息子とアシカとわたし
正直に言おう。私は壊滅的なレベルで子育てに向いていない。
先日,なんとなくyoutubeを徘徊していたところ,伊勢シーパラダイスのアシカ「日向くん」が仮死状態で生まれてから成長するまでの動画に出会った。
そこで私はショックをうけたのだ,仮死状態のアシカの赤ちゃんに必死で声掛けをする飼育員さんたちの姿に。
アシカ × 赤ちゃん × 仮死状態
日本語通じない × 日本語通じない × 日本語通じない
の限りなく言葉が届かない状況で,どうしてここまで声をかけ続けられるのだろうとびっくりしたのだ。
しかも,緊急事態(仮死状態での出生)だけではない。その後の離乳まで,飼育員さんはいつでもまるで幼児に語りかけるかのようにアシカの日向くんに話しかけ続けるのである。その情熱と飼育員スキルに私は動画の間中ただただ驚き続けていた。
理想論的な話は分かる。言葉が通じない赤ちゃんにも目を合わせて話しかけましょう,寄り添った声掛けをしましょう,わかりやすい言葉でゆっくり話しかけましょう的な話は子育ての場面で散々聞いてきたし,同様のセオリーが動物飼育の教則本にもきっとあるのだろうと。
しかし,私にはそれがどうしてもできなかった。
私には,「あ~!●●ちゃん,おなかすいたよね~!今からご飯だよ~!あ~~ん!ああ美味しいねぇ,もぐもぐしようねぇ!」というような語りかけというか「実況中継風共感マシマシテンション爆上げ語りかけ」がどうしてもできなかった。どうしても野球の珍プレー好プレーで面白おかしくアフレコされている/しているようにしかできなかったのだ。
その後も,息子が言葉を発したらテンションMAX会話ができるようになるのかもなどと無駄な期待を自分にかけてはいたが,結局私は「共感マシマシテンション爆上げ口調スキル」を習得せぬまま息子の幼児期を終えた。
念のため自己フォローを入れておくと,親子の会話が無言だったわけではない。限りなく対等というか,「無口(口下手な)な同居人に話しかける」ような形で息子に話しかけていたのだ。
「●●くん,今日天気よくて外熱くなるらしいんだけど,服半袖で良いよね?」(息子無言)
「今日の離乳食結構上手く作れたと思うんだ,どうよ?」(息子もぐもぐ)
・・・みたいな感じ。
幼少期の話しかけ方がどのように発達に影響を及ぼすのかはわからないけれど,とりあえず息子は口喧嘩では絶対負けない子に育った。
そんなわけで私は壊滅的に子育てに向いていないけれど,喧嘩で手は出さないからまあいいかなと思ってしまっている。
それと同時に,天性の才能なのか,訓練の賜物なのか,人間の子どもよりはるかに意思疎通の難しい動物相手にあれだけの声かけをされる飼育員の皆様には尊敬の一言に尽きる。
状況が落ち着いたら是非とも私に気付きをくれた伊勢シーパラダイスへ行って,日向くんに会ってみたい。多分私はいつものローテンションで「君の動画見たんだけどさ,最近もまだ給餌場で遊んでんの?体格大きくなったんだし,邪魔じゃない?」と話しかけるだろうな。
※サムネイルはトドです