2000字小説「チャンスの髪様」
僕には、他の人には見えないものが見える。
初めて見たのは、小学5年生のころ。
ホームルームの時間。クラスメイトのじゃれ合いで騒がしい教室で、僕はひとり黒板をぼんやりと眺めていたが、ふと、真横に白いかげがすっと立ったのを感じた。
ギリシャ神の衣をまとった、はげつるでのっぽの男が、金色の前髪だけを腰ぐらいまで長く垂らして、その隙間から僕をぎょろりと見下ろしていたのだ。
(幽霊…! いや、金髪の貞子!?)
思わず身構えた僕に向かって、そいつはおもむろに自身の頭髪を掴み、こちらへ差し