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窓の向こうの世界

2週間ほど異世界にいた。
マインクラフトにどっぷりハマって睡眠時間も削り健康を害すレベルだった。

子供の頃、レゴで家を作るのが大好きで、今もたまに自由度高い箱庭系アプリにハマることを思い出し、そういえばマインクラフトってクリエイティブモードなるものがあるらしいよねと試してみたら最高にレゴで夢中になった。
テトリス以来テトリス以上の視界汚染されてて、街を歩くと建物も道路も木も全部ブロックに見えるし、「これはあのブロックで再現できるな…」とかばかり考えてしまう。

私の夢中っぷりに夫が「どんな子供だったのか想像つくなあ」と笑ったけど、私ほんっとーに昔から超絶インドアで、レゴしてなかったらバービーかシルバニアか絵を描いてるか折り紙とか粘土いじってるか読書してるかで。

小学生の時、神奈川にある『こどもの国』というアクティビティ豊富なパークへ数度行った。巨大ローラー滑り台やアスレチック、オリエンテーリングができたり湖や牧場まであるところで、風景画を描いた記憶がある。以前ふと思い出して、母に「いくらなんでもあれは情操教育の行き過ぎじゃない?」って言ったら、「なに言ってんの!あなたは絵を描きに行こうとでも言わないと外に出ようとしないから苦肉の策だったのよ」と。私はそこまでと自覚なかったから、マジか…と思った。

幼稚園の頃は近所にひとつ上の従姉妹がいて、他に近所に住んでた兄妹(兄は3つ上、妹はひとつ下)と4人で外で遊んだ記憶もあるけど、私はトロかったせいで年下を差し置いて「みそっかす」という特別枠で鬼ごっこなどで見逃されるルールが適用されてた。
幼稚園で記憶しているのは、園庭で遊ぶ子たちを室内から見る景色だけ。ある日滑り台から落ちて出血した子がいたのだけど、その騒動も室内で絵を描きながら窓越しに見てた。

枠の中、窓の中。
子供の頃から、私にとってみんなはいつも枠の外にいて、私は枠の内部にいる。人々の営みから隔たれたところに生息してる。自分以外の世界は窓の向こう。スクリーンを眺めているようで地続き感が薄い。学校でもバイト先でも会社でもどこにいても薄っら浮いていた。社会や他人と接するのは手袋越しの握手のようだ。実感は枠の内部、自身の中にしかないが、そこは無限の広さで楽しいし、時にスリリングで一向に飽きない。

私にとって創作することと創作物を享受することは、束の間世界と接続することができる行為でもある。枠の内部にいるからこそ、窓の向こうに手を伸ばし続ける。枠の中は居心地良いけれど窓の外への憧れもあるし、外の世界と接続できた時、外の世界へ影響を与えられた時の喜びはひとしおだから。
唯一美大時代だけ浮かなかったが、それはみんながそれぞれ枠の中にいながら接続していたから居心地が良かったのだろう。自身の枠の中にいるもの同士だから分かり合える点も多かった。

また、恋とは甘美な侵略だ。突如窓を割って不法侵入してくる。一気に現実感が押し寄せる。握手すら手袋越しだったのが、全身生身になる。だから生傷も負うし胸もヒリヒリと痛む。一方で上手く接続できた瞬間は、世界はこの手の中にあると思うほどの万能感と幸福で満たされる。
束の間世界と接続することができるという意味で私の中で創作することと創作物を享受することに似ている。だから魅せられるし、接続と関係性の構築が重要なので片思いや推し活には興味がない。

マインクラフト世界もゲームという枠内だがひたすら広い。なんでもできる。好きなクリエイションし放題だ。王様だ。
全てブロック単位で細かなものを作れないから家具セットなどの有料アイテムを買おうかと思ったけど辞めた。レゴのスターウォーズシリーズが基本セットと比べて再現度は高い反面スターウォーズ以外を作れないのと同様に、マインクラフトは抽象性が高いゆえに何でも表現できるからだ。
立方体は壁にも椅子にもテーブルにもトイレにもスピーカーにもなれるが、椅子アイテムは椅子にしかなれない。レゴの人間の頭パーツを照明に見立てるように、様々なブロックパーツの使い道を考え閃いた瞬間も楽しくて仕方ない。抽象であることの強みを改めて実感できたのも嬉しい誤算だ。
取り消しや移動ができないのもレゴと同じで最高だ。一度置いたパーツはマインクラフトなら削除、レゴなら取り外さねばならない。人生と同じく「戻る」Ctrl Z(⌘Z)機能はないのだ。

どっぷりとした沼から這い出て、普通に余暇の趣味として楽しむレベルに帰ってきた。クリエイティブ心をマインクラフトだけに費やしてはいられないし、私はやっぱり窓の外へ手を伸ばし世界にアクセスしたい。マインクラフト世界に没頭することでよりその欲求が高まったし、お風呂上がりのような爽快感。
さあ、世界へ漕ぎ出すぞ。


※トップ画像はツリーハウス(次回はマインクラフトでこんなん作ったの!見て!ってだけの記事を書きたい)

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