裏庭ジャングルから空が見えるようになった
11月7日(木)
朝、アラーム 1回目で目が覚めた。やった。小鳥の声にうっとりしながら むくりと起き上がる。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
ウーちゃんとルーちゃんに控えめにエサをあげる。
お知らせポストカードを印刷会社さんに入稿する。
帳簿をつける。
修一郎の食事をお弁当仕立てにして ふたつ作っておく。
庭仕事をする。
ケイトウの背が高くなり、わっさわっさしている。少し整えようと思い かき分け、後ろにある木造の外壁を見てびっくりした。
アイビーが張っている。のはいいのだが、築63年の外壁の板と板の間に入り込んでいる。
こ、これは…。
びりびりっと引き剥がしてみる。剥がしたところの塗装が剥げた。一番下の板の隙間から中に入り込んでいる。板が少し割れている。
きゃー。きれいだけど、剥がさなければ小さな家がこわれてしまいそうだ。
「ごめんね!」
チョッキン チョッキン、ビリビリッ…
剪定鋏でアイビーのツタを切りながら引き剥がす。バラの向こう側にあるので、バラをくぐるときに棘が刺さったり、ヤブ蚊に顔を何箇所も刺されたり。なんか刺されてばっかりだ。
イター!かゆ〜!と叫びながら、なんとかアイビーをすべて剥がすことができた。家がこわれる前に気がついてよかった。
シエンタにマスキングテープを貼ってゆく。
これからの作業を考えるとなんだか途方に暮れた。車って大きい。ペイントも道具も買ったけれど、もう塗り替えるのやめようかな。と、ちょっと思う。
お散歩で通りかかったご夫婦が、にこにこしながらこちらを見ていたので、
「車、塗り替えようと思って。」と言うと、
「ええぇっ!自分で!?」と、ご主人の右足が ぴょんと上がった。漫画の驚いたときのポーズそっくりだ。えへへと笑う。
ごはんさんがお仕事から帰ってきた。
「くじけた。」と、話す。
「ぜんぶ いっぺんにしようと思うと大変だから、1パーツごと作業するといいですよ。」とアドバイスしてくれた。
なるほど。それならずいぶん気が楽だ。
「今日、スギとモミの枝 切りましょう。」ごはんさんが力強く言ってくれた。
小さな裏庭に脚立を立てて、重いSTIHLのチェーンソーで枝を切ってゆく。次に高枝チェーンソーに持ち替えて切ってゆく。
お隣の きゅうりさんの家に大きな枝が落ちたら大変なので、切る角度や切り方を考えながら切ってくれる。絶妙に他の枝に引っ掛かるように落とし、脚立に乗って素手で枝を取り除いてくれる。
その間、私はちょっと離れたところから地味に応援していた。
ごはんさんと木の両方に「ありがとう」と、言い続けた。
小さな裏庭の隅っこに どんどん枝が積まれてゆく。こんもりと小さな森ができたみたい。
「この枝も小さく切って、またリレーセンターに運ぼう。」と言ってくれた。
黒猫とシャム猫のノラちゃんがその様子をじっと見ていた。
ごはんさんが黒猫ちゃんのそばに行く。逃げない。そっと手を伸ばす。頭を撫でさせていた。
びっくりした。ごはんさんは本当に動物やトンボに好かれるんだなぁと思った。
ごちゃごちゃと絡み合っていた枝が剪定されて空が見えてきた。明るい。暗くて鬱蒼としているイメージだった裏庭ジャングルがこんなに明るかったんだ。と、感動した。
風通しも良くなり庭自体が広く見える。20年くらい前はこういう感じだったように思う。
暗くなってきたので、今日の作業は終わり。
1時間も経たないうちに半分くらいの作業が終わった。すごい。こんなに早くできるなんて。何年も、裏庭に出るたび「どうしようかな」と思っていたのが嘘のようだ。
お仕事から疲れて帰ってきて、わが家の木の枝も切ってくれて本当にありがたいなぁと心から思った。
ちょうど裏庭から、凛とした三日月が見えた。
「よかったね。」と言ってくれているようだった。
ごはんさんと くるくる寿司に行って家に帰り着いたとき、
「今日、本当にありがとう。」と心から言った。
「なんがですか?」と、ごはんさん。
「枝、切ってくれたこと。」と、私。
「あぁ、なんでもないよ。」と、あっさり言ってくれた。大変なことなのに。
それにしても、なぜ、お隣と近接している小さな裏庭や狭い境界にぎっしり、スギやモミ、ビワ、グミ、コブシ、キンモクセイ、ツバキ、ナンテン、ヤツデ、その他もろもろの大きくなる木を植えたんだろう…修一郎の祖父は。と、ちょっと思った。
夜、庭に出る。
胸がふるえた。たくさんの星たちがとてもとても美しく輝いていた。いつもは見えないような小さな星たち、星団も煌めいていた。なんて美しいんだろう。ため息が出る。幸せ。
夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
今日もいい一日だった。