根岸孝旨という第二のお父さんについて
みるきーうぇい3rdミニアルバム
「僕らの感情崩壊音」収録の
「汚れた手」「傷跡の観測」「カセットテープとカッターナイフ(ver.2020)は
根岸孝旨さんがプロデュースだ。
根岸さんが居なかったらこのアルバムは完成しなかった。
根岸孝旨さんはCoccoやGRAPEVINEを世に送り出し、くるり、aiko、つじあやの、中島美嘉、木村カエラ、一青窈、miwaなどの作品をプロデュースする音楽プロデューサー。ベーシストとしてはサザンオールスターズ、藤井フミヤ、奥田民生、吉井和哉などのレコーディングやライブをサポートしてます。(wiki引用)
つまり簡潔に言うとめちゃくちゃ凄い人。
Dr.StrangeLove、JUNK FUNK PUNKというバンドもしていて、先日ライブを見ましたが音楽に真摯に狂ってるのが素晴らしく格好良かった。
当然この曲が本当に大好きで大好きでCoccoの歌詞と歌声が超強烈で涙腺大崩壊ソング。この曲のアレンジの美しさたるや…
私が根岸孝旨という名を知ったキッカケはこの曲。
Coccoの「Raining」。
元カレがカラオケで歌ってて知った。(どんな元カレだよ)
「髪がなくて今度は腕を切ってみた切れるだけ切った」
という歌詞が衝撃の1曲。サブスクもあるので是非フルで聴いてほしいのですが、傷だらけでも生きているCoccoの歌声が、切なく悲しく愛おしく胸に響く曲。
Rainingを何度も何度も狂ったように聴いていました。痛みに染み渡る曲。この曲のアレンジの、優しくどしゃぶる雨に身体を洗い流されるような感覚。その雨で出来た海の底で泳ぐような感覚。美しくて哀しくて。
あの歌詞を、ポップスとオルタナティブの絶妙な落とし所で鳴らすセンスに凄みを感じた私は、これ、誰がアレンジなんだろう?と検索しました。
そしたらヒットしたのが根岸さん。
好きなアレンジャーがいたら教えて。とレーベルのスタッフさんに言われて、真っ先に名を挙げたのは根岸さんの名前でした。
そして亀田さんのときのように、事務所のボスが言いました。
「うん、じゃあ、根岸さん聴いてみるね」
うん、ノリ軽!!
ノリ軽すぎて期待してなかったのですが、まさかの根岸さん快諾。無事プロデュースしてもらえることに。
ほんまにあの根岸さんやんな…?と何度も調べ直したよ…あの根岸さんでした。
◇
そして打ち合わせで初対面。クッソ緊張。
根岸さんの第一印象は「なんか怖そう」。
とりあえず根岸さんに、あの曲が好きとかあの曲が最高とか、愛を語るも上手く伝えられてる気がしない…。
そして私は観念したように言った。
「すみません。バリ緊張してます。」
すると根岸さんは優しく笑った。
「僕に緊張してもムダだよーー(笑)損だよー!」
あれ?なんか笑顔可愛い?ていうか優しい…?
そして曲のイメージを一通りお伝えすることになった。
私は「汚れた手」についてこう言った。
「汚れた二人の曲なんですけど、綺麗にしたいんです。いや、綺麗、ではないな…。美しくしたいんです。」
微笑みながら聞いてくれる根岸さん。推せる…
一通りイメージを伝え終わった後で、私が背負ってたギターを見て「なんのギター使ってるの?」と聞かれた。
「あ、66年のFender Jazzmaster です。大阪のギタートライブって楽器屋で買いました!」
するとまた根岸さんは優しい笑顔に。
「お!ヴィンテージ!ギタートライブは僕もヴィンテージのベースを買ったことがあるよ〜」
おや…?やっぱ優しい…そして穏やか…
あと私はその大阪のギター屋、ギタートライブに異常にお世話になっているため、共通の話題が出来て和やかなムードに。肩の力が抜ける私。
なんか仲良くなれる気がしてきた…!
