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Twitter×美容マーケティングの勝ち筋 2020年上半期編 ~②オルビス オフクリームのバズ要因考察~
こんにちは、MimiTV編集部の添田裕女です。2020年上半期の「バズコスメ」のうち3つのバズ要因を分析し、そのストーリーを紐解いていくこの企画、今回は2本目をお届けします。
前回のnoteはこちら
前回のnoteハイライト
❶「Twitterでバズったらコスメが売れる」現象が発生している。
❷背景には、Instagramとの違いである「拡散性」「検索機能」が影響。またTwitter独自の「美容垢」と呼ばれる美容情報の発信に特化したTwitterアカウントも影響している。
❸「バズツイート」と呼ばれる拡散されたツイートは、規模感により「プチバズ」「ミディバズ」「グランバズ」と判定できる。
❹バズったら必ずしも売れるわけではない。バズによって「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップを形成することでコスメが売れるようになる。
❻バズコスメは「モノ・ヒト・コト」の3軸でバズった理由を分析できる。
「評判形成→拡散→評判定着」の3ステップ&バズツイートの大きさの定義はバズストーリーを読み解く上でかなり重要です!ぜひ詳しくはぜひ前述のnoteを読んで欲しいのですが、簡単にまとめた画像を貼っておきます。
今回は、「BUZZ COSMEAWARD(通称バズコスメ大賞)※2020年上半期」において受賞に輝いた「オルビス オフクリーム」について、バズストーリーをご紹介します。
※2019年からMimiTVが半年に1回発表する、「Twitter上で話題になった(=バズった)コスメ」のアワード企画。今回は2019年11月~2020年4月の間のバズコスメが対象です。MimiTV編集部の精鋭美容オタクメンバーと、厳選されたMimiTVユーザー215名(フォロワーが100名以上で、日頃からアクティブに美容情報の収集・発信を行っている美容垢が対象)の投票で決定しています。
2020年上半期バズコスメはこちらをチェック
目次
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■バズったのは…オルビス オフクリーム
・バズプロセス
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■考察:ブランドとしての誠実さ
・ブランドメッセージに忠実な商品開発
・最強「エンプロインフルエンサー」の存在
・「誠実」であるということ
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■結論:オルビス オフクリームのバズ方程式
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■バズったのは…ORBIS オルビス オフクリーム
オルビスは通信販売からスタートした化粧品メーカー。2018年にリブランディングを実施し、スキンケアシリーズの「オルビスユー」、インナーケアの「オルビスディフェンセラ」などのヒットアイテムがあります。
「オルビス オフクリーム」は、濃密で厚みがあり、肌にのせるととろけるテクスチャーのクレンジング。メイクオフと同時に肌のうるおいを守り整え、よりやわらかに整えます。
メイクをしている“オン”の状態からすっぴんの“オフ”の切り替えとなるクレンジングの役割に注目。「面倒」「やらなくていけないからやっている」というクレンジングをもっと心地の良い時間にするために開発されたアイテムで、ユーザーからの投票でも、「使用中に癒されて、洗いあがりのしっとり感が心地よい!」「クレンジングの時間が楽しくなった」と推す声が多かったです。
・バズプロセス
こちらの図は、「オルビス オフクリーム」について、Twitter上で呟かれた回数の増減をグラフで表したものです。※リツイートも含みます
こちらのグラフを元に、評判形成・拡散・評判定着のプロセスを説明していきます。
【評判形成期】2020年1月~2月中旬
2019年12月に情報解禁。2018年に実施したリブランディングや、「オルビスユー」「ディフェンセラ」のヒットの記憶が新しく、新アイテムへの期待は高まっていました。1月以降、先行発売の購入者や、2月中旬頃のプレス向け発表会に参加したり、ギフティングを受けた美容家や美容ライター、美容垢たちからの熱量のこもったクチコミ投稿が数多く上がりました。中には、3万いいねや3000RTを超えるエンゲージメントを獲得した投稿も。これがティザーとなり、発売前に「美容有識者たちのお墨付き」というイメージを勝ち取ることに成功します。
