音楽とわたし。(2)
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先日しばらくぶりに会った母から
「あなたの出てきたから持ってって」と
渡されたいくらかの書類の中に
小学校の通知表が入っていた。
何気なく手にとったそれに
書かれていた当時の担任のコメントは
「音楽の時間はリズムも音程も正確に歌っています」
というような文面であった。
昔から歌うことは好きだった。
そして家には小さなおもちゃのキーボードがあり
よくそれでも遊んでいた。
ピアノを習っている友達の家に行った時に
今これやってるんだよって見せてもらったものを
こんな感じだったかなーって再現してみたり、
知っている簡単な曲を
ぽろんぽろんと片手で弾いてみたりしていた。
二年生も終わりに近づいたある日
次の学年から使うことになるリコーダーを
学校から持って帰った時の
わくわく感は今も覚えている。
家に帰ると早速中を開けて
床に運指表を広げて座り込み
頭の中の音階をたどたどしい手つきに変えて
そっと吹いてみた。
どこかで耳にしていた
「エーデルワイス」の旋律。
一音一音確かめるように吹くそれは
とても曲には聞こえないものだったろうけど
それがいつかつながったことを想像すると
頬は緩んだ。
時は流れ、高学年になった頃
部活でトランペットを吹くことになった。
最初、基礎練習的に
ドレミファ…と吹いていくのだが
他の楽器はシのフラットからね!と
先生がいつも言うのに
どうも違和感を覚えていた。
いやいや、わたし達がドって言って吹いてるこの音
シのフラットじゃないですか、と
しかし言い出すこともかなわず
他の誰かが同じことを言うでもなく
疑問に思ったまま時は過ぎていった。
聴いた音の音階がだいたいわかるのって
みんなそうなんじゃないの?
と思って生きていたんだけど
いや、なんかそうでもないらしいよ
というのに気づくのは
更に数年後
高校生になって
芸術科目は音楽か美術の選択制、と言われて
何も迷うことなく音楽を選んだ。
ある時クラスの女の子が
流行歌のメロディーを
何も見ずにピアノでぽんぽんと
片手で軽く弾いていて
それを見た別の子が
「えー!何で弾けるの?」
と声をかけている。
「え?ふつーにわかるじゃん??」
「わかんないよ!すごーい」
そんなやりとりを耳にして
ひとつ、世界の広さに気がついた。
「えー!そうなの!?」
なんて言って
間に入っていける勇気はなかった。
それは
今もまだ、ない。