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生まれ変わった姿を見せてくれてありがとう

9月20日(金)
朝、目が覚める。今日も小鳥の歌声に うっとりする。しばらく ごろごろして むくりと起き上がる。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。控えめに。水を換える。盛大に。

植物たちに水をあげる。
ホオズキがたくさん実った。葉っぱが少しずつ黄色くなっている。ホオズキがレースになるのが楽しみだ。

修一郎の本を廊下に移動させる。本は重い。少しずつ移動させる。軽い桐の棚を移動させる。本を置いてゆく。くじけた。時間が取れたときに少しずつしよう。

絵本のラフを描く。

食事の支度をする。
マヨソースを作る。片栗粉をつけてオリーブオイルで揚げ焼きにしたエビや野菜をあえるとおいしい。私は食べれないので味見なし。

マヨネーズ、ケチャップ、スイートチリソース、コンデンスミルク、レモン汁、ミルクを、ぐるぐる混ぜる。

揚げたての食材をマヨソースであえる。小ネギの小口切りを ぱらぱらっとふりかける。

コープさんがやってきた。
グリーンコープさんの元気カーがやってきた。買い物かごを持って、てくてく歩いてゆく。メガネさんが手を振ってくれている。私も手を振る。

「こんにちは、奥さま退院されていかがですか?」と、尋ねる。

「うん、大丈夫。でもまだ洗濯や掃除は難しいから僕が引き続きしているんですよ。それが…。」と、メガネさんがちょっとうつむいて

「楽しくて。」と言って、くすくすっと笑った。私よりずっと歳上のメガネさんだが可愛らしいなぁと思った。

「よかったですね!」と、私。

「洗濯物畳むの得意なんですよ。シャツやTシャツはそのまま売り場に出してもいいくらい。」と、メガネさん。

メガネさんは元気カーに乗る前、デパートにお勤めしていたのだ。いろいろな売り場に配属されたらしい。その中で紳士服売り場にいたこともあるそう。洋服を畳むのは得意なのだ。

定年退職後、元気カーに乗っていらっしゃる。

「それから、コードレス掃除機。あれ最高ですね。」と、メガネさん。

「私もあれ大好き。」と、私。

「お煎餅食べて散らかしたら、さっと持ってきて掃除するんですよ。」と言って、メガネさんがまたうれしそうに くすくすっと笑った。

「私の両親も、母がお料理と後片付けをして、父がお掃除と洗濯をしているんですよ。それがいつも素敵だなぁと思っているんです。これからお掃除と洗濯はメガネさんの担当ですね。」と、私。

「うん。そうですね。」と言って、メガネさんが はにかんでいる。

家事の分担ができるなんて夢のような素敵な話だ。

昨日りんごを買って、今日コープさんから りんごが届いたのだけれど、元気カーでまた りんごを買った。シナノドルチェ。おいしそうだった。

午後、ごはんさんが昨晩の月の写真を見せてくれた。はっとするほど幻想的。雲の向こうで輝いているとは思えないほどの強い光。先日の満月も月輪がはっきり見えていたらしい。

ごはんさんの お庭にトゲトゲがいっぱいついている植物が生えていた。それを「抜いたんだよ。」と言って、見せてくれた。細い茎にトゲがびっしり生えている。小さな木に見える。なんの植物だろう。

そこに、鮮やかな黄緑色の もこもこした幼虫がくっついて葉っぱを もぐもぐ食べていた。可愛い。2匹もいた。

「幼虫がくっついてるよ。」と、私。

「はらぺこあおむしくん。可愛いな。」と、ごはんさん。

「この子たち、サナギになってチョウチョになるよ。」と、私。

「楽しみだね。」と、話す。

何年も前、仕事部屋の入り口の壁に まるまる太った黄緑色の幼虫がくっついていた。じっとして動かなかった。翌日それはサナギになっていた。当時、私は幼虫が苦手だった。でも毎日観察をした。

珍しく早起きしたある朝、サナギの様子を見に行くとそこには美しいクロアゲハが留まっていた。

「生まれ変わった姿を見せてくれてありがとう。」と声をかけると、クロアゲハはゆっくりと飛んでいった。まるで私が来るのを待っていてくれたかのように思えた。

その頃、西日本リビング新聞の情報誌シティリビングに「さかいみるの みるみる日記」というイラストエッセイを連載していたので、そのことを書いた。ことを思い出した。

この子たちはどんなチョウチョになるのかな。

ごはんさんに教えてもらった通り、貸してくれたラッカーうすめ液でシエンタのエンブレムの痕を剥がしてゆく。少しずつ剥がれてきた。

SIENTAのTAを剥がしたところでくじけた。蒸し暑い。一日2文字ずつ剥がせばあと2日でぜんぶ剥がせる。よし。

なかなかやる気にならず、ぐずぐずしていた電柱移動のための連絡先を調べる。いざ調べてみると、あっという間に分かった。やる気って大事だな。と、思う。

さつまいもを みっつオーブンに入れて焼き芋にする。

ぶどうをたくさんいただいた。なんか、満たされているなぁ。

夕方、お散歩に行く。もう暗くなりはじめている。気にせず霊園の坂道を てくてく上ってゆく。お散歩はいつも楽しい。

家に帰りつき、シャワーを浴びてさっぱりしたあと、冷蔵庫に冷やしておいた ぶどうを食べる。

ふと、シティリビングを見返したくなる。桐のタンスに入れいていたはず。あった。

夜、庭に出る。月が ぽわんと輝いている。飛行機が飛んでいる。月に向かっているみたい。夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。

今日もいい一日だった。

2年間連載していたイラストエッセイ
なつかしー♪

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