詳しくは後述しますが、この時期に投稿されたクチコミに対し、オルビスPR担当Nanaeさんが絶えずフォローを入れていたことも印象的です。ブランドとインフルエンサーや美容垢が、良好な関係を築けていることがうかがえました。
【拡散期】2020年2月下旬~2020年4月
先行発売の2万個が早々に完売、2月21日より通常販売が開始。ティザーを見て気になっていた消費者が続々と購入。「オイル並みにメイクが落ちるのに、肌がしっとり柔らかくなる」という優れた機能性を絶賛するクチコミが多く投稿されました。
4月に入ると外出自粛要請や緊急事態宣言が出され、多くのブランドが百貨店や商業施設の営業自粛によって販路を失いましたが、さすが通販事業から始まったオルビス。2,300円という手の出しやすい価格かつECで手に入れることが出来るので、この期間でも購入者によるクチコミ投稿が衰えませんでした。
新作発表会や雑誌等メディアの撮影中止を受けて露出機会も減少してしまった中、オルビスの公式やNanaeさんのSNSアカウントの発信量も増え、評判の拡散にブーストがかかりました。
後輩の想いを伝えたい…🥺💓✨「クレンジングは、大事だけど面倒だと感じている人が多いみたいなんです😢1日頑張ったオンの自分をオフモードに切り替える大切な時間なのに、もう頑張らせたくない…!」その強い想いで、メイク落としが楽しみになるような極上感触、オフクリームが生まれました😭💕✨ pic.twitter.com/egkEoL93RE
— Nanae|ORBIS♡ (@Nanae67742240) May 16, 2020
【定着期】2020年5月~
現在進行形で購入者のクチコミが投稿されています。緊急事態宣言解除でメイクを再開する人が増えているので、もう1度大きなバズツイートがあるかもしれません。
■考察:ブランドの誠実さ
「オルビス オフクリーム」は、優れた機能性によって消費者から支持を集めていることは間違いありません。では、他にも安価で優秀なコスメは数多く存在する中、特に美容好きの間で熱をもって語られ、バズコスメとして強い印象を残したのはなぜでしょうか。
その要因を考える上で、この「オフクリーム」のヒットだけでなく、オルビスというブランドそのものに、最近より熱量の高いファンが集まっていることは注目すべきだと考えます。
・ブランドメッセージに忠実な商品開発
2018年にリブランディングを実施したオルビスですが、新しいブランドメッセージは「ここちを美しく。」です。これは仕事とプライベートを両立させる現代女性を「頑張れ」と鼓舞するのではなく、明日への活力につながる充足を感じられる"ここちよさ"を科学的根拠に基づき提供していく姿勢を表現したそう。
(スキンケアシリーズ 『オルビス ユー』)
オフクリームの「疲れて帰ってくると面倒に感じがちなスキンケアの時間を心地の良いものにしてくれる」という魅力は、まさにブランドメッセージを体現しています。消費者に寄り添ったブランドメッセージを掲げ、それに忠実な商品開発に従事する姿勢は、「ファン」を作ります。
・最強「エンプロインフルエンサー」の存在
もはや化粧品のPRにおいて当たり前の手法となったインフルエンサーマーケティングですが、一部のモラルやリテラシーの低い企業によるステマ(ステルスマーケティング。消費者に広告であることを隠して宣伝行為を行うこと)横行や、投稿文章やハッシュタグまでカッチリと指定し、本音を差し込む余地を作らず設計されたインフルエンサーマーケティングを目にしてきたことで、消費者の反応は日に日に慎重になっていると感じます。インフルエンサーから絶賛が相次ぐ商品が現れると「ステマっぽい」という疑心暗鬼になることも少なくありません。
SNSで情報収集をすることが珍しいことではなくなり、あらゆる情報で溢れかえっている今、情報は「熱量(=ブランドやアイテムへの愛)」がその質を決めると言っても過言ではありません。ですが、それを一朝一夕に醸成することは不可能です。なので、近年インフルエンサーマーケティングにおいては、トップインフルエンサーの1回の投稿よりも、ブランドに合ったインフルエンサーとの関係性構築に投資をするべきだ、と言われています。
