Hiroko Onari

データサイエンティスト/ピープルアナリスト/エンジェル投資家/成城大学データサイエンス…

Hiroko Onari

データサイエンティスト/ピープルアナリスト/エンジェル投資家/成城大学データサイエンス教育研究センター外部アドバイザリー委員。ベンチャー企業のAI技術顧問。専門分野はネットワーク科学(特に人間関係)。『データサイエンティスト養成読本』執筆『プログラマのための論理パズル』翻訳等。

最近の記事

組織を「見立てる」~華道からのアナロジー

2022年8月からいけばな草月流を習っている。2024年10月にようやく2級を修了した。まだまだぴよぴよレベルである。いけばなには、数百ほどの流派があり、その中でも三代流派と呼ばれているのが「池坊」「草月流」「小原流」である。わたしは、現代アートが好きで、旅先でもだいたいその国の現代アート美術館にふらりと立ち寄ることが多い。「あ、そうだ、華道やろう!」と思いついたとき、最も現代アート的だと思ったのが「草月流」だったこともあり、草月流を学ぶことにした。 日本の伝統的な修行や学び

    • 悲しみの奥義

      仕事で僧侶と従業員が1on1で対話する「産業僧対話」というサービスをやっている。産業僧対話の内容は会社側には一切伝えない。だから従業員は本音で語ることができる。また対話はあえて”無目的な場”としている。会社のことだけでなく、家族のことや自分の人生のことなどなんでも会話してよい。会社はどんな会話がなされているのかは全く知らされない代わりに、どんな音だったのか、音声感情解析の結果が知らされる。 音声感情解析では、「平静」「興奮」「喜び」「怒り」「悲しみ」の5つの感情を測定する。

      • それは私であった可能性と偶然への気づき~『思いがけず利他』中島岳志著

        大企業で部長やっている友だちから、「部下が受け身ではなく、積極的に仕事に取り組めるようになる一冊」を教えてほしいと相談をうけた。コロナ前なら、意識高い系のビジネス書を紹介していたと思うのだけど、このコロナ疲れが蔓延する世界で、線形的な成長を想定したようなノウハウ本では、逆に部下を疲れさせてしまうのではないかという気もして、いろいろ考え紹介したのが、東工大の中島先生が書いた『思いがけず利他』という本だった。 「利他」。今年はこの言葉に始まり、この言葉で終わる一年だったように思

        • よき祖先をめぐる時間と思考の旅~『グッド・アンセスター』

          "How to think long term in a short-term world"、そんなサブタイトルがつく本『グッド・アンセスター』が出版された。著者はイギリスの哲学者ローマン・クルツナリックさん、訳者は現代僧侶の松本紹圭さんだ。環境問題やパンデミックをはじめ、人類は先延ばしできない緊急性の高い課題に直面している。これらの課題に対応していくために、今を生きるわたしたちが「いかにしてよき祖先になれるか」、そう問いかけることで読者を長期思考へ誘い、よりよい選択肢bet

        組織を「見立てる」~華道からのアナロジー

          データでみる世俗化『宗教の凋落?』

          今の欧米の若者の宗教観を表す言葉として、"Spiritual but not religious"がある。特定の宗教を信じているわけではないけれど、宗教の持つ精神性(スピリチュアルなこと)は支持しているといったような意味だ。Wikipediaにもその定義が掲載されている。 https://en.wikipedia.org/wiki/Spiritual_but_not_religious はじめてこの言葉を聞いたとき、私も同じ感覚だと思った。これまで、海外の友人に「宗教は何

          データでみる世俗化『宗教の凋落?』

          分解の哲学~AIという分解者

          二分法ではうまく物事を表現できないことが多い。だけど、世の中には二分法で理解しようとすることは多い。きっとそのほうが簡単だからだろう。好きか嫌いか、幸せか不幸せか、持てるものか持たざるものかといったように。 二分法で理解するとき、それは同じことを言っていることも多い。どう生きるのかという問いと、どう死ぬかという問いは同じことを言っている。見る角度が違うだけである。 食と農の思想史を研究する藤原辰史さんの『分解の哲学』という本を読んだ。この本では、社会構造を「生産者」と「消

          分解の哲学~AIという分解者