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社内問合せ対応の業務改善について

前職では、経理に対する社内問合せ対応業務の改善を行いましたので、
やったこととその結果、その後やりたかった構想を書きます。
メリットもありましたが新たに浮上したデメリットもあり、個人的にはちょっと苦い思い出です。構想については考慮不足もありますが、供養でもあるためそのまま記載させていただきます。


やったこと

従来の問題点

前職に入社した当初は50人規模の組織でした。管理部門総勢3名、うち経理財務グループは私と上司の2名体制です。前任者がいない状況だったため、手探りで業務を構築していました。

入社から数週間経過した頃、上司の個人チャットに経理関係の問合せが来ていることがわかりました。質問内容は私の作業範囲であることもあったため、上司の時間がもったいないと思ったのが問合せ業務の構築に着手したきっかけでした。
私としてもとにかく社内の情報が欲しかったので、問合せ内容を共有できる場所を作ろうと考えました。

問合せフォームの作成

フォームの例。画像はMicrosoft Formsで作りました。

当時は社内でGoogle(Workspaceではない)を使用していたため、手軽に作れるGoogleフォームをベースに構築しました。
無料なので、上司に相談する前にフォームと回答記録用のスプレッドシートを構築し、隙間時間にいくつか試作していました。ある程度運用イメージが固まったところで上司に提案したところ快諾を頂き、少しの修正を経て全社告知をしました。確か入社2ヶ月目くらいの出来事だったと思います。

提案時は、①受付時にメール通知が飛ぶため問合せ内容を共有する手間が減ること②回答のログを残すことで過去事例を参照できるようになること③問合せ件数をカウントできるようになるため経理業務の課題が可視化できることの3点をアピールしました。

工夫したポイントは以下の通りです。

入力の手間を減らすため、入力欄は最低限に
①質問者②問合せカテゴリー(ラジオボタン)③問合せ内容④回答希望日の4項目に絞りました。カテゴリー別で事前に欲しい情報があったので分岐式のフォームも検討しましたが、スプレッドシートで見ると列が増えてしまい、集計がしづらくなってしまいます。ここではテキストのテンプレートを用意したり、ヒアリングすることで「この情報を渡せばいいのか」と理解してもらう方針に切り替えました。

様々な入力者を想定して、メアド収集をやめた
当時は社員全員が会社用メールアドレスを持っているわけではなかったので、フォームでのアドレス収集を諦めました。また質問を代理で入力するケースを想定し、質問者の欄は「チャット回答を必要としている人」の名前を入力してもらう形にしました。たまに私の名前を書いてくる人もいたので、己の日本語力の低さを反省しました。

問合せカテゴリーを自由入力させない
ピボットテーブルでカテゴリー別に問合せ数を集計する予定だったので、必ず同じ文言になるようラジオボタンでの選択式にしました。よくあるカテゴリーと「その他」を用意して、「その他」カテゴリーで似たような問合せが続いたら新たにカテゴリーを増やす運用です。

回答を記録するエリアを別シートに分けた
フォームの入力と同時に更新されるシートと、回答を記録するシートを分けました。前者をいじってしまうと、フォーム入力時に直前の行が上書きられるリスクがあったので(どういう条件下だったかは忘れました)、人が操作するシートは別で用意し、問合せ内容を関数で参照する形に落ち着きました。この部分は対応人数が増えると分かりにくいポイントなので、もっとやりようがあったと思います。しかし、GASが書けるわけでもないし、あまり時間をかけたくなかったため無理やり関数で解決してしまいました。

組織での定着と成果

告知後はデータが溜まるのをひたすら待ちました。この期間がなかなか苦しかったです。手間だけかけて結果が伴わないのではないか、という不安が大きかったです。

組織への定着には1年ほどかかったと思います。最初は問合せフォームに入力せず、個人チャットや口頭で質問してくる人も少なくありませんでした。
これについては文化の違いだと割り切って、新しい文化を根付かせるつもりで粘り強くフォームに誘導しました。ありがたいことに上司もこの問合せフォームの有用性を理解してくれていたため、経理財務グループ一丸となって対応できました。ここでどちらかが曖昧にしてしまうと「この人なら許される」という認識が広まり、自然消滅してしまったと考えています。特に上司という権限のある人が賛同して誘導してもらえたことは、私にとって非常に幸運でした。

集まったデータは私の想定以上に活用できました。前述した3つのメリットはもちろん、以下のような利点がありました。

自分の対応範囲が広がったことを実感できた
回答記録のシートには対応者の名前も入れていたので、自分の回答率を簡単に算出できます。回答率が100%になった頃には、イレギュラーな事例に対して自分の意見を添えた対応提案を行い、自分の言葉で回答できるようになっていました。