(参考:DIGIDAY「2020年、 インフルエンサー への「投資」は増加する : 特にファッション&ビューティ業界において)
なんとオルビスには、商品をPRする上で最強のインフルエンサーが存在しています。先ほども紹介したオルビスPRの担当Nanaeさんです。少し投稿を見るだけでも「自社製品への愛」が非常に強いことが分かります。中でも特にエンゲージメントが高い投稿をピックアップしました。
聞いてください…🥺私がオルビスユー の開発をしてた時ものすごく悲しかったのが「洗顔はどうせ洗い流しちゃうから別になんでもいい」という言葉😭違うよー!どんなにいい成分の美容液も化粧水も、肌の受け入れ態勢が整ってなきゃ意味ない!よ!くぅ😭!と叫びたくて作ったのがこのブースター洗顔😭💓 pic.twitter.com/p7ccsk0g8a
— Nanae|ORBIS♡ (@Nanae67742240) May 7, 2020
1万いいね!を獲得した、ブースター洗顔とその開発秘話。
天才的かも知れない…🥺💓オレンジメイクに磨きをかけたくなり、スターダストライラックの上にオレンジプラリネを重ねてみました…な、なんだこの妖艶なオレンジ…!🥺🥺💕✨ライラックのブルーパールとラベンダーがオレンジを引き立ててくれるー!💓これはブルベさんもかなり使いやすいかも🥰✨ぜひ💓 pic.twitter.com/ibvuvtmoUA
— Nanae|ORBIS♡ (@Nanae67742240) April 11, 2020
自分の顔で、新しいメイクを提案してくれる心意気。(とっても美人で、編集部にもファンが多いです…!)
消費者にとって、「ブランドPR担当が自社製品を紹介する」ことはいたって自然です。その上、当事者だからこそリアルに伝えることが出来る開発に対する思いだったり、自社製品への熱量は、とても好意的に受け取られます。
Nanaeさんのように、自社製品の魅力を熱量高く伝える人は、「エンプロインフルエンサー(employee+influencer)」と呼ばれています。絶えず進化が求められるインフルエンサーマーケティングの手法ですが、インフルエンサーとの関係構築に加え、自社発信の手法についても、今後ブランドは考えていく必要があります。
・これからのブランドに求められる「誠実さ」
前述の通り、あらゆる情報で溢れかえっている今、消費者は情報やコンテンツに対して慎重な姿勢です。真実なのか、熱量やストーリーはあるのか、じっくり判断しています。嘘や付け焼刃は通用しません。だからこそ、これからのブランドには「誠実さ」が求められるのです。この「誠実さ」とは、消費者のインサイト把握とそれに忠実な商品開発に加え、開発やプロモーション過程の明快さの複合体です。
完成形だけを見せるのではなく、プロセスまで見せることでファンの獲得に成功した事例としてわかりやすいのは、化粧品ではありませんが大人気K-POPアイドルグループのTWICEでしょう。
(TWICEの公式インスタグラム)
彼女たちは「SIXTEEN」という2015年に放映されていたオーディション番組を勝ち抜いた9人です。デビュー後の煌びやかな姿だけでなく、泥臭く、緊張感で胃が痛くなるようなオーディションの過程から見せることで、メンバーの個性や絆をよりファンに感じさせ、圧倒的な人気を誇るグループに成長しました。TWICEの人気ぶりから、完成された綺麗な情報やコンテンツだけでなく、出来上がったプロセスごと愛したいという現代人のメンタリティが浮かび上がります。
オルビスは消費者インサイトに忠実な商品開発×エンプロインフルエンサーを起点とした、真の熱量ある情報発信によって「誠実」を体現しているブランドであり、その姿勢がバズを生んだと考えています。
■結論:オルビス オフクリームのバズ要因
以上の理由から、オルビス オフクリームのバズ要因は
モノ軸:使い心地が良く、メイク落としと保湿両方を叶える機能性高いクレンジング
ヒト軸:美容家や有名美容垢などの美容インフルエンサー、エンプロインフルエンサー
コト軸:ブランドとしての「誠実さ」
の3つの軸から考えることが出来ます。
発売前のティザー&先行発売で「美容有識者たちのお墨付き」という評判獲得→エンプロインフルエンサーを起点とした自社発信でコロナ禍でも情報拡散がブースト→優秀コスメとして評判定着が実現した事例と言えるでしょう。
次は、永遠の憧れブランド「CHANEL」のアイテム、バズストーリーをご紹介します!
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