見出し画像

一人でできない趣味(1)

前の記事で「一人でできる趣味ばかり選んできた」と書いたけど、自分は40歳も過ぎてから一人では絶対にできない趣味を始めた。カメラである。風景を撮るだけならもちろんソロで完結するけど、自分がここ数年毎週のように出かけているのは、コスプレのスチル撮影や、「コスプレで踊ってみた」系のムービー撮影です。基本的には被写体が無いと何もできない。実際どんなの撮ってるんですかといえばこんな感じです↓

写真を撮る事自体は本当に好きなのだけど、自分には作家性が乏しいようで「これが撮りたい!」みたいな動機づけがあまり発生しない。基本的には知り合った人からの撮影依頼を請けることがほとんどで、細々とした受け身の活動である。人脈が大きい趣味であるとはわかっているけど、特に被写体の知り合いを増やす努力もしておらず、いま周囲にいる人から誘いの声がかからなくなったらそれまでかな、と思いながら今まで続いている。

おっさんなのでよく誤解されるのだけど、おれが初めて一眼カメラを買ったのは5年半ほど前であり、同年代に少なくないキャリア数十年の猛者に比べれば初心者に毛が生えた程度の駆け出しである。一眼カメラを買う以前は写真なんてスマホかせいぜいコンデジで撮るくらいだった。


ではなぜ突然一眼カメラを買ったのかと言えば、妻が突然オリンパスの一眼ミラーレスを買ったのでそれに便乗したというそれだけである。もともと写真を見るのは好きで写美やギャラリーには足を運んでおり、カメラ自体に興味はあった。カメラなら旅に出た時に思い出を残すツールにもなるし、老後の趣味にも良いかなくらいの軽い気持ちだった。たまたま夏のボーナスが出たタイミングというのも後押しした。とりあえずは家族の娘や犬でも撮ろうかなと。

思いもよらなかった方向におれを煽ったのは娘(当時は中学生)である。

「パパがカメラ買ったっていうからコミケでコスプレでも撮るのかと思った」
「えっ?そんなつもりなかった。コスプレを撮るなんてハードル高いよ無理でしょ」
でもコミケなら今でもμ'sのコスプレしている人いるんじゃないの?

μ's?!なるほど行ってみるか!!と乗せられてしまったのは、おれと娘は再放送から入った遅れて来たμ'sファンだったのだけど、当時(2017年)本家は既に活動を停止しており、世間の流れはAqoursに移っていた時期。でもコミケならまだμ'sをコスで追ってる人もいるはず。その姿が見られるなら悪くないというか見たい!という勢いで夏コミにコスプレを撮りに行くことに決めた。

夏コミ初日の午後、初めてカメラを抱えて足を踏み入れたコスプレ会場には予想以上にたくさんのμ'sレイヤーさんがいらしていた。アニメの衣装はもちろん、スクフェスの衣装を多く見かけたのが印象的だった。その頃はμ'sの新規衣装なんてスクフェスが出すカード位しかなかったわけで、それを選ぶのも当然なんだろうけど、その時はそんなことも知らなかった。

場内を歩いてμ'sのコスを見つけたら並んだり声をかけて撮影させてもらうという営みは予想以上に楽しかった。一時間も歩くとけっこうな撮れ高になったので撮影を打ち切って帰宅。だけどその日撮れた写真は褒められるようなものではなかった。ピントはカメラがAFできちんと合わせてくれているものの、光の条件が次々変わる中でボンヤリとPモードで撮っていたので明るさはバラバラ、移動するたびにカメラ側での露出補正が必要だった。

という改善点に気付いたので、二日目は撮影の都度、初めに一枚撮って明るさを確認し、補正をかけながら撮影した。帰宅してデータを見る。昨日に比べれば明るさが狙えた通りの写真が増えてマシになったとは思うが、今度はあまり目立たせたくない被写体の背後まで写ってしまうことが気になってきた。コミケ会場は混雑しているから他の人や荷物などが写り込んでしまうのである。カメラ本体付属のキットレンズではF値を稼げない。やはり明るいレンズで背景をボカしたほうが良い絵になるってことか。

こうなればと三日目は朝イチでまずヨドバシカメラに行き、F2.8通しの標準ズームレンズを調達してから東京ビッグサイトへ向かった。カメラの設定はF値を優先するAモードに変更。この日も昨日までと同じように一時間ほど撮り歩いてすぐに帰宅。PCでデータを見るとF2.8とはいえ開放の効果もあり不要な情報量はずいぶんマシになっている。同じ場所で繰り返し撮ったことで、構図の作り方やフレーミングにも慣れてきた。


デジタル一眼ならではの、この短時間で改善を回せるプロセスを経験できたのが自分にはかなり面白かった。銀塩時代だったら写真屋にプリントを頼む必要があって時間がかかったのだろうけど、現在は自分でPCでデータを確認して問題点を抽出して対策を取るという営みを短時間で繰り返すことができる。コミケで3日間の強化合宿を経験した気分だった。

撮影データは全てTwitterアカウントを教えてもらったレイヤーさんには送付していたのだけど、2日目、3日目と日を追うごとに、自分が撮った写真をわざわざツイートしてくれるレイヤーさんが増えたのも嬉しかった。改善できてるんだという手応えが得られた。この時点でμ'sコスへの興味以上に、カメラで人を撮影する技術を獲得する面白さが勝っていたのだと思う。

コミケのこの経験が面白かったので、その後も数回ほどコスプレイベントに足を運んだのだけど、いくつかの理由でイベントに行くことはやめてしまった。その理由は次回の(2)で書きます。この文章もうけっこう長いからね。ここまで読んでくれた方ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?