これがヴィンテージ楽器好きの謎の絆…ゴゴゴゴ…
◇
そして根岸さんのデモが数日後送られてきた。
「汚れた手」と「カセットテープとカッターナイフ」のデモだ。
またかよ…と思うかもしれないが言わせてくれ。
泣いた。
めちゃくちゃ泣いた。デモを聴いて改めて思った。
そうか、これが根岸孝旨だった。と。
初打ち合わせの穏やかモードの根岸さんに騙されかけたが、そうだった。根岸さんはやっぱり怖い人だ。
「汚れた手」のラストのギター轟音。私が送ったデモの形は崩さずに、更に音の海が広がっていくあの手腕。怖すぎる。
参りましたとしか言いようがなかった。私にはあのアレンジは絶対に思いつかない。美しく落ちていく二人が目に見えるようだった。汚れた海の中で青く溺れる二人が、根岸さんのアレンジによって、確かに見えた。
ちなみに根岸さんも歌詞は全くノータッチ。ありがてえ。1行変わると意味も変わるから。嬉しかったな
「カセットテープとカッターナイフ」も原曲の雰囲気は変えずに押し上げるアレンジ。最高。
◇
そしてレコーディング。
最初のレコーディングは、本当に衝撃だった。
「汚れた手」と「カセットテープとカッターナイフ」のメンバーは
ギター真壁陽平さん。ベースは根岸さん。ドラムはCrossfaithのTatsuyaさん。
いや、もう怖いわ。と思ったわ。
何このゴリゴリのメンバー。
3人で音合わせしてるの聴いたとき、なんかレコーディングスタジオでライブが始まったみたいでさ。なんか今から私の曲のレコーディングなのにお客さんみたいな気持ちになっちゃって。超カッコ良くて。マジで怖かった。
そして「マジでカッコいいっす」と言ったら
皆、笑顔ばり優しい。
全員話し方ばり穏やか。
全員推せるやんけと思いました。
あと「カセットテープとカッターナイフ」のバッキングやギターソロは私が弾かせてもらったのですが(真壁さんを差し置いてギターソロ弾きたがる女)音作りは皆のお世話になりました。
ファズというギターエフェクターを10個以上試してキャッキャしている根岸さんと真壁さんが尊かった…わざわざ車までファズ取りに行ってたし…。音へのこだわり最高すぎ…。
少しずつ打ち解けて最後には言いたいこと図々しく言えるようになって、素直に楽しかったな。
◇
しかし問題発生。歌録りの日のことだ。
レコーディングは2019年12月。
私は歌録りの2か月前に声帯ポリープ手術を受けていて、どうにも調子が出なかった。上手くやらなきゃと思う度に閉まる喉。
休憩を挟みながら何度も何度も唄って。
その日、一応歌録りは終わったのだけど。
レーベル側から「もう一回歌い直そう」と言われ、別日にもう一度録ることになった。
焦れば焦るほど上手くいかなかった。
録り直しの日、根岸さんが私の唄を一通り聴いてから、言ってくれた。
「こう唄いたいってイメージを明確に持ってみてほしい。僕と喧嘩になっちゃうぐらい。私はこう歌うんだ!って思っていいんだよ」
簡略はしているけど、主にこういうことを言ってくれた。私は上手く歌えなくて悔しかったのと、本当の意味での優しさを感じたのとで、泣きそうになった。アドバイスなんてしない方が楽なのに、一生懸命伝えようとしてくれる根岸さん。
私は、しゅん…としつつも、なんとなく根岸さんの言わんとしてることが掴めた気もして
「さっき唄った箇所、もう一度唄い直してみます!」と言った。
そしたら根岸さんが
「うん、今香織ちゃんの目が変わったから、いけるんじゃないかな」
と言ってくれた。
目、変わった自覚なんてなかったから、よく分からなかったけど。
その後のレコーディング、人のメンタルというのは不思議なもので、根岸さんと話し合った後の方が歌が良くなった。
それでも帰ってから音源を聴いたら、また歌い直したくなって、もう一日歌わせてもらった。
しかし唄い直す前の、根岸さんと話し合った直後の方が、優しくて、良い歌声だった。
「こっちの女の子の方が好き。」
と根岸さんが言ってくれたので、根岸さんと話し合った直後の歌が、この音源に採用された。
「汚れた手」
「カセットテープとカッターナイフ(ver.2020)」
https://Milkyway.lnk.to/BokuranoKanjohoukaion
◇
そして「傷跡の観測」はその後の年明け、2020年1月に録音した曲だ。
12月のレコーディングで根岸さんに言われたことを噛みしめながら、年明け早々、正月ムードにもそんなに浸れず、歌の練習に励んでいた。
あと、なんか、1月1日に彼氏にフラれた。
詳しいことはここでは割愛するけど私はもうめちゃくちゃムカついていて、その反面、良い歌が唄えそうな気がしていた。失恋する度になぜか歌が上手くなる女、伊集院香織。
メンバーはギター真壁陽平さん、ベース根岸さん、ドラム玉田豊夢さん、ストリングスは弦一徹さん。
またまた最強メンバーである。
ストリングスのレコーディングは初めてで不安だった。バンドの音にストリングスが混ざるというのはどんな感じなのだろうと。
そして私は不安を感じていた自分を恥じた。
クラシックのコンサートに行ったときのような突き上げるような切なさが胸にズシンと響いた。生のストリングスを聴いたとき、私は自分の曲が、物凄く良い意味で自分から離れていくのを肌で感じた。私がしがみついてるせいで飛べなかった音たちが、私の手からちゃんと離れて飛んでいく感覚を覚えた。
私はこの感動が忘れられなくて、弦一徹さんの名前を即ググった。そして妙に納得した。
このストリングスの弦一徹さんはBUMP OF CHICKENの「花の名」や嵐の「Beautiful days」など私の大好きな曲にストリングスを入れている人だったのだ。
私の人生に欠かせない曲を彩った人が、私の曲にストリングスを入れてくれた。この上ない幸せを感じた。
歌のレコーディングも、歌に向き合うメンタルが変わったおかげで比較的スムーズに進んで、とても良い歌が録れたと思う。
出来上がったとき根岸さんが
「傑作が出来た」と言ってくれた。
根岸さんのおかげです、と言ったら
「曲がないと、何にも生まれないから。香織ちゃんが曲を作ってくれたからだよ。」
と言ってくれた。
そんな一言で、レコーディング中悔しかったことも、上手く歌えなくて悩んだことも、全部報われた気がした。
悔しすぎて、レコーディング中トイレで泣いたけど。
もはや、あれも良い思い出だ。
根岸さんに教えてもらったことは、私の音楽人生でこれからも役に立ち続けると思う。
第二のお父さん的存在!
生涯大事にしたい曲。聴いてほしい。
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「僕らの感情崩壊音」サブスク配信はこちら
https://Milkyway.lnk.to/BokuranoKanjohoukaion
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