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狭間に立つ人-ユンギセンイルに寄せて-

こんにちは。
グラミー賞でのBTS単独パフォーマンスが決定しましたね。うれしいな・・・(涙)もう今日はエモエモのエモな気分でいっぱいなので、夜中のポエムばりにやばいnoteをアップしてしまいそうですが、お付き合いください。内容は今日、3月9日にセンイルを迎えるSUGAことミンユンギさんについて自分なりに掘り下げたいと思います。

 昔読んだインタビュー記事で好きな女性のタイプについて触れていた時のことです(デビューしたばかりのアイドル向けのインタビューでありがちのやつ)ジミンさんは無邪気に「可愛い人」(ジミンさん可愛い人って具体的にどんなところが可愛いってことか教えて・・てかジミンさん以上に可愛い人ってこの世にいるの?ーーー急に推しに対してガチ姿勢)とか、「倹約家!」(Vさん)と答えている横でユンギは

「僕は性格と雰囲気。僕は決まった理想のタイプというようなものはないです。異性に限らず、印象や相手が醸し出している雰囲気で、この人とフィーリングが合いそうかなということを重視しています。」(引用-ORICONNEWS

そう答えていて、ずいぶん大人だな・・・という印象と韓国人の男の子で、理想のタイプを聞いた際にはっきりと「異性に限らず・・・」と口にしていたことに大変驚きました。

 儒教精神の強い韓国では、いわゆる家族の安定こそ全てという考えが広く浸透しているため、同性愛に対して理解を得ることがなかなか難しく・・・最近では、梨泰院クラスにそのような描写があったり、元陸軍兵士の悲しいニュースが流れましたが・・・社会的にも理解を得ながら生活することは現在もなお困難である中で、男性アイドルが2014年にこのような中立的な発言をしていることに単純に驚きました。

その後も、米TIME誌のインタビューでは、同性愛者の権利について聞かれた際「何も間違っていません。全ての人が平等です」と話し、LGBTQに対する理解を求め、ファンションを通じて支援する姿を見せています。

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また、EsquireUS版では男らしさについてこのように語っています。


「男らしさというものを、ある種の感情や特性によって定義する文化がありますが、ぼくはその手の表現が好きじゃありません――――男らしいって、一体どういう意味なのか? 身体の状態は日によってさまざまです。いいときもあれば悪いときもある。それによって自分の健康状態を判断するわけで…。心もそれと同じ。状態がいいときもあれば、悪いときもある。多くの人は大丈夫なふりをして、自分は“弱くない”って言うでしょう。まるで、そう口にすると弱い人間になってしまうみたいに。それは間違っていると、ぼくは思うんです。体調が悪くても、誰もきみのことを弱い人間だと思ったりしません。心についても、そうあるべきだと思うんです。社会はもっと、それに理解を示すべきだと願っています」

 韓国では、「男は生来三度だけ泣く」と言われており、男が涙を流す時は、一、生まれた時 二、親が亡くなった時 三、国が滅びる時。とにかく男は泣くな!と言われて育つようです・・・と、日本もありますよね?「男がめそめそするな!」それです。日本の格言は 一、生まれた時 二、親が亡くなった時 三、自分が死ぬときと、最後の一つが韓国で言い伝えられているものとは違うんですが、男性に求める男らしさの図というのは韓国ととても似ているように思います。(最後の一つの違い、大変興味深いですが今日は掘り下げません)韓国ドラマを見ていても、よくアジュンマが長兄に男らしさを説くシーンを見ますが、その雰囲気が今の韓国の現状なんだな・・・と思っていただければ想像がつきやすいのではないかと思います。加えて韓国人男性の大きな義務として、兵役がありますしね。この風潮におかしいよ?とユンギが一石を投じたんですね。

 ちなみに・・・ジェンダーギャップ指数(男女平等ランキング)というものがありまして、なんとなく韓国ドラマを見る中での男尊女卑感により韓国の方が日本よりも低いのではないかと思っていましたが、2019年の同ランキングでは、韓国が153ヶ国中108位、日本のランキングはなんと121位でした。2019年のランキングがこれ東京五輪組織委員会の件も記憶に新しいですよね(やれやれ)

 さて、さきほど述べたLGBTQへの理解と支援を続けるユンギですが、自身が社会的影響を与えるようになった後も、社会的マイノリティの人たちへ寄り添う姿勢を貫いています。そして、ユンギの書くリリックは、こうしたマイノリティの生き辛い社会やアンチに対する怒り、そして、自分自身に対する行き場のない感情、焦燥感であふれており、更に楽曲にはダークで重厚感あふれるトラックを用いているので全体的に暗い印象なんですけど(よくゴリゴリのハードなHIPHOPと言われる。)ダークな空気感の中「わかる俺もそうだったよ」とユンギが代弁者となり激しいディスを展開することで、聴く側の心を包んでくれるような温かさを感じるのが特徴的だなと思っています。

 それがなぜかと問われるならば、やはり私は皆さんご存知のように、彼自身の歩んできた軌跡がそうさせるのではないかと・・・小学校6年生の時に友人から「君はラップをしないやつだな」と嘲笑されたことにムカつき、また、エピックハイに憧れてHIPHOPにのめり込み、中学生の頃にはすでに曲を作りはじめ、高校生になると大邱のスタジオでバイトをしつつ楽曲制作をし、自らGloss (윤기(ユンギ)=韓国語で艶という意味を持つことからステージネームを考案)として公演するようになります。
当時もどちらかといえばラップを自分がやってどうこうよりも、楽曲制作に携わるということを中心にしていたため、後のインタビューで


ーー幼い時から音楽をしたというよりは、
仕事をしたという表現が合ってます。誰かは僕にアンダーグラウンドで活動したと言いますが、それよりか、ただ大邱で音楽をしてたんです。働きながら編曲作業をしたり、ビートを作って売ったりそうしながら自然にラップもして公演もしましたからーー

と語っています。ちょうど同時期に、学校の校歌の編曲をし、お小遣いを稼いでいたそうですが、しかしながら、1日に使えるお金がバス代含めて500円しかなく(ユンギの家からスタジオのある場所までバスで通わねばならないほど離れていたので結構バス代がかかるのね)2時間歩いてジャージャー麺を食べるかバスに乗って100円のカルグクスを食べるか悩みながらも、アンダーグラウンドで奮闘する仲間を見て、自分が成功すれば今いるアンダーグラウンドの場にもっと良い環境を作ってあげられるのではないか――そう大きな夢を見て、高校2年生の時にBighitのオーディションを受け2位を獲得し、「大学に行きなさい」という家族に反対を押し切って上京(ソウル)し、練習生になります。


 (ちょっと脱線して・・・高校生のころのユンギの面白いエピソードといえば、アンダーグラウンドで活躍するゴリゴリのHIPHOP活動を行う傍ら、学校では始業時間の1時間前に通学し先導部(日本で言う風紀委員)の活動を行い、校則違反をする生徒の取り締まりをする活動も真面目に取り組んでいたそうです。ちょっとRUNBTSでの似たシーンを思い出して笑っちゃいました。)

ユンギ練習生時代


 練習生となった後は、先の見えない練習生生活、大学生になりまっとうに人生を歩んでいるように見えるかつての級友の姿、去っていく練習生仲間・・・思い描いた活動とは違う事務所の方向転換、生活費や学費を稼ぐためにきついトレーニングの合間の朝方に配達のアルバイトをし時間にも心にも余裕もないまま・・・それでも1日1曲は制作活動をすることを決めストイックに活動をしていた中でのバイト中のバイクの事故(そらもうこんな生活してたらふらふらやで。涙)。そして、そんな生活の中、メンタルバランスを崩してしまいますが、それでも音楽の夢だけはあきらめなかったんですね。やっとつかんだデビューの道先でも、アイドルラッパーとバカにされ続けますが、ユンギの中に眠る大きな野心が音楽の道で頂点を極めることをあきらめさせなかったんだと思います。


 実体験をほぼリリックに起こしているとされているユンギなので、このあたりの感情については、ミックステープAugustDの歌詞を見ると赤裸々につづられています。

가족조차 인정한 독종 난 공공의 적적
家族さえ認めた 俺は公共の敵
우릴까며 꽤 덕 좀 본 형들은 죄다 돈 맛을 봐
俺らを馬鹿にして利益を得たヒョンたちはすっかり金の味を知った
성공한 이유가 뭐냐고 물어보면 딱히 답을 할게 없어
成功した理由を聞かれても、これといった答えがないけど
그 동안 적어도 너네 보단 덜 자고 더 움직이며 컸어
少なくともお前らよりは寝ずに練習したさ
(Give it to Me)
공부론 못하던 일등
勉強では1位をとれなかったけど
음악으론 할 것 같았어
音楽でなら、とれる気がした
주위에선 십중 팔구
周りのやつらは
이 새끼 또 지랄병이 도졌네 도졌어
こいつ、またふざけたこと言ってるな
좆까 새꺄 잘 봐봐 니네는 또 졌어
よく見てろクソ野郎 お前らがまた負けるんだよ
(724148※724大邱のバスの番号 148ソウルのバスの番号)
잘 나가는 아이돌 랩퍼 그 이면에
成功したアイドル その後ろに
나약한 자신이 서 있어 조금 위험해
弱い自分が立ってる やばい
우울증 강박 때때로 다시금 도져
うつ病、強迫性障害が時々ぶり返す
대인기피증이 생겨 버린 게 18살쯤
対人恐怖症を発症したのが18の頃
자기 혐오와 다시 놀러 와 버린 우울증 덕분에
自己嫌悪とまた現れたうつ病のせいで
이미 민윤기는 죽었어 (내가 죽였어)
ミンユンギは死んだ(俺が殺した)
(The Last)

このTheLastでは自身が抱えるメンタルヘルスの悩み、周囲との軋轢について赤裸々に歌い、”ミンユンギは死んだ”と歌い上げます。もうね・・・もうここからSo Far Awayに続く曲の流れが「遺書」じゃないかと、そのくらい精神的余裕のなさ、そして、もがき続けることの苦しさがストレートに伝わってきました。ミクテ最後の So Far Awayでは、나 죽지 못해 살어(死ぬこともできないから生きてる)とし、모두가 달리는데 왜 나만 여기서 있지(みんな走ってるのに、なんで俺はここにいるんだよ・・・)焦燥感から無気力になり、死ぬこともできないから生きてるどん底の中、他曲に比べて段違いにメロディアスなトラックに乗せてラップを歌い上げています。死ねない・・夢がない・・・と暗闇をさまよう中で最後、시작은 미약할지언정 끝은 창대하리(始まりは微弱でも最後は壮大なはず)とし、少しの希望的展開につなげています。

下は、その後、2017年のFESTAの際に、サビの部分で本当は「 Don't Fall Away(堕ちていかないで)」としたかったのに、歌詞チェックが甘くて、間違えて「So Far Away(遙か遠く)」を繰り返してしまって・・・もう修正もきかないときに気づいたものだから…ハハ!とお茶目に話してくれていましたが(笑)”堕ちていかないで”と訴えかけたかったんだ・・・とまた、わたしの心も随分救われ、この曲に対する印象が変わったのも良い思い出なので、ぜひこちらをシェアします。(FESTAでジン&グクと歌ってくれたものです。ジン&グクの透明感のある歌声が胸に刺さって、本当にうっかり泣くので注意)


さて、上で紹介したThe Lastという曲中に、両親がソウルに来て一緒に初めて精神科にかかり、精神科医に「ーー(リリックもこの部分は伏せられてる)はしたことがありますか?」と聞かれ躊躇なく「あります」と答えたという部分がありますが、もし、ーーの部分が私が考えていることと同じならば(何かは言いませんが)、So Far Awayでの、死ぬことができなくて生きてる。夢も何もなく辛い。という部分から最後、少しだけ希望を見いだせた様子が見られ安心するんです。

本日の最後に、一人紹介したいラッパーがいましてーーlogic(ロジック)という方なのですが、まぁ有名なのでご存知の方も多いと思います。

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黒人の父親と白人の母親との間に生まれたものの、母親が酷い人種差別者で幼い頃から母親からNワードで罵られる日々が続きます。そして父親は重度のコカイン中毒で、兄はその父親にコカインを売ることで小遣い稼ぎをしていました。・・とまぁ、ほんとにとんでもない家庭環境に育ち、家にすら居場所のないlogicは音楽活動に打ち込むようになります。その後、MIXテープを作り続け名門ヒップホップ・レーベルであるDef Jamとの契約に漕ぎ付けますが、ここでも今度は「白人だから優遇されたんだろ」とコミュニティに入ることを拒否されてしまうわけです。この傷つけられた経験が今後の楽曲制作に大きく関わってくるのですが、その後、不安障害を発症してしまいます。しかし、支えてくれた恋人の存在もありヒップホップコミュニティに受け入れられないことを悩んでいたlogicでしたが、自らの個性(白人女性と黒人男性との間に生まれたこと)を受け入れ、あらゆる個性を尊重したい・・・と考えはじめます。そんな中生まれた「1-800-273-8255(この番号はアメリカの自殺予防相談の電話番号)」こちらは、仕事に追われ暗闇の中にいる状態で、死ぬことを何度も考えた中で妻や家族との生活を続けたいと何とか思いとどまった気持ちを込めた曲になります。

2018年のMTVアワードのパフォーマンスが素晴らしいのでこちらを共有します。(バンタン大好きカリードくんと共演)

カリード

周囲に立っている白いTシャツを着た方たちは自殺未遂者や、自殺で家族や友人を亡くした人たち。放送後はホットラインへの電話が50%増となったそうです。

ここで胸熱なユンギとlogicのツーショット!

音楽に対する根底が少し似ている二人なので、コラボですかね・・・去年の情報なんだけど(笑)何かあるのかもしれないと個人的にはずっとこの件の続報を待ち続けています。

ユンギ2

ユンギは、塩だったり砂糖だったり。冷静沈着かと思えば情熱的だったり。乱暴な言葉を使って歌ったかと思えば常識的な態度をとったり。ゆらゆらとその極端な事象の狭間に立つ人だと思います。弱い人に寄り添える人は痛みを分かる人。そして、優しく芯の強い人。

ユンギお誕生日おめでとう。

あなたのこれからが少しでも穏やかなものでありますように(ユンギ掘り下げはこれからも続きます)


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