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地獄でも受容できた作品群

1ヶ月ほどずっと地獄のようだ。
調子を崩していたところに、昔から抱え続けてきている問題が再燃したのがキッカケだけど、ここに至って、ああもう出口ないんだろうなと。

私はコアなSFファンからは軽視される傾向のあるハインライン『夏への扉』が好きだ。いずれかのドアは必ず夏へと繋がっていると信じるピートが大好きで、私もそう信じたいからだ。
明るく前向きな表現を愛するのは”真っ当な”人だけではない。絶望している者もまた、信じたいから愛するのだ。

小沢健二は予め絶望しているから好きだ。彼のトークやテキストに触れたことのあるファンは「世の中クソなことがたくさんあるけど」といった風な発言を見聞きしたことがあると思う。彼は世界に蔓延るクソをよく知っているから、祈りを、信じる強さを届けているのだ。
例えば『フクロウの声が聞こえる』の歌詞「天を縫い合わす飛行機」
飛行機雲はまるで空の切れ目のように見えるのに、それを「人々が行き交い分断を縫い合わせている印」だとする。まあなんて前向きで素敵と思うかもしれないが、「世界は分断されている」と絶望していなければ浮かばない希望と祈りだと思う。世界がクソだから日常の美を拾い、信じて祈るのだ。

私はここ最近は特にひどく絶望しているし、まだ出口は見えない。でも信じたいし、創作物に救われたい。
こういう時は音楽や映画(映像)、ニュースなどあらゆる情報自体が受け入れられなくなり、普段は文章だけ受容できるので縋る。しかし今回は文章もダメになってしまい、マイクラ世界に逃げる程度しかできなかった。
しばし経ち、既読の(新しい情報は無理なので)漫画なら大丈夫かもと漁ってこれなら読める、読みたいと思ったのを契機に色々読み進められたので、メンタルピンチの時でも大丈夫だったリストとして以下列挙していきます。

まず読んだのは、吟鳥子『きみを死なせないための物語』

星雲賞受賞のゴリゴリSFかつ24年組を彷彿とさせる少女漫画、しかも昨今の諸問題(ネットの有様、ポリコレ、ハラスメント、ジェンダー等)が非常に興味深い「設定」として描かれている。
今作は首都大学東京の佐原宏典氏による宇宙考証協力もあり、その点も魅力だ。佐原氏の「きみを死なせないための物語 宇宙考証の解説」という解説サイトもある。


お次はSFと読書絡みかつ読みやすい施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』

本当はこの流れなら施川ユウキ最高の大傑作『銀河の死なない子供たちへ』へ行く流れだけど、『きみを死なせないための物語』と若干被るのでスルー

その代わりに『オンノジ』
救われるディストピア


文字もイケそうだなとオードリー若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
既読でなく初見。これはある種の人にとっては良作、ある種の人にとってはしんどいと思うので取り扱い注意。あと、<家庭教師>からの指摘はあったのでは?と思う点が…


ぱんだにあ『練物庵』
Xでちょいちょい見てたけど単行本は初見。ほっこりが詰まってる。好きなんですよ、ぱんだにあ先生。


榎本俊二『ザ・キンクス』(2巻は最近発売なので初見)
もーどーーーなってんの!なんなのこのとんでもないド級の天才!!!すごすぎる!!!!!私は1巻の6&7話が一番好きで何度読んでも鳥肌立つのだけど、2巻もすごい良かった。特に9話と15話。


アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』
そういえば私が直面する問題と共通項あるよねと読み返したけどやっぱちょっと違った。でも名作。


つげ義春『無能の人・日の戯れ』
これは『必殺するめ固め』とか『隣りの女』収録作も入ってるお得版。Kindleなら文庫版でも大きな画面で見れるから良い。しんどい時は紙媒体がキツいから、所有してるけどKindleで買った。そしてつげは良い。良い。

つげ義春『義男の青春・別離』
これもお得版。つげは良い。良い。


ここに至って、ああ今私がむしろ猛烈に「読みたい」と思う作品はこれだ、この作品こそ今読み返すべきだと思い出し、本棚から取り出したのはこれ。(ここまで全部Kindleで、やっと紙媒体を読めるようになった)
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
折りにつけ幾度も再読している、私の中で特別な作品。現在読み途中。

これらが私が1ヶ月で読めた書籍類。他にも何作も手を出しているけれど、途中で無理だと放り出したのは書いてません。



音楽は途中から少しずつ聴けるようになり、『中原昌也 作業日誌2004→2007』に出てくるものをまとめたというプレイリスト(抜けもあるらしい)にお世話になった。今は無理ってのはスキップしながら。


映像はまだ受け入れられない状態だけど、ミラン・クンデラに辿り着けたおかげでこうして発信・アウトプットすることができるようになった。
きっと、きっとどれかの扉は、夏へと繋がっていますよね…



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