数値目標を設定しやすくなった
「問合せ件数の増加率を50%以下にする」「部下の回答率を20%以上にする」等の数値目標を作りやすくなりました。あくまでも問合せ対応は減らしていきたい、誰でも回答できるよう平準化したいというグループ内共通認識がありましたので、それを数値化できたのは評価者である上司としてもやりやすかったみたいです。評価面談でも好評でした。

稟議書の根拠として問合せ件数が活用できた
上司は取締役へシステム購入稟議を上げる時に、問合せ件数を根拠として活用したと教えてくれました。私が手掛けた範囲は素材の受け皿のようなものなので、そこから必要なデータを自ら取捨選択して実際に活用してくれた時は本当に嬉しかったです。

問合せフォームの設置が流行した
年末調整や社員総会などの他部署・実行委員会主導のプロジェクトでも問合せフォームを設置されるようになった。私はこれらのプロジェクトに参加していなかったため経緯は不明ですが、私のいない場所でも活用しようという動きがあったのは、それだけ有用性を理解してもらえたのだと思うと嬉しいですね。

営業部門に興味を持ってもらえた
社員総会で問合せ件数のカテゴリー別棒グラフを出しました。これを元に改善施策の優先順位を定められるといった有用性を示したところ、営業の社員が興味を持ち「お客様対応でも導入してみようかな」と話してくれました。管理部門の試みが営業部門に良い影響を与えられたら、それはとても嬉しいことですね。

新たな問題点

一方で、新たな問題が浮上しました。

問合せフォームが乱立した
前述の通り問合せフォームの設置が流行したことで、様々なフォームリンクが生成され、チャットで告知されました。その結果、どの問合せをどこで送るべきか分からなくなる状態になってしまいました。フォーム文化が急速に広まったため、想定していた影響範囲が甘かったことを悔やみました。

経理財務グループの新入社員に分かりづらかった
私の部下2名はどちらも数ヶ月前に入社したばかりで、業務に慣れない時期でした。その上関数を駆使した回答記録用スプレッドシートは相当使いにくかったでしょう。「私だから改修できる」というレベルのままで、まだ複数人で編集することを想定できておらず、関数を読まずに操作すると崩れてしまう部分もありました。

質問者・回答者両方が使いやすいものでないと、問合せフォームは利用されないでしょう。組織に負債を残してしまったことに苦い思いをしています。もっと良い方法があるはずなので、問合せ対応業務を新しい最適な形に変化してくれることを願います。

やりたかったこと

問合せ対応業務については「問合せの入り口を集約する」ということが達成できましたが、本当はまだまだたくさんやりたいことがありました。

問合せ対応マニュアルリンク集を作成したかった
部分的には行っていましたが、私の趣味と善意だけで書き溜められたものだったので、精度・正確さが足りていません。マニュアル作成・検証・修正を業務の流れに組み込むことができませんでした。これらのマニュアルがひとつのリンク集としてまとまったナレッジベースとなり、更新作業も業務として認識できるような動機付けをしたかったです。

管理部門全体の問合せフォームを設置したかった
人事総務グループも新たにフォームを設置した段階で、管理部門の総合問合せフォームを作りたかったです。特に管理部門の業務は質問者から担当部署が分からないことが多いため、人事のフォームに聞くべきか、経理のフォームに聞くべきかの判断は難しいと思います。そのような質問を総合問合せフォームで受け付けて、内部で振り分ける仕組みを作りたかったです。

構想

思い描いていた問合せ対応周りの業務構想は以下の流れです。

①管理部門配下に社内システムを開発できる部署(情シス)を置き、システム開発部門(販売目的)と分離させる。

※問合せを減らす施策は社内システム開発で解消・加速できるものが多く、エンジニアへの開発要望が頻発していました。販売目的システムの開発リソースを減らしてしまうことは管理部門としても心が痛んだため、社内の効率化目的の業務と分離させたいと思っていました。

②管理部門総合問合せフォームを設置する。

③一次受け(総合対応)。マニュアルに則って回答するか、担当部署にエスカレーションを行い、対応を記録する。全社向けマニュアル公開等で問合せ数を減らすことを目指す。

④二次受け(専門対応)。担当部署として回答し、対応を記録する。総合対応向けマニュアルを作成し、エスカレーション数を減らすことを目指す。

狙いは以下の通りです。

  • 業務のマニュアル作成を評価に繋げたい

  • 回答ログを残す手間に動機づけをしたい

  • 読み手を意識したテキストを書く文化を醸成したい

プライバシーを含めた問合せをどう分離するかが悩みどころですね。

システムについて

環境の都合上Googleフォームのみで完結させましたが、本当はもっとシステムを活用したかったと思っています。
上司からはお金をかけてもいいと言われていましたが、調査する時間を取れず結局現状維持のままとなってしまいました。
個人的にはbizer teamを使ってみたかったですね。

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