140ページ目に救われた_『これはしない、あれはする』(小林照子 著、サンマーク出版)
92歳になんなんとする義父と暮らしているせいか、お年を召した著者さんの本が気になる。
おだやかながらきっぱりとした物言いが好きで、ときどき読み返すのは、沢村貞子さんの本。今は、日野原重明の本を生まれて初めて買って読んでいる。最近読んだなかでは、小林照子さんの『これはしない、あれはする』が印象に残っている。
化粧品メーカーのコーセーで役員まで務め、56歳で退職後は起業し、美容研究家・メイクアップアーティストに。美容学校を設立し、75歳のときに高校卒業資格と美容の専門知識を修得できる高等学校もつくった小林さん。本書のヒットもあり、83歳の今も国内外を飛び回っている。
本書の構成は、前半の「しないこと」、後半の「すること」に分かれている。この本がすてきなのは、小林さんがいわゆる“聖人君子”然としておられないことだ。
前半の「しないこと」には、小林さんがしないと決めていることが出てくる。嫉妬、詮索、執着、心配、悪口、卑下、見栄、嘘……。全部をやってみて、自分がみじめに思えて今ではやらなくなったことばかりだとか。
小林さんは、過去の自分をさらけ出し、「人生はいつだってこれから」とやさしく語りかけてくれる。この方がそう言うのなら、私もこれから少しは変われるかもしれない。そう思わせてくれる。
私がもっとも「救われた」と感じた言葉がある。
見出し「軌道修正する」(140ページ)のなかに、こうあった。
よくないことが起きたときは、
人生がよい方向に変わるために
大きな力が働いたと思いなさい。
そして、壮絶な小林さんの交通事故の体験が語られる。
悪いことが起きても取り乱したりしない、それはあなたに何かを学ばせるために起きたことだ、人生をどう軌道修正していくかが試されている、人生がよい方向に変わるために大きな力が働いた、そう考えなさいと結ばれる。
去年、自分に起きたことは自分なりに整理をつけたつもりだった。が、小林さんのこの言葉に接して、ふわふわとした自分なりの整理に重みが加わった気がした。学びをどう生かすかが試されている、よし、やるぞ、という気持ちを新たにすることができた。
パッと開いたページを読めば、自分の行動を振り返り、考えを整理できる。悩みも迷いも、やさしく受けとめてくれる一冊だった。