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「好き」を言語化していくと、新しい「好き」と出会える

「どんな人が好きなの?」と友だちに聞かれて、てっきり異性のタイプの話かと思い、「鼻が高い人〜」とふざけて言っていたら、どうもそれが友人に対する意味だったらしく、改めて考えた。

惜しみない愛情を与えてくれること、芯があって強いこと、口だけでなく行動で示してくれること。

話しながら、「あぁ、自分はそういう人が好きなんだな」と初めて気付いた。

「好き」っていい言葉だ。誰を不快にすることもなく、むしろハッピーにしてくれるポジティブな言葉。

一方で、「好きに理由はいらないよね」と言われてもつい納得してしまうような曖昧さもはらんでいる。BL作品で『好きなものは好きだからしょうがない!』というゲームがあるが、「まぁそうだよね」と言いたくなる。

好きって感情論だから、そこに明確な理由はないと。

一方で、言葉を扱う職業だからこそ、そこを掘り下げたくなってしまう。

どうして好きなんだろう。
どういうところが好きなんだろう。

たとえば「この映画、好き!」といっても、きっと本人も自覚していないようなさまざまな理由が隠されている。

アクション映画というジャンル自体が好きなのかもしれないし、出てくる俳優がドンピシャ好みだったのかもしれないし、泣ける結末が良かったのかもしれないし、今の自分に足りないものを補ってくれたのかもしれないし、自分の大切にしている価値観とぴったり重なったのかもしれないし。

ただそれを、「好き」というたった二文字から押し測るのは難しい。

通常、感想というのは「面白かった」「楽しかった」「好きだった」と平坦な言葉で語られがちだけど、相手に伝えようと思うのならもう一歩踏み込むことが必要だし、それが自分自身を知るきっかけにもなる。

そのキーワードが「なんで?」という問いだ。

インタビューライターという職業柄、さまざまな人にインタビューをするけれど、本人が用意してくれていた言葉を言い切ったあと、「どうして?」「なんで?」とこちらが問いかけることで、本人も改めて自分と向き合い、新鮮な言葉が出てくることがある。

「好き」を言語化するのはちょっぴり怖い。こんなにも好きなのにペラペラとした言葉しか出てこなかったらどうしようとか、実はそこまで好きではないのがバレてしまうのではとか、自分の持つ語彙じゃうまく伝わらないんじゃないかとか、いらんことを考えてしまう。

でも、ひとつひとつを「なんで?」と紐解いていくことで、あらためて自分の「好き」と向き合えるし、きっとそれが新たな「好き」と出会う鍵となる。

学生のころ、「自分が好きなタイプを書いておくと、本当にタイプの人と出会えるんだって」と言われた。当時わたしはおまじないの類かと思っていたけれど、それはあながち間違いじゃないのかもしれない。

自分の好きなものを言語化しておくと、いざ出会ったときにビビッとセンサーが動くのだ。そのセンサーを尖らせておくと、素敵なものに出会える。そのためにわたしは今日も「なんで?」と自らに問うていきたい。

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