強い人なんてこの世に存在しないのよ

メンタルが強固すぎる、と思っていた人がいた。

どんなことがあっても変わらない笑顔で笑っていて、自分の信じた道を突き進んでいて、何を言われようが自分の軸を絶対にぶらさない。

とても自分にはできないな、と羨望の眼差しで見ていた。

どうやったら、そんなに強くたくましくいきられるのか、毅然と振舞っていられるのか、教えてほしかったくらいだ。

でも。

2人になったとき、「本当はこうなんだよね」と、彼女は本音を漏らした。

くよくよ悩んでしまうこと。心ない言葉を言われて落ち込んでしまうこと。

そうやって語る姿は、どう見てもふつうの女の子だった。

ある程度経験を積めば、人は強くなると思っているけど、根っこの部分はみんなやわらかかったりする。

昔は人見知りでした、とか。昔はおとなしかったんですよ、とか。

めちゃくちゃメンタルが強いんです、という人がいるけれど、それは強いというより痛みに鈍くなっているだけなのかもしれない。

本当はみんな、できることなら甘えたいのだ。

手を広げられたら思わず飛び込んでしまうし、頭を撫でられたら拒むことなく目を瞑ってしまうだろう。

それって、ぜんぜん強くないよな。ぜんぜん強くない。

強がっているだけで、人はめちゃくちゃ弱いのだ。ただ、その人なりにうまく経験を鎧にして着ているだけで、本当は強くなんてないのだ。

人は本質的には強くはなれないんだとがっかりする。

でも、同時に、強く見えるあの人も、本当は強くはないんだと安心もする。

何なら強くなる必要もないし。強そうに見えるハッタリだけかましていればなんとか生きられるんじゃないか。

弱くても、いいんじゃない。