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小鳥たち
広い空が見たい。
リクエストに応えてやってきた空港の展望デッキ。白い雲の向こうへ消えていく飛行機を目で追いながら、いいなぁ、と呟く君の横顔を見る。
そういえば最近は、いつもこうして並んで立っている。出会った頃は向かい合い、見つめ合うことが多かったのに。といって仲が冷えたわけでもなく、ふたりの距離はあの頃よりずっと近い。
ねえ、どこか行こう。
そうだな、どこが良い?
うーん。とにかく遠くに行って、初めての景色を眺めて、初めての街を歩いて。
ひとりごとのように続ける君の、その空想の旅の中には、僕がいる。あたりまえのように、君の隣には僕、僕の隣には君が。
よし、行こう。
え。どこに?
新婚旅行。いや、まずは宮崎の僕の親のとこへ。あ、それより釧路に行って君の親に会うのが先か。
驚いて僕を見上げる君の瞳がうるみはじめる。その肩を抱き、寄りそい睦ぶ小鳥たちのような僕らの前を、また一機、飛び立っていく。
青々と、空が広い。