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一人でできない趣味(2)

前の記事で、初めて行ったコミケでの撮影経験が面白かったという話を書いた。2017年の夏コミの数日間でたくさんのレイヤーさんを短時間で撮る機会を得ることができ、データを見て問題点を抽出して改善するという営みを繰り返せたのは、カメラを買ったばかりの初心者として貴重な体験だった。またすぐにでも行ってみたい気分だったが次のコミケは冬なのでまだ4ヶ月以上ある。

そういえばコミケとは別にコスプレイベントというものが定期的に開催されていたのでは、と検索してみると首都圏では毎週のように各地でイベントが開催されていた。口コミを調べるうちに自分に合いそうなのは、東京で開催されている大規模イベントだろうというのもなんとなく分かってきた。早速コミケの次の週に開催されていたTFTというイベントに行った。会場も東京ビッグサイトのすぐそばである。

初めてのコスイベ、会場内にいるレイヤーさんに声をかけたり並んだりして撮影するという大枠はコミケのコスプレ会場と似ているものの、雰囲気はまるで違っていた。なにせ参加者はレイヤーさんもカメラマンも数千円のチケットを払ってコスのためだけに集まっている人ばかりである。本気度が上、と言ったらいいだろうか。特にカメラマンたちの持っている機材が平均的に高価だし年齢層も高い。コミケだとスマホで撮ってる若者が普通にいたのだけど、そういうエンジョイ層をまったく見ない。

とはいえこちらのやることはコミケとあまり変わらず、μ'sを中心として自分が好きな作品のコスをしている方を見かけたら撮影させていただくというそれだけである。撮ってる中で、コミケと違って1回あたりの撮影時間が少し長く取れるかなという違いは感じた。コミケではできなかった屋内でのコス撮影が経験できたのも貴重な経験だった。帰ってデータを見返してストロボによる光の作り方の重要性を意識するようになった。もっとも、この当時は外付けストロボをクリップオンでしか使っていなかったのだけど(この時点でまだカメラ買って一ヶ月だから当然といえばそう)。


このTFT参加の後も、秋から冬くらいにかけてTDCやアコスタといった大きなコスイベにそれぞれ1~2回程度行ってみた。どこにでもμ'sレイヤーさんはいらしたし、貴重な撮影機会を得ることができた。その意味では撮影して反省点を考えて次回でフィードバックするという営みは続けることができたのだけど、一方でコスイベで自分ができる撮影内容についても限界を感じるようになってきてしまった。

端的に言うと、人がたくさんいるイベントで撮れる写真は往々にして記念写真の域を出ないのである()。どうしたって背景はイベント会場なので当たり前の話なのだけど。レイヤーさんが立ってる位置も基本は固定なので、屋外だと自然光の制約も大きくなってしまう。順光でも逆光でも対処できる撮り方の練習といった意味で有意義なのは間違いないけど、どうせならもうちょっと良い条件で撮りたいという欲が出てきた。

()これはおれの実力では記念写真しか撮れないということです。イベント会場でも「作品」と言うべき撮影をコンスタントに実施されてるカメラマンさんはいらっしゃいます。念のため。

そんなことを感じ始めた矢先に、突如コスプレスタジオで撮影するという機会が発生した。これがまったく予想しなかった展開だった。
初めてアコスタに行ったときのことである。これまでと同じように屋外を廻って普通に撮影させていただいたら、その初対面のレイヤーさん二人(にこまきでした)から「このあとお時間あったら、今からスタジオで撮影していただけませんか?」と誘われたのです。いきなりだよ。見ず知らずのおじさんびっくりだよ。

えっ、レイヤーさんってそんなに気楽に見ず知らずのカメラマンをスタジオに誘うものなの?と戸惑ったのが正直なところ。とはいえ二人の物腰はとても丁寧で真摯だし、こんなところでカメラマン騙してメリットを得るようなタイプではなさそう。本当にちゃんと撮影してくれる人を探してるんだろう。でもおれでなくてもっと上手い人のほうがいいんじゃないかな、とか瞬時に色々考えて正直にその旨を伝えることにした。

とりあえず「自分はおっさんなんでベテランと誤解されてるかもしれないけど、まだカメラ買って3ヶ月にもならない初心者です。スタジオ撮影も未経験なんですよ」と話したのだけど、「自分たちもコスプレ初心者なので全然かまわないです!」とのこと。それならと腹を括って引き受けることにした。

私も知らなかったのだけど、アコスタ開催日はイベントの会場の目の前にあるコセット池袋というスタジオが1時間500円で利用できるプランを提供して(当時)おり、これを利用して撮影したいという要望でした。なるほど、早く言ってよそれ。いやそんなことすら知らない自分が迂闊なんだけど。

初めてのコスプレスタジオでの撮影は本当に面白かった。キャラクターの特徴を生かしたブースを選んで、レイヤーさんと構図を考えながら撮影するという楽しみを初めて知った。シャッターを切りながら「スタジオ撮影楽しいです!」と思わず声に出していたほど。今思えばコミケの体験に次いでコス撮影にハマった2回目の瞬間だった。

帰宅して現像するのも楽しかったけど、改善点もこれまで以上に大量に出た。個人的には大変勉強になった。拙い写真だったけど、お送りしたら喜んでいただけて「またスタジオで撮ってもらえないか」とのお申し出まで頂いた。ありがたい。なお、このお二人との付き合いは今でも続いている。いつもありがとう。


この頃になると、他にもイベントでお会いして写真をお送りしたレイヤーさんとTwitterで普通にリプライを交わす中でスタジオ撮影の依頼をいただくことも発生し始めた。それ自体はあるあるなんだろうと思う。

ただ珍しいケースだと、Twitterのやり取りの中でレイヤーさんが自分がよく行く居酒屋と同じ店を利用していることがわかり、たまたま同じタイミングで来店している時に自分が声をかけられて、飲み友達として仲良くなったこともある。こちらのレイヤーさんも今でも定期的に撮影をご一緒させていただいているし、相変わらず同じ居酒屋で遭遇することもある。いずれも望んで得られる縁ではない。おれは運が良かったんだろう。

そんなわけで、スタジオでの撮影の依頼が発生したことを受けて、自然とイベントに行かなくなった。ただ、アコスタ開催日だけは「池袋コセットを1時間500円で利用できるプラン」を利用するためだけにレイヤーさんと約束して参加して、そのレイヤーさんの撮影が終わったら帰宅ということは何度か繰り返していた。今もイベントに専属で同行することは稀にしているので、正確に言うと「野良でのイベント参加」をしなくなったことになる。

以上は自分が2017年夏にカメラを買ってコスを撮り始めて、その年の冬くらいまでの思い出だけど、長くなったので一旦ここまで。読んでくださったみなさんありがとうございます。また気が向いたら2018年以降の話を書きます。


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