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東京散歩

久しぶりに東京に行ってきた。
秋晴れに迎えられ、秋晴れに見送られた旅。
とても寒く雨にも降られたけれど、楽しかった。
やっぱり違う土地に行くことって大切だ。

森美術館でルイーズ・ブルジョワ展を観てきた。
自身の闇にどっぷり浸かった彼女の人生をなぞるような展覧会で、苦しいくらいのメッセージを発している作品達だった。
闇に向かいきって闇でもがき続けた彼女だから創れた作品、言葉。
よほどの精神的胆力がないと出来ない偉業だと思う。
よく長年あそこまで執着できたなと思う。
ちょっと私にはメッセージが強すぎて、響きすぎて観ていて凄く辛かった。

糸で縫い付けられた二体の人形

自身のトラウマ体験に向き合って晒して昇華するフランス人女性アーティストにはニキ・ド・サンファルやカミーユ・クローデルがいる。
三者の中では作品としてはニキが好き。
テーマの割にカラフルでポップに可愛くすら感じられるから。

私個人の考え、趣向に過ぎないけれど、アートは即座に視覚に訴えかけてくる、或いは驚かせてくれるような美しいものが好きだ。
美しいものは心を慰めてくれるし、豊かにしてくれると思っている。
世界には恐ろしい、酷いことは溢れかえっているから映画などの映像作品でもホラーや暴力的なものは苦手である。
虚構の世界の中くらいは夢を見たい、美しさに浸りたい、酔いたい。
私はそういうタイプの人間である。
日和見主義に見えるかもしれないけど、平和・平穏であることは何より大切だ。

森美術館の他には、いくつかの美術館で日本画の展覧会を観て美しい世界に癒された。
夏にリスボンのとある美術館でそれはそれは美しい屏風を観た。(美術館の名前がどうしても思い出せない)
元々蒔絵などの装飾芸術が好きなのだが、その流れで琳派が好きだ。
金や銀を背景に使い、花鳥風月を装飾的に扱う作品が多い。
キラキラ分かりやすく美しいが、配置の仕方が面白かったり、さり気なかったり、じっくり観るのが楽しい。
こういう絵が描けたらいいのになと思う。


五年ぶりに東京の姉達(私が勝手にそう呼んでる)に会ってきた。
二人とも全然変わってなくて、それが凄く嬉しかった。
話をすると話題が昔と違うねと苦笑いしちゃったけれど、みんないろいろあるのは一緒。
二人に会って、美人は年齢を重ねてもずっと美人なんだなと思ってなんだか元気が出た。
相変わらず優しく聡明で綺麗で、二人と友人でいられるのがとても嬉しい。

それにしても日本は、特に東京は物と騒音に溢れていて騒がしい。
フランスでの質素な暮らしに慣れ、何がなくても生きて行けるようになってしまった身としては見ているだけで消化不良を起こしそうだった。
年々物欲がどんどんなくなっていく。


街を歩いていると気づく。
東京は地区によって全然雰囲気が違う。
発する空気が、漂う気が、全く違う。
それぞれの雰囲気に合致する人やお店が集まって、場の空気を作っているのだろうと思う。
そんなことを考えながらあちこち歩きまわるのは楽しかった。

それにしてもどこに行っても人は親切丁寧で、清潔なお手洗いはたくさんある。
それだけでも天国並みにいいところだと思う。
夜に一人歩いていても全く怖くないし、病んでる人も多いのだろうけれど、日本は本当にいい国だと思う。

割とあちこちに神社があってその周りには緑があり、落ち着けるのも嬉しい。
そんな緑の細い路地で着物の御婦人に道を譲ったら、すれ違い様に「サンキュー」と言われた。
なんでやねん。

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