ピカピカの泥団子と娘の自己肯定感
3月まで年中さんだった娘をみてくれていた先生のなかに、とにかくプロフェッショナルで素晴らしいA先生という先生がいました。
ある日、お迎えに行くとA先生は、キラキラした目で「この泥団子作ったんですよ!すごいでしょう。他の先生にも見せてたらちょっとぶつけちゃって欠けてしまったんですが…」と宝石のように磨かれたツルツルピカピカの泥団子を見せてくれました。
その泥団子は水晶玉みたいに、磨き布(メガネ拭きみたいなテカテカの布?)を敷いたヨーグルトカップの中に鎮座していました。
わたしは子どもの頃そこまで全力で泥団子を作ったことがなかったので「どうしたらこうなるんですか?」と聞くと、白砂だと表面がザラザラするんだけど、粘土みたいな土でやると磨けばピカピカになる。というようなことを力説してくれました。
わたしは感心すると同時に、いわゆる子どもの遊びを全力で楽しんじゃっているA先生はやっぱおもろいな…と思いながら娘と帰りました。
翌日
お迎えに行くと下駄箱の上にずらりと並んだ泥団子が。
先生のつくったピカピカの泥団子に触発されて、子どもたちがみんなで泥団子づくりにいそしんだようでした。
そのなかでも、これわたしの!と娘が見せてくれた泥団子は、娘の手の大きさサイズながらかなりきれいに磨かれた泥団子。
なんでも納得いくまで突き詰めるのが大好きな娘、「一晩乾かして明日また磨くんだぁ」と嬉しそうに語っていました。
またまた翌日。
お迎えに行くとそこには教室の隅で泣き崩れる娘と、わたしの姿を見つけるや否や飛んでくるA先生の姿が…
「○ちゃん、今日も泥団子をさらに頑張って磨いたんですが、片づけの時間になってカップに戻す最後の瞬間に、手がツルっとすべって落としてしまって…○ちゃん、明日また一緒につくろうね、」とのこと。
娘はよっぽどショックだったようでその日ずっとぐずぐず泣いていて、わたしも子どもの頃頑張って育てたミニトマトをドブに落としちゃった話なんかをしながら慰めるよりほかありませんでした。
そしてまた翌日。
朝登園するや否や、A先生が「○ちゃん!今日も泥団子つくろうね!先生、さっき(幼稚園の)畑から泥団子にぴったりな土とってきたからね。」と明るく迎えてくれました。
朝も早よからわざわざ娘のために特上の土を準備してくれてた先生。
それで少し元気出た様子の娘を預けて、またお迎えのとき。
娘がまたピカピカに磨いた泥団子を手に、「落としちゃったやつよりももっとピカピカにできたんだよ!」とピカピカの笑顔で話してくれました。
ほっとしていたら、A先生がひとこと。
「これが年中さんの始め頃だったら、一度壊れてしまったものをまた何度も粘り強くつくろうという気持ちにならなかったかもしれないんです。でも、失敗してもまた作り直せるようになったのは、もうすぐ年長さんだからこその成長の証なんです。これからもこういった経験を通して、自己肯定感を高めていってほしいと思っています。」
A先生やその他の先生方のお陰で、自己肯定感を順調に育んでいる娘。
どちらかというと繊細すぎて心配なタイプだったのが、だんだん図太く、粘り強い真面目さに変わってきている感じがあります。
今年度、A先生は別のクラスの担当になっちゃったけど、娘は、目に見えない宝物をいっぱいもらったなぁ。
わたしからは、あげられなかった宝物だと思います。