」
「ミミクリデザインとは “イタズラな眼鏡屋” である」
○見立て遊びの場をデザインする組織のメタファー
「ミミクリデザインとは “砂場” である」
「ミミクリデザインとは “演劇/コント集団” である」
○即興的・主体的な生成プロセスを大切にする組織のメタファー
「ミミクリデザインとは “かための白ごはん” である」
「ミミクリデザインとは “演劇の裏方” である」
「ミミクリデザインとは “サーカスの劇団” である」
「ミミクリデザインとは “セッション” である」
この他にも、「ゼミ」「ミラーボール」「ルービックキューブ」「ウイルス」「椎名林檎のギターの音」「肉じゃが」「計画的偶発性」「地図職人」など、多種多様なメタファーが次々に発案されていました。これらの作品を概観しながら、再度ディスカッションが行われ、ウェブサイトのトップページにはメタファー用いた企業メッセージを載せること、またそれに向けて、どのように活動していくか、今後の方向性が話し合われたところで、夕食の時間が迫っていため、「ミミクリの理念2.0」の作成は次回の第三回全体会へと持ち越しとなりました。
個人の活動を振り返る「ミミクリの夜会」
1日目の夜更けには、メンバーの一人ひとりの「良いところ」と「まだ伸びると思う所・これから頑張ってほしい所」を付箋紙に書けるだけ書き出してプレゼントする「ミミクリの夜会」が開催されました。アルコールの力も借りながら、普段伝える機会のない感謝のことばや、厳しくも愛のあるダメ出しが各所で展開され、終わったあとに、大量の付箋紙の束を大事そうに自室へと持ち帰るメンバーたちが印象的でした。
二日目・チームとしての半年間を振り返る
今回の合宿最後のプログラムとして、二日目の朝には、チームごとにこれまでの活動の成果報告や今後の展望を語る発表会がありました。他のチームの活動状況について理解を深める貴重な機会となっていました。
次回のミミクリデザイン全体会は8月下旬を予定しています。参画するメンバーの数も着実に増えてきている昨今のミミクリデインですが、できることが増えた反面、一人ひとりの個性を活かしていくことや、組織として方向性を共にし、団結するのは難しくなると思われます。だからこそ今回のような全体会が、組織の基盤を固める取り組みとして機能し、さらに飛躍していくために足がかりとなることを期待しながら、来たる第三回全体会を待ちたいと思います。またレポートしていく予定ですので、どうぞご期待ください。
執筆・水波 洸
追記:
▼第三回ミミクリデザイン 全体会のイベントレポートが公開されました。
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