"Alles geht durcheinand! 何という混乱!"
チケット争奪狂詩曲
3月のウィーン公演が成功裡に終えた事を知った日本は、早速その年10月来日公演のチケット発売を迎えることになる。
チケットの確保それが問題
S席65,000円という《ばらの騎士》のチケット高額設定は当時から騒がれていたが、都合6回公演もあるとはいえ、限られた席を確保できるのかどうかも、多くの関心の的であった。
当時私は日本ワーグナー協会会員で、この年の春先に会報の中に挟まれていたウィーン国立歌劇場来日公演の優先予約の案内を受けられるという幸運を得た。
購入チケット数の制限有無に関しては記憶が曖昧だが、両親そして親しい方のチケットも合わせて申し込みをして、私自身は前年冬のボーナスを資金に10月7日初日、4日目の15日そして20 日千秋楽の都合3公演を確保した。
そして、4月24日の一斉前売販売を迎える。
これに関しては、以下の貴重な証言を紹介したい。
上記にあるように、このチケット発売の様子は新聞記事として出た。
ウィーン公演のNHK放送と商品化
7月NHK衛星での放送
即日完売のチケット争奪戦から暫く経った7月、NHKはBS放送にて3月23日のウィーン公演の《ばらの騎士》録画を放送する。
ウィーンでの上演からわずか4ヶ月足らずで放送された事はクラシック音楽ファンの大きな注目になったのは事実である。
またこの放送はこの後9月に発売されるレーザー・ディスクの商品化されたものとは違うアングルショットやカーテンコールが含まれている点で貴重な放送でもあったことは付記しておこう。
ドイツ・グラモフォンからの商品化
そしてNHKの放送から約2ヶ月後の9月21日に映像会社ユニテルの商品用編集を経たウィーン公演のレーザー・ディスク盤がドイツ・グラモフォンから発売される。
この商品化についての経緯は伝記「カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記」が詳しい。
CD化は実現できなかったとはいえ、ウィーンでの《ばらの騎士》が映像商品化されたことは幸甚である。
そして日本にとっては、来日直前のいわゆる「来日記念盤」という、とっておきのスーベニアになったのである。
ところでヴェルナーの引用にあった日本でのCD録音については続く別の章で言及したいと思う。さて次回はからいよいよ来日公演を巡るエピソードをまとめたいと思う。
この項、了