古い記憶

人生で一番古い記憶といえば、2歳の頃。共働き家庭で、母親が仕事している家庭は珍しい時代。母方祖母に預けられていた。

母親の実家である祖父母宅は2階建ての一軒家。階段に手すりがなく、角度が急で大人でも気をつけないと落下の危険がある。頭と体のバランスが取れない私は、座りながら慎重に降りるよう指示されていた。

2歳前後といえば『魔の2歳』と呼ばれ一次反抗期真っ盛り。自我が目覚め何でもチャレンジしたい年齢。普段は指示をキチンと守り階段を降りていたが、突然大人と同じように立って階段を降りたいと思い立つ。

最上段から一段降りてみる。降りられた。ゆっくり慎重に降りようとしたそのとき。祖母から『座って降りなさい』と声をかられる。

『嫌‼️』

『座って降りなさい‼️』

急階段で繰り広げられる攻防。

祖母は手を差し伸べた。振り払ったその時。バランスを崩した私は階段を一気に転げ落ちる。

その後は記憶がない。

後年母親から『階段下に漬物石があり、落下後に泣かないから祖母は心配した』と聞かされる。

祖母宅には電話がなく、隣家で電話を借り消防へ通報し救急車を手配。

当時、固定電話には加入権が必要で価格が高く未加入家庭は多かった。余談だが、階段落下事故をキッカケに祖父母宅には固定電話が設置されている。

話を戻そう。

私の意識が戻ったのは救急車の中。祖母が同乗していた。人生初の救急車は鮮明に覚えている。

当時祖母62歳。ノンビリ余生を過ごすつもりが、孫という新たな命を託される。産んでいないが、まさに自分の子どもと同じ気持ちで育てていた。

そんな中で起きたハプニング。誰が悪いわけではない。しかし、父親と母方祖母に少しずつ溝が生まれていく。






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