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2022.9.18

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「こんな日に、こんなところまで1人で来てしまった」
25歳の誕生日だった。

晴天だった、とても気持ちが良くて泣きそうだった。
あの日、孤独でも、まっすぐ前を見据えるこの小さな子に私はとても惹かれた。


数ヶ月前、大切に思っていた人とお別れをした。
しばらく頭から離れずに過ごしていた私は、誕生日にひとり旅を決行することにした。こんな自分はもう嫌でちゃんとさよならをして前を向きたくて、どうしても1人で過ごしたかった。この日を境に変わりたかった。

友達が誕生日を祝おうと言ってくれた。だけど丁寧にお断りした。私はどうしても誕生日に海で朝日が見たいのと。
そんなわがままな私に、それならばと出かける前夜にクラッカーとケーキで日付が変わる瞬間お祝いをしてくれた。なんて幸せ者なのだろう。あの時はありがとう。

孤独の隣で見た景色が、こんなに美しく、こんなに愛しいのなら、これから先も私はひとりで旅に出たいと思った。こんなに素敵な瞬間に出会えるなら私は大丈夫だろうと。

悲しさや不安な気持ちに触れた時、思いつきでひとりで出かけることが癖づいてしまったけれど、結構いいと思う。
もちろん、果てしない孤独に襲われることがある、私も。
旅先でふと泣いてしまう瞬間も少なくない。
でもその孤独が自然の美しさを、風の気持ちよさを、
その街の人々の日常を、
美味しい食べ物が寄り添ってくれたことを、
まわりの人のあたたかさを、
私という存在自体を、濃く映し出す。

ひとり旅にはいつだって孤独や切なさが隣り合わせだ。
だけど、だからこそこの目で見たものをより美しいと思える。

私たちはみんな孤独で、ひとりだけれど、
ひとりで歩いていた道の隣で、同じようにひとりで歩く大切な誰かに出会えるかもしれない。

隣に誰がいようといなかろうと
この愛しく、切なく、美しい瞬間に出会うために、
まわりの人のあたたかさに触れるために、
私はきっとこれからも旅に出るのだろう。


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これは"ひとり旅写真展"のキャプションです。

どうしようもなく遠くへ行きたくなったことがある人、
孤独を感じている人、
お風呂場で静かに泣いたことがある人、
泣きながらごはんを食べたことがある人、
太陽よりも月の光にあたためてもらったことのある人、
そっとひとりで抱えてしまうそんなあなたが
ひとりじゃないと思えるように書きました。


あれから時が経って、私はずいぶんひとりで旅に出て
美しくて、愛しい景色をたくさん見てきた。
悲しみや不安の数と同じくらいに、この世界にはまだまだ見たことのない素敵な瞬間が溢れていると知った。

ひとつの別れが広げてくれた私の世界。
こんなにも見えるものを増やしてくれた。

あの旅のあとにも様々な出会いや別れがあったけれど
どれも大切なことに変わりはない。
どの出会いも私を少し大人にしてくれた。

日々の中で、辛いことや悲しいこと、不安なことを
みんなそれぞれ抱えている。
けれど、自分の人生は決してそれだけではないと、
自分の想いや見方を狭めているものは他でもない自分自身なのだと、
旅はあなたに教え、そして寄り添ってくれる。


ひとりでも、誰かとでも、
よい旅を